刑事コロンボ・第3話『構想の死角(Murder by the Book)』のあらすじとトリック解説です。第1シーズン第1話(S1E1)にあたるこのエピソードは推理作家のケン・フランクリン(ジャック・キャシディ)が犯人です。殺害現場を偽るトリックが登場します。
あらすじ
推理作家のケン・フランクリンは共同著作者のジムにコンビ解消を提案されます。ほとんど小説を書いていなかったケンは保険金目当てでジムを殺害。アリバイを用意し、殺し屋の犯行にみせます。ケンの偽装工作は完璧にみえましたが、アリバイを崩す目撃者が登場します。強請られることになったケンは目撃者も殺し、溺れて死んだようにみせようとします。コロンボはこの2つの殺人事件について、様々な状況証拠を集めます。しかし、決定的な証拠をつかめません。そこで、ある方法でケンを追い込み自供させます。

©Universal City Studios
登場人物とキャスト
- コロンボ警部(ピーター・フォーク)
ロサンゼルス市警の警部。 - ケン・フランクリン(ジャック・キャシディ)
ミステリー作家コンビの一人で、本作の犯人。社交的で口が上手く、広報活動でベストセラー作家としての地位と名声を享受していますが、実際には小説を一行も書いたことがありません。金遣いが荒く、相棒ジムのコンビ解消宣言により収入が途絶えることを恐れ、ジムの生命保険金を目当てに殺害を計画。目撃者のリリー・ラ=サンカも殺害します。 - ジェームス・フェリス(マーティン・ミルナー)
ミステリー作家コンビの真の執筆担当者で、ベストセラー「メルビル夫人シリーズ」の生みの親。社会派小説への挑戦を目標に、ケンにコンビ解消を告げました。愛妻家で、トリックに利用されてしまうとは知らず、妻に電話をかけさせられます。 - リリー・ラ=サンカ(バーバラ・コルビー)
サンディエゴの別荘地近くで雑貨店を営む未亡人。ケンがジムを連れてきたのを目撃し、その情報でケンを脅迫して金銭を要求しますが、それが命取りとなり、第二の被害者となります。 - ジョアンナ・フェリス(ローズマリー・フォーサイス)
被害者ジムの妻。夫が行方不明となり、コロンボ警部に事情を話す中で、夫とケンのコンビ関係について重要な情報を提供します。 - インタビュアー(リネット・メッティ)
事件後、ケン・フランクリンにインタビューを行う美人レポーター。 - 生命保険屋(バーニー・クビー)
ケンとジムがお互いに多額の生命保険をかけあっていた事実をコロンボに伝える人物。
| 名前 | キャスト |
|---|---|
| ケン・フランクリン Ken Franklin |
ジャック・キャシディ Jack Cassidy |
| ジェームス・フェリス Jim Ferris |
マーティン・ミルナー Martin Milner |
| リリー・ラサンカ Lilly La Sanka |
バーバラ・コルビー Barbara Colby |
犯人
- ケン・フランクリン
小説家であるが、まったく小説は書いていなかったし、一応推理作家であるのに肺の水というのを見落としたので、殺人に関しての知識もなさそうである。スポークスマンが務まっていたのかすらも、だいぶ怪しい。というわけで、やっぱりというか、さもありなんという感じでコンビ解消を持ち掛けられている。
仕掛けたトリックは犯行現場の偽装で、結果的に完璧なアリバイが作られている。と思ったら目撃者がいたので、計画は総崩れになってしまう。もう、この時点で完全犯罪はあきらめたに違いない。悪あがきで目撃者も殺害しているが、突発的に必要になった犯罪なので、だいぶ杜撰なものになっている。作中では、標的の殺人と目撃者の殺人でトリックの緻密さにだいぶ差があるということが指摘され、実はどちらも犯人が考えたトリックだったということも判明する。最初の犯行トリックが素晴らしかったというと、そうでもない気がするので、これもまたやっぱりという感じである。
通話記録みたいな電話などに関する技術的な内容はさておき、妻の証言だけで犯行現場が特定されるというのがどうも危ない。それに、死体はオフィスに遺棄した方がよくないかと思う。マフィアの犯行で、みせしめのためにやったと聞いて妙に納得したりもしたが、そんなにマフィアも暇じゃないだろうし、殺し屋なら犯行現場から素早く立ち去るのが原理原則なのではないかと思ったりもする。こんなにも隙があるのは、おそらく“Murder by the Book(台本通りの殺人)”だからだろう。犯人は推理小説通りに殺人を行ったので、面白さを優先する小説ならではの突飛な部分も再現してしまったということである。
トリック解説
犯人のケンはジム殺害をプロの犯行に偽装します。さらに、現場から遠く離れた別荘にいたというアリバイを用意します。実際の犯行現場は別荘で、襲われたようにみせるため、オフィスは荒らしています。ケンは被害者がマフィアに関する本を執筆していたようにみせて、殺し屋が犯行に及んだ理由も捏造します。具体的には、紙に印刷したマフィアのリストを用意しています。ジムに手渡すことで、リストに指紋も付けています。この用紙をオフィスに残し、新しい小説を書くためにマフィアを調べていたジムが消されたようにみせます。
犯人はまず被害者をサンディエゴの別荘へと連れ出します。途中、犯人自身が被害者の妻に電話をかけ、犯人は別荘にいることを強調します。別荘に到着後、今度は被害者に妻嘘の電話をかけさせます。相手は被害者の妻で、内容は「オフィスで仕事をしている」です。この電話の最中に犯人は犯行に及び、被害者があたかもオフィスで襲われたようにみせます。その後、別荘から犯人の自宅へ死体を運び、第一発見者となります。
アリバイは犯人が別荘にいるとき、遠く離れたオフィスで被害者のジムが襲われたというものです。実際の犯行現場は別荘ですが、犯人は被害者を言葉巧みに操って「オフィスにいる」という嘘の電話をさせています。これにより、電話の相手(被害者の妻)が被害者はオフィスにいたと証言することになります。
なお、ロサンゼルスからサンディエゴまでは180kmほどです。東京と静岡くらいの距離です。
想定外の目撃者は湖で溺死したようにみせ、事故を装います。犯人は被害者と別荘へ向かう途中に商店に寄りますが、商店の店主が被害者となるジムの姿を目撃していました。被害者はオフィスにいたことになっていますので、店主の証言は致命的です。そこで、犯人は目撃者の殺害を計画します。
実際は目撃者である店主の自宅で犯行に及び、湖に死体を捨てていますが、これを酒に酔った店主がボートの上から誤って落ち溺死したようにみせます。
犯人のミス
コロンボが事件の真相に辿り着く手がかりです。
不自然な行動
犯人のおかしな行動です。大事なビジネスパートナーが亡くなったにしては余裕のある行動というミスです。
- 車で移動
犯人は別荘で犯行に及んだあと、車で移動しています。これはジムの死体を運ぶため仕方がないことでした。しかし、この行動により、緊急事態になぜ飛行機ではなく車を使ったのかとコロンボに指摘されます。 - 郵便物
犯人は被害者(ジム)の死体を自宅前に遺棄し、自ら第一発見者となり、通報します。このとき、犯人は片手間に郵便物を確認します。
死体は自宅前に遺棄されていたので、死体発見前に郵便物を確認することはできなかったはずです。つまり、犯人は死体を発見した後に郵便物をみたということになります。死体発見直後にしては、やけに余裕のある行動といえます。
ちぐはぐな証拠
矛盾する証拠や証言です。
- 折られたリスト
マフィアの名前が書かれたリストは折られていました。被害者のジムはオフィスでリストを作成し、印刷したはずです。持ち運ばない用紙をわざわざ折る必要はありません。 - 溺死偽装
ケンは目撃者の頭をビンで殴り殺害しています。死体を湖に捨てますが、死んだ状態では水を飲みこまないため、溺死を偽装するには無理がありました。この時点ではコロンボが登場していますので、犯行前にシャンパンを2本持っていたことや犯行当夜は別荘にいなかったこと、大金の入出金などを気付かれています。 - 本のサイン
ケンは雑貨屋の店主と親しい関係ではないと証言します。しかし店主はケンの直筆サインとコメントが入った本を持っていました。
犯行の証拠
ケンの犯行を証明する証拠です。
- 目撃者
ケンとジムは別荘へ行く途中、雑貨屋に立ち寄ります。ケンはこの雑貨屋の店主に、ふたりが一緒にいる姿を目撃されます。もしも、店主が証言すれば、ジムはオフィスにいなかったことが証明されてしまいます。 - トリックのメモ
ケンがジム殺害に使ったトリックはジムがメモを残していました。このメモによりジム殺害の方法(トリック)が明らかになります。コロンボにこのトリックを突き付けられたジムは自白します。
感想と考察
本作は、当時24歳のスティーブン・スピルバーグ監督による演出が特徴的で、斬新なカット、役者同士の顔の距離の近さ、陰影の濃い表現など、他のシリーズ作品とは一線を画す「絵作り」が高く評価されています。特に夜のシーンでは不気味なほどの暗さがあり、フィルム・ノワールのような雰囲気を感じさせるという声もあります。犯人ケン・フランクリンの厚顔無恥なキャラクターも強く印象に残ります。コロンボが大量の小説を数日で読んでしまう探究心や、犯人を執拗に追い詰める姿も見どころです。一方で、犯行トリックについては「斬新さがなく、そこまでではなかった」という意見や、最後の決着劇については「あっさりしすぎ」「決定打に欠ける」という意見もあるようです。しかしながら、犯人が唯一のアイディアだと自白するシーンは印象的だと思います。なお、水難事故偽装の場合、肺に水が入っていなくて(被害者に水を飲んだ痕跡がなくて)偽装がばれるというのは、刑事コロンボに何度か登場します。
古畑任三郎に『アリバイの死角』というエピソードがあり、タイトルが似ています。内容は異なります。
口コミ分析
海外サイトの口コミには、Spielberg、writingなどが書き込まれています。

余談
- 作中のミステリー小説「メルビル夫人」シリーズの最高傑作として『Prescription: Murder(殺人処方箋)』というタイトルが登場しますが、これは奇しくも『刑事コロンボ』シリーズの最初のパイロット版のタイトルと同じです。これは、スタッフの遊び心や、作品への深い愛着を示すものとされています。
- 被害者ジムのオフィスにはメルビル夫人の肖像画が飾られており、他のエピソード(40話『殺しの序曲』など)にもさりげなく登場する遊び心が隠されています。
- ピーター・フォークが自らガレージで選び出したとされる、コロンボ警部を象徴するボロボロの愛車「プジョー・403」 が、このエピソードで初めて登場します。
- 犯人ケン・フランクリンを演じたジャック・キャシディは、ロバート・カルプと並び、コロンボシリーズで最も多く犯人役を演じた俳優の一人です(本作を含め3回)。そのキザで憎たらしい演技は、多くのファンに強烈な印象を残しました。
- 第二の被害者リリー・ラ=サンカを演じたバーバラ・コルビーは、現実世界でも1975年に銃撃され、36歳で亡くなるという悲劇的な運命をたどりました。事件は未解決のままです。
- 本作に登場する家政婦のエリザベス・ハロワー、生命保険屋のバーニー・クビー、警察官のマーク・ラッセルなど、多くの俳優が後のコロンボ作品にも再登場しています。
- 本作はシーズン1のオープニングエピソードですが、実際には「指輪の爪あと」に次いで2番目に撮影されました。非常に印象的だったため、急遽オープニングに繰り上げられたとされています。コロンボ警部のキャラクター造形や捜査手法も、この初期段階ではまだ進化の途上にあったという考察もあります。
この記事のまとめ
刑事コロンボ「構想の死角(Murder by the Book)」について、あらすじやトリックをご紹介しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計画性 | あり |
| 偽装工作 | マフィアの犯行を偽装 |
| トリック | 被害者の嘘の電話 |
| ミス | 致命的な目撃者 |
| 動機 | 保険金 |
| 凶器 | 拳銃 |
| コロンボの罠 | ― |

