ヒヤシンス
古畑任三郎SP2「しばしのお別れ」のあらすじとトリック解説です。フラワーアレンジメント講師の二葉鳳翆(山口智子さん)が犯人です。

あらすじ
二葉鳳翆は華道の師匠である二葉鳳水を殺すため、自身が主催するフラワーアレンジメントの公演に招きます。師匠と弟子という関係にありながらも、二人はひどくいがみ合っていました。
鳳翆は自分の発表が終了したあと、大急ぎで観客席の師匠・鳳水に毒物を注射し殺害。持病をかかえる鳳水が病死したようにみせます。
暗い観客席の中で、チケットで指定された座席に座っていなかった鳳水を見つけ出すのは不可能と考えれていましたが、ある方法で犯人は被害者の居場所を突き止めていたことが明らかになります。
登場人物
主要登場人物です。
二葉鳳翆(ふたば・ほうよう)
犯人。華道家、フラワーアレンジメント講師
二葉鳳水(ふたば・ほうすい)
被害者。鳳翆の師匠
古畑任三郎
警部補。今泉の舞台を観覧
今泉慎太郎
鳳翆のフラワーアレンジメント教室に通っている。なぜか、舞台での公演者に選ばれる
キャスト
主な登場人物のキャストをまとめます。
名前 | キャスト | 説明 |
---|---|---|
二葉鳳翆 | 山口智子 | 犯人 華道家 |
二葉鳳水 | 長内美那子 | 被害者 華道家 |
犯人
二葉鳳翆(ふたば・ほうよう):華道家というよりは、フラワーアレンジメントを主題にしたパフォーマー。生け花ではなくフラワーアレンジメントということで、たしかに今泉君の踊りなんかをみていると、生け花と表現するのは無理がある気がしてしまう。
犯人は元々看護師として働いていたらしい。お花をみる機会が多かったということで、花に興味を持ち二葉鳳水の弟子になった。華麗な華道家人生が待っているかと思いきや、師匠に関係を迫られてしまう。ハラスメント師匠から逃れて独立したら今度は、仕事上の嫌がらせを受けることになってしまう…。
仕掛けたトリックは暗がりで光るネックレスを贈り、それを目印にして、犯行を行うというものだった。暗転のシーンで「もうお分かりですね」と古畑が話すので、トリックはわかりやすいということかもしれない。
トリック解説
犯人の鳳翆は、観客席で、自然死に偽装して、師匠を殺します。
自然死偽装
師匠は心臓に持病があり、発作が起きた時のために注射器などを持ち歩いていました。犯人の鳳翆は、これを利用します。
呼び出し
犯人は自分の公演の前に、師匠の鳳水を楽屋に呼び出します。このとき、師匠に誰にもみられないように行動させ、犯行直前に被害者と接触したという事実を隠蔽します。
睡眠薬入りのお茶
鳳翆はお茶に睡眠薬を入れ、師匠に飲ませます。眠らせることで、犯行時に抵抗されなくなります。なお使用された睡眠薬は即効性ではありません。
ネックレス
誕生日プレゼントと言ってネックレスをプレゼントし、その場で師匠に身につけます。このネックレスは暗闇で光るようになっています。
今泉の公演
鳳翆はフラワーアレンジメントの才能がない今泉に公演させ、公演の最中に師匠のいる席へ向かいます。
被害者に贈ったネックレスは暗がりで光るため、犯人は暗闇の会場であっても、師匠の場所がわかりました。たとえ、師匠が指定の座席に座っていなかったとしてもです。
犯人のミス
古畑が被害者の自然死(犯人の偽装工作)に疑問をもち、真相に辿り着くきっかけです。
ちぐはぐな証拠
自然死に矛盾する状況です。
腕まくり
被害者はブラウスの袖を腕まくりしていましたが、上着は捲っていませんでした。ブラウスだけを捲っているというのは気分が悪そうですし、すぐに気付きそうです。
このことから古畑は別の人間が袖をまくったと推理します。
犯行の証拠
鳳翆が犯人であることを示唆する状況や証拠などです。
今泉の発表
鳳翆は、自分の発表が終わった後、師匠を殺害するため観客席へ向かいます。このとき、今泉の公演がしめやかに執り行われていました。しかし、鳳翆は発表をみていなかったため、内容を把握していませんでした。
そのため、古畑が言ったダジャレを今泉が考えたダジャレだと指摘することができませんでした。
部屋を明るくする
古畑と今泉が遺留品を持って現れたとき、犯人の鳳翆は、部屋を明るくします。これは、遺留品の中に、暗闇で光るネックレスがあったためです。
背中の手形
鳳翆が鳳水と会った際、鳳翆は背中を叩かれ手の跡が残ってしまいます。鳳翆は背中を出した衣装で舞台に立つ予定だったため、急遽、照明を赤くする必要がありました。
手形は師匠と会っていたという証拠になったかもしれません。ただ、照明を赤くしたため、映像にも残らず、物証にはなりませんでした。
感想
今泉の発表が、ある意味、見どころではないでしょうか。犯人を追い詰める手がかりにもなっています。どうやらこのエピソードが、古畑任三郎シリーズの視聴率No.1だそうです。「古畑任三郎vsSAMP」よりも視聴率が高いというのは、意外です。
走って殺人現場に向かうというのは、「さよなら、DJ」や「古畑任三郎vsSMAP」などの古畑作品によく登場します。完全犯罪を企む犯人が全身全霊をかけてダッシュするってなんだかおもしろいです。
刑事コロンボには、犯人が走るというのはあまりないように思うので、古畑オリジナルかとも思います。ただ、「歌声の消えた海」などで、犯人がちょっと走ったりします。
この記事のまとめ
古畑任三郎の「しばしのお別れ」について、あらすじやトリックをご紹介しました。
公演会の会場で、ある女性が殺害され、被害者は心臓に持病を抱えていました。突然死にもみえる事件でしたが、当然、他殺です。犯人がどのようにして、被害者の居場所を突き止めたのか?それが事件の謎でした。『誰が』ではなく、『どうやって』が謎という倒叙の典型的なパターンだったと思います。
項目 | 内容 |
---|---|
殺人の計画性 | あり |
偽装工作 | 自然死に偽装 |
ミス | 今泉の発表内容 |
動機 | 師弟関係のこじれ |
凶器 | 毒物(ジギタリス) |
トリック | 光るネックレス |
古畑の罠 | ― |
番組情報
項目 | 内容 |
---|---|
脚本 | 三谷幸喜 |
監督 | 関口静夫 |
演出 | 河野圭太 |
長さ | 90分 |
放送 | 1996年 3月27日(水) |