『少女』は2019年10月23日に放送された、相棒season18の第3話で、通常回の初回エピソードとなります。益子鑑識課員の飼い猫捜索という日常的な依頼から始まるこの物語は、一人の少女が抱える深い心の闇と、それに巻き込まれる特命係の活躍が描かれています。この記事では、あらすじ、登場人物とキャスト、ネタバレなどをまとめた上で、感想や考察などのレビューをご紹介しています。
あらすじ
鑑識課の益子から迷子の飼い猫「メイ」の捜索を依頼された杉下右京と冠城亘は、小学生の秦野明菜(大島美優)の協力により無事に猫を保護する。後日、益子と特命係は明菜にお礼を伝えるため、彼女の住むマンションを訪れるが、そこで同じマンションの別室で発生した殺人事件に遭遇。さらに、犯人によって明菜が連れ去られたことが判明し、特命係は少女の行方を追うことになる。犯人である警備員の島村裕之(三浦誠己)は、かつて自身の恋人を卑劣な手口で自殺に追い込んだ人物への復讐を動機としていると推察される。しかし、現場に残された状況から、右京はこれが単なる誘拐事件ではない可能性を感じとっていた。連れ去られた明菜自身も、誰にも明かせない秘密を抱えており、特命係は殺人事件と少女の抱える闇という二つの謎に迫る。

登場人物とキャスト
- 秦野明菜(大島美優)
益子の飼い猫発見に協力した小学生。殺人事件に巻き込まれ、犯人の島村に連れ去られる。病気で亡くした妹の死に関して、心に秘めた「秘密」を抱えている。 - 島村裕之(三浦誠己)
飲食店経営者・沢木大介を殺害し、明菜を連れ去ったとされる警備員の男。自身の恋人を自死に追い込んだ者への強い恨みを抱いている。 - 秦野香織(中村真知子)
明菜の母親。娘の明菜が抱える心の傷に気づいていない。 - 沢木大介(三溝浩二)
殺害された飲食店経営者。島村の恋人を死に追いやった男の一人。 - 小田桐徹(白石直也)
沢木の共犯者。島村の恋人を死に追いやったもう一人の男。 - 半井瑞穂(しじみ)
島村の亡き恋人。沢木と小田桐の卑劣な行為により自死に追い込まれた。 - 秦野若菜(前田織音)
明菜の病気で亡くなった妹。明菜の抱える秘密の鍵となる存在。 - 益子桑栄(田中隆三)
警視庁鑑識課員。迷子の飼い猫「メイ」の捜索を特命係に依頼する。猫をこよなく愛する。 - 杉下右京(水谷豊)
警視庁特命係の警部。 - 冠城亘(反町隆史)
杉下右京の相棒。 - 伊丹憲一(川原和久)
捜査一課の刑事。 - 芹沢慶二(山中崇史)
捜査一課の刑事。 - 角田六郎(山西惇)
組織犯罪対策第5課長。特命係の部屋によく現れる。 - 青木年男(浅利陽介)
サイバーセキュリティ対策本部の特別捜査官。
ネタバレ
島村裕之が殺害したと当初思われた飲食店経営者・沢木大介は、実は共犯者の小田桐徹によって殺されていました。島村は恋人・瑞穂を死に追いやった沢木への復讐を果たそうと襲いかかりますが、沢木を気絶させただけで、殺害は小田桐が行っていたのです。島村は沢木を殺したと思い込み、もう一人の標的である小田桐を追います。小田桐を襲撃する現場に偶然明菜が居合わせ、彼女の機転によって小田桐の隙が生まれ、特命係が駆けつけて小田桐は逮捕されます。
明菜が島村と行動を共にしていたのは、彼が連れ去った誘拐犯だからという理由ではありませんでした。明菜は、病気で亡くなっ た妹の若菜が母親に虐待されていたという言葉を信じ込み、「母親が妹を殺した」という重い秘密を抱え、母親を深く憎んでいました。そのため、大切な人を奪われた島村の復讐心に強く共感し、自ら島村に付いて行ったのです。明菜が特命係に嘘をついていたのも、母親への憎しみと、島村への共感によるものでした。
結末
特命係は、夜中に家出しようとしていた明菜を待ち伏せし、右京は彼女と対話します。右京は、若菜の検死結果や、幼い若菜が病気で苦しむ中で母親に甘えたい一心で嘘をついていた可能性を、明菜に論理的かつ優しく説明。この真実を知り、明菜は長年の誤解と憎しみから解放され、涙を流します。その後、入院中の島村も、沢木を殺していなかったという事実を知り、復讐の虚しさを感じながらも、明菜との交流を通じて救われます。明菜は島村の隣で笑顔を見せ、最後は母親と共に帰路につき、特命係に笑顔で手を振って物語は幕を閉じます。特命係は殺人事件の解決だけでなく、一人の少女の心も救ってみせました。
感想と考察
鑑識の益子さんの飼い猫探しという、ほのぼのした導入から、深い家族の葛藤や殺人を描く重厚なストーリーへと展開していきました。益子さんの鑑識服ではないスーツ姿や、特命係との私的な交流が描かれたことで、彼のキャラが深く掘り下げられたように思います。このエピソードの最大の魅力は、タイトルが示す通り、小学生の秦野明菜という少女が物語の軸となり、その複雑な心情が描かれている点にあります。明菜役を演じた大島美優さんの演技は圧巻で、妹の死に対する深い悲しみ、母親への憎悪、そして島村への共感といった多岐にわたる感情を、その表情や瞳だけで見事に表現しておられました。子役らしからぬその演技力は、物語に一層の深みとリアリティを与えています。特に、右京さんの言葉によって長年の誤解が解け、心の重荷から解放された瞬間に見せた笑顔は、心を強く揺さぶられるような、感動的なものでした。島村の復讐劇と明菜の家族問題が密接に絡み合い、それぞれの「大切な存在を失った悲しみ」と「憎しみ」がシンクロしていく展開は、人間ドラマとしての完成度を高めています。右京さんが明菜を子供扱いすることなく、一人の人間として真実を語り、彼女の心を救い出した描写は、右京さんの教育者的な側面も描いていたように思います。最終的にハッピーエンドで締めくくられるものの、登場人物たちが経験した苦悩や喪失感は深く心に残り、事件解決以上の余韻を与えてくれる一話でした。
余談
- 本作は2019年10月23日に放送されました。このときの視聴率は11.9%を記録しています。
- 益子さんが明菜へのお礼として持参した「かりんとう」は、結局渡しそびれて特命係の部屋のおやつとなり、右京さんも食べるシーンが描かれました。
- 秦野明菜役を演じた大島美優さんは、放送当時10歳で役柄と同じ年齢でした。その卓越した演技力は多くの視聴者から高い評価を受けたようです。大島さんは「ちゃおガール2018☆オーディション」の準グランプリ受賞者であり、将来を期待される子役として話題になりました。
- 劇中では、ライブハウスに「高円寺HIGH」がロケ地として使用されました。
作中の名言
- 「子供騙しだね」(秦野明菜)
物語の冒頭、公園で右京と冠城、益子に遭遇した明菜が、益子が猫探しの説明をする様子を見て発した言葉。彼女が幼いながらも物事を冷静に見つめる賢さを持っていることを示唆する印象的なセリフです。 - 「たとえどんなに苦しくても、自分から死のうとするのは間違っています。」(杉下右京)
家出しようとする明菜に対し、右京が彼女の抱える苦しみや妹の死に対する誤解を解き、生きることの尊さを諭す場面で語られた言葉。明菜の心を救う決定的なセリフとなりました。

