一人二役?
古畑任三郎S3E9「雲の中の死」のあらすじとトリック解説です。西洋美術研究家の臺修三(玉置浩二さん)が犯人です。

あらすじ
臺修三は旅先までつきまとう愛人に忠告するため、飛行機のトイレで愛人とふたりきりになります。しかし、飛行機が揺れた瞬間に、事故で、臺の目の前で不倫相手が頭を強く打って死んでしまいます。不倫の発覚を恐れた臺は、死んだ不倫相手をそのままにし、その場から逃げます。
死体発見後も、臺はパイロットのふりをしたり、目撃者の子供を買収したりして、不倫相手との関係を隠し通そうとします。
登場人物(キャスト)
主な登場人物をまとめます。
名前 | キャスト | 説明 |
---|---|---|
臺修三 | 玉置浩二 | 犯人 研究家 |
市川由美子 | 川合千春 | 被害者 不倫相手 |
臺もえ子 | もたいまさこ | 妻 |
犯人
臺修三(うてな・しゅうぞう):西洋美術研究家。飛行機で南米から日本へ帰国している途中に愛人の死亡事件が発生してしまう。妻には頭がまったく上がらないタイプの夫で、妻に不倫を知られることを何よりも恐れ、愛人の事故死を知らんぷりする。何事もなかったかのうように、愛人が死んだお手洗いから立ち去ろうとするのだが、うまく自席のファーストクラスに戻ることができず、パイロットに変装することになってしまう。そのあとも、パイロットのふりを続けるのだが、これがひどく滑稽だったりする。
そもそもミステリーなのか、という気もしてくる。探偵役と事件と推理が登場しているのでミステリーなのだろうけれども、コメディ編、サスペンス編といった感じで、古畑任三郎はほとんど活躍しない。ただ、推理モノによく登場する変装が作品のテーマになっているようである。変装したはいいけど、うまくいかないことって絶対あるよね、みたいなことかもしれない。
最初のセリフ
こんなお便りが来てます。熊本県は阿蘇の河田さんですね。『古畑はよくプライベートで事件に遭遇するが、あまりにもリアリティが無い。いくらドラマの中の刑事とはいえ、何でもありというのはいかがなものか』……。何でもありなんです。
「哀しき完全犯罪」の暗転のセリフに続き、今回は最初のセリフで制作側の意見が述べられています。
トリック解説
愛人の死は事故ですが、不倫の発覚を恐れて、現場から逃げます。
不倫の証拠隠蔽
愛人は臺と撮った写真(プリクラ)を化粧品に貼り付けていました。
不倫の証拠にならないようにするため、臺は、化粧品のポーチを奪い、写真を剥がします。写真を剥がした後は、ポーチごと機内のゴミ箱に捨てています。
事件との関わりを隠蔽
臺と死体との関係が明らかになると、不倫が発覚します。
臺は、不倫を隠すため、死体との接点も、隠します。
ネクタイピンと変装
臺は身に付けていたネクタイピンを愛人が死んだトイレで失くしたと思い込みます。そして、再び、死体の元へ向かいます。この時、パイロットに変装します。
ネクタイピンは実は、自分の座席付近に落ちていました。近くに座っていた古畑がこのネクタイピンを拾っています。
目撃者の買収
臺は愛人が死んだあと、トイレから出るところを、小学生低学年くらいの男の子にみられます。この男の子に貴重な美術品を渡し買収します。
臺が目撃者の男の子から逃げ回ったため、飛行機内で犯人が消えたようにもみえます。これは、臺が意図したものではなく、たまたまそういった不可解な状況になっています。
犯人のミス
このエピソードでは、西園寺が事件の捜査をします。
目撃者
不倫相手が死んだ直後、トイレから出てくる臺の姿を男の子がみていました。
買収
臺は男の子に高価な美術品を渡し、黙っているように伝えます。しかし、古畑からプラモデルを貰った男の子は、あっさり本当のことを話します。
グレムリン騒動
臺は自分と不倫相手の関係を隠すため、化粧道具からプリクラを剥がします。この作業を適当な座席に座って行いますが、この時の姿を今泉にグレムリンとして目撃されます。
変装の失敗
ネクタイピンをみつけるため死体のもとへ戻る際、パイロットに変装しますが、乗客の今泉につかまり引くに引けない状況に陥ります。この結果、西園寺や今泉の前では乗務員、乗務員の前では客というおかしな状況に陥ります。
結末
臺は、西園寺に容疑者であることを見抜かれます。そして、結局、古畑に事情を話すことになります。
感想
笑ってしまうエピソードです。ミステリーというよりは、喜劇でした。古畑はほとんど活躍せず、西園寺が事件をほぼ解決します。
不倫相手に旅先で付きまとわれるというのは、ポアロシリーズの「ナイルに死す」に似ています(なお、ナイルに死すで付きまとってきたのは元カノでした)。タイトルの「雲の中の死」も、ポアロシリーズに同タイトルのエピソードがあります(ポアロの作品は「雲をつかむ死」とも訳され、飛行機の中で殺人が起きます)。似ている部分はありますが、展開や結末はポアロシリーズとは全く異なっています。
この記事のまとめ
古畑任三郎『雲の中の死(追いつめられて)』について、あらすじやトリックをご紹介しました。最後にドラマの内容を、殺人の計画性、偽装工作、犯人のミス、動機、凶器、トリック、古畑の罠で簡単にまとめます。
項目 | 内容 |
---|---|
殺人の計画性 | なし |
偽装工作 | 事故死の隠蔽 |
ミス | 目撃者 |
動機 | (過失致死) |
凶器 | ― |
トリック | ― |
古畑の罠 | ― |
被害者は、飛行機が揺れた際、トイレの中で頭を強く打ち、亡くなります。
一緒にトイレにいた犯人は、目の間で、被害者が死んだことになります。
番組情報
項目 | 内容 |
---|---|
脚本 | 三谷幸喜 |
監督 | 関口静夫 |
演出 | 佐藤祐市 |
長さ | 46分 |
放送 | 1996年 6月8日(火) |
視聴率 | 23.8% |