『善悪の彼岸~ピエタ』は2020年1月29日に放送された相棒season18の第14話で、2週連続スペシャルの前篇です。このエピソードでは、杉下右京のスコットランドヤード時代の元相棒であり、独自の歪んだ正義を掲げる宿敵・南井十が再び登場します。この記事では、あらすじ、登場人物とキャスト、ネタバレなどをまとめた上で、感想や考察などのレビューをご紹介しています。
あらすじ
原宿で身元不明の若い女性の変死体が発見される。捜査一課は事故として処理しようとするが、特命係の右京は疑念を抱く。そんな中、右京のかつての相棒であり、南井十がロンドンから来日し、特命係に現れる。南井は、贖罪の心を持たない犯罪者に私的制裁を与えているという疑惑があり、右京は南井が過去の連続殺人や犯人の自殺に関与していると確信していた。証拠を掴めずにいた右京は、今回こそ南井を逮捕するため、周辺の捜査を開始。南井は警視庁を後にした後、自身のルーツを辿るかのように、かつて自身が預けられていた産院や養子先の跡地を訪れているようだった。一方、冠城亘は、南井と共に来日したマリア・モースタンという女性とホテルで接触し、彼女が南井に操られた実行犯ではないかと疑念を抱く。そんな中、日暮里で若い女性の絞殺死体が発見され、右京は原宿の変死体との共通点に気づく。二つの事件はマリアの犯行なのか、南井の真の目的は何なのか、右京と南井の因縁の対決が深まっていく。

登場人物とキャスト
- 杉下右京(水谷豊)
警視庁特命係所属の警部。 - 冠城亘(反町隆史)
警視庁特命係所属の警部補。右京の4代目相棒。 - 南井十(伊武雅刀)
ロンドン警視庁(スコットランドヤード)の元警部で、杉下右京のロンドン研修時代の元相棒。犯罪者の心理を巧みに操り、私的制裁を下している疑惑を持つ特命係の宿敵。 - 鏡見悟(江原唯斗)
南井十の幼少期の名前。過去に起きた「もらい子殺人事件」に関わる人物。 - マリア・モースタン(石田ニコル)
南井十と共にロンドンから来日した謎の女性。日本人の父親を持ち、日本語に堪能。冠城亘は彼女が南井に操られていると危惧する。 - 吉井恵梨香(櫻愛里紗)
原宿で変死体として発見された家出少女。SNSを利用して「神待ち」をしていた。 - アキノリ・カワエ(マコト)
マリア・モースタンの父親。スコットランドヤードの元刑事で、南井十の元相棒だった。 - 伊丹憲一(川原和久)
警視庁捜査一課の刑事。 - 芹沢慶二(山中崇史)
警視庁捜査一課の刑事。伊丹の部下。 - 角田六郎(山西惇)
警視庁組織犯罪対策五課長。 - 青木年男(浅利陽介)
警視庁サイバーセキュリティ対策本部特別捜査官。
ネタバレ
前篇にあたるこのエピソードは、右京の宿敵である南井十が仕掛ける壮大な計画の序章を描いています。原宿で発見された女性(吉井恵梨香)の変死体は、当初事故として処理されそうになりましたが、首に絞められた痕跡が見つかり、連続殺人の可能性が浮上。日暮里で発見された絞殺体の被害者もまた、同様の状況でした。南井は、ロンドンで起きた未解決の連続殺人事件「逆五芒星事件」を、東京の山手線沿線で再現しようとしていました。原宿で発見された家出少女の変死体と、日暮里で発見された麻薬売人の絞殺死体は、その「逆五芒星」を構成する最初の二つの事件だったのです。南井は、犯罪者には自らの死で罪を償うべきだという独自の歪んだ正義論を持ち、直接手を下すことなく、他者を操り死へと追い込むことを繰り返してきました。彼は、スコットランドヤード時代に培った人の心を操る能力を駆使し、ターゲットに選んだ「贖罪の心を持たない犯罪者」を死に追いやります。また、南井の出自には「鏡見悟」という過去が隠されており、彼はイギリス生まれではなく、日本で起きた「もらい子殺人事件」の生き残りである可能性が高いと右京は推理します。かつて南井が預けられていた産院の院長の不審死にも、彼の関与が疑われることになります。
結末
物語の終盤、冠城はマリア・モースタンが南井の元相棒アキノリ・カワエの娘であることを突き止めます。マリアは南井の真の狙いと、その鞄に隠された毒のカプセルを発見し、南井の恐るべき本性を知ります。南井に対し「今の貴方は私が知っている貴方じゃない」と悲痛な叫びを上げたマリアは、南井が持っていた毒を紅茶に入れ、「せめて一緒に」と心中を図ります。しかし、その結果、マリアだけが命を落とし、南井は姿を消します。マリアの死は、部屋に残された証拠から自殺として処理され、南井の関与を決定づける証拠は見つかりませんでした。特命係がホテルの部屋に駆けつけた時には既に遅く、マリアは父親の形見のスカーフを顔にかけ、穏やかな死に顔で横たわっていました。右京は、これらの事件がロンドンの「逆五芒星事件」の再現であり、東京の山手線沿線(原宿、日暮里、品川、池袋、東京)の駅を舞台にした連続殺人の計画であることを突き止めます。そしてラストシーンでは、南井が品川駅へと向かい、警官に道を尋ねた後、銃声が響き渡ります。南井は警官を殺害し、拳銃を奪ったかのような不敵な笑みを浮かべ、物語は後編へと続きます。
感想と考察
今回のエピソードは、右京さんの「元相棒」という強力な宿敵、南井十の再登場により、非常に重厚で緊迫感あふれる展開が特徴的でした。笑いどころは少なく、全編にわたってシリアスなムードが漂っている印象です。伊武雅刀さんの演じる南井十は、その存在感と薄気味悪い笑みが、まさに「最強の敵」にふさわしいものでした。右京と南井のチェスを通じた対決は、二人の高度な心理戦を象徴していたかのようです。前篇であるため、多くの謎が残されたままですが、南井の過去、彼が操る実行犯の存在、そして東京で再現されようとしている「逆五芒星事件」の全貌が、どのように解き明かされていくのか、後編への期待が大きく膨らむ一話でした。マリアが南井の本性を知って心中を図るも、結局マリアだけが命を落とし、南井に逃げられてしまう展開は、南井の恐ろしさを際立たせるとともに、後編での特命係の苦戦を予感させます。
余談
- 本作の初回放送は2020年1月29日です。この時の視聴率は14.0%を記録しています。
- タイトルにもある「ピエタ」は、イタリア語で「哀れみ」や「慈悲」を意味し、聖母マリアが亡くなったキリストを抱く姿を表す言葉です。
- 南井十は、S16第7話『倫敦からの客人』、S17第17話『倫敦からの刺客』に続き、今回が三度目の登場となります。
- 杉下右京がスコットランドヤードで南井と相棒になったのは、右京がダークナイト事件で無期限停職となり、ロンドンで捜査協力をしていた時期です。
- 劇中では、家出少女がSNSに投稿した暗号「あはわわMS99GB45YELHA」を右京が解読し、「16:00 元代々木公園入口」という場所と時間を特定しています。
作中の名言
- 「私は聖母ではありません。同じマリアでも罪深い、マグダラのマリアです」(マリア・モースタン)
南井十の真の目的と彼の冷酷さを知り、彼と共に心中を図ろうとしたマリアが、自らの悲劇的な運命と南井への複雑な感情を語る場面で発せられた言葉です。

