『梟は夜に飛ぶ』は2025年12月10日に放送された相棒シーズン24の第8話です。一見すると痴情のもつれに見える殺人事件の裏には、文字の読み書きに困難を抱える「ディスレクシア」の少年が残した暗号が隠されており、絵本作家の女性が抱える深い後悔と、子どもたちの未来を守ろうとする思いが交錯していました。この記事では、あらすじ、登場人物とキャスト、ネタバレ、感想、余談などをまとめています。
あらすじ
杉下右京と小手鞠は、亀山薫と美和子がボランティアをしている児童館を訪れる。そこで右京は不審な侵入の形跡を発見。その矢先、近隣で女性の殺人事件が発生し、容疑者が逃走中という連絡が入る。現場に駆けつけた右京と薫は、「いしや ☆18」と書かれた謎めいたメモをみつける。メモには児童館オーナーで絵本作家の並木弥生が描いたフクロウのイラストがほどこされたものだった。被害者の女性は澤村ひとみで、逃走中の容疑者は彼女の交際相手・佐野啓太。警察は痴情のもつれと見て捜査を進めるが、右京と薫は弥生が事件に関与している考え、彼女の自宅を尋ねる。
弥生の自宅には、殺人容疑者の佐野が侵入し、弥生を拘束していた。右京と薫が聞き込みに現れると、弥生は佐野に脅されながらも対応し、佐野の存在を必至に隠す。そんな様子をみた右京と亀山は自宅に容疑者がいることを疑う。捜査を進める中で、被害者のひとみが5年前に自殺した弥生の息子・蓮と面識があったこと、そして蓮と佐野が共に「ディスレクシア」であったことが判明。蓮の死を悔やむ弥生の過去と、児童館の補助金不正受給疑惑が浮上し、事件は単なる痴情のもつれではない、より深い闇へと繋がっていく。

登場人物とキャスト
- 並木弥生(中田喜子)
ふくろう児童館のオーナーで絵本作家。5年前に自殺した息子・蓮の死に心を痛めている。 - 佐野啓太(福山翔大)
澤村ひとみの交際相手で、殺人事件の容疑者。ディスレクシアを抱えている。 - 澤村ひとみ(田中真琴)
殺人事件の被害者。蓮の死の真相を追っていた。 - 小塚悟(竹森千人)
ふくろう児童館の職員。詐欺の前科を持つ人物。 - 村越絢子(原ふき子)
ふくろう児童館の館長。旧姓は石山。 - 並木蓮(葛飾心)
弥生の一人息子。5年前に自殺した。彼もディスレクシアを抱えていた。 - 杉下右京(水谷豊)
警視庁特命係の警部。 - 亀山薫(寺脇康文)
警視庁特命係の巡査部長。児童館の子供達に慕われている。 - 小出茉梨(森口瑤子)
右京と薫の友人。今回は右京と共に児童館を訪れる。右京はただの知人。 - 亀山美和子(鈴木砂羽)
薫の妻。児童館のボランティアに参加している。 - 角田六郎(山西惇)
警視庁組織犯罪対策部第五課長。特命係に情報を提供する。 - 伊丹憲一(川原和久)
警視庁捜査一課の刑事。 - 芹沢慶二(山中崇史)
警視庁捜査一課の刑事。 - 益子桑栄(田中隆三)
警視庁鑑識課の警察官。
ネタバレ
事件は5年前の児童館における補助金不正受給に端を発していました。被害者の澤村ひとみが残した「いしや」のメモは、ディスレクシアを抱える蓮が書いたものでした。蓮の読み書きの癖を分析した結果、「いしや」は本来「こつか」と書きたかったものだと判明します。つまり、蓮が会おうとしていた人物は、児童館職員の小塚悟でした。小塚には詐欺の前科があり、児童館の不正受給の首謀者でした。
5年前、蓮は小塚の不正行為に気づき、それを告発しようと小塚に接触しました。もみ合いになった末、小塚は蓮を突き落として殺害。蓮が文字練習のために書いていた紙を利用し、偽の遺書を捏造して自殺に見せかけたのでした。そして、この蓮の死に疑問を抱き、独自に調査を進めていたのが澤村ひとみでした。ひとみは、小塚が不正受給に関与している証拠を掴み、彼を問い詰めました。小塚は口封じのために、ひとみを尾行し、彼女の自宅で刺殺。そこに佐野が帰宅したため、佐野を殴り気絶させ、彼に罪を擦り付けようとしました。佐野が意識を失う直前に小塚の首を引っ掻いた傷が、彼の犯行を決定づける証拠となります。
並木弥生は、佐野がひとみを殺したと誤解していましたが、右京の推理によって真犯人が小塚であることを知ります。弥生が倒れたのは、佐野を納戸に閉じ込めるための演技であり、自ら小塚に復讐を果たすためでした。
結末
真犯人である小塚悟は右京たちによって不正受給と殺人、さらに蓮殺害の罪を暴かれ、逮捕されます。復讐のために包丁を手に小塚に迫ろうとした弥生は、右京と薫によって止められました。弥生は蓮を守ってあげられなかったと嘆きますが、薫は、蓮が絵本を通じて夏希という少女を励ましていた事実を伝え、弥生が蓮に与えた影響の大きさを語ります。右京もまた、「弥生さんが絵本に込めた思いは、子どもたちにも、蓮くんにも、ちゃんと届いている」と慰めます。弥生は警察に連行されていく佐野に、自身の絵本を渡し、「ゆっくりでいいのよ」と優しく励ましました。右京は、絵本のフクロウが希望を見出す物語は、佐野のこれからの人生を暗示していると締めくくります。
感想と考察
今回のエピソードは、補助金不正受給という社会的なテーマと、ディスレクシアという個人の抱える困難、そして深い親子の愛情と悲劇が重なり合う内容でした。小塚悟という犯人の「俺は誰にも迷惑かけずに金を稼いでいたんだよ。あいつらが余計なことをしなければ」という自己中心的な発言は、彼の悪逆非道を際立たせ、視聴者の怒りを買ったと思われます。なぜ小塚が、かつて不正が発覚して閉鎖に追い込まれた児童館で、再びスタッフとして働いていたのかという疑問が残りました。 物語中では「同じ詐欺グループのメンバーが関わっている」と示唆されていたことから、児童館の運営会社が変わっても、その背後にある詐欺組織は継続しており、小塚はその一員として潜伏していた、あるいは新たな不正の機会をうかがっていたのかもしれません。同じ場所に戻るのは大胆ですが、それが逆に足元を見られないという計算だった可能性もあります。
蓮とひとみが、危険を顧みず直接犯人に立ち向かってしまったのは、あまりにも命知らずで悲しい結末でした。内部告発や不正の追及は、個人の命を危険に晒すこともある。そうならないための「システム」の重要性を痛感させられます。蓮の死を乗り越えようとしたひとみまでが犠牲になったことは、弥生さんにとっても二重の苦しみだったことでしょう。弥生さんが心臓の病気で倒れたのは演技だったという展開には驚きましたが、息子を殺された母親の怒りと、自らの手で真実を暴こうとする強い意志を感じました。終始しんどそうに見えたのは、役者・中田喜子さんの演技力と、彼女自身の心労が表れていたからかもしれません。
最近、ドラマでディスレクシアが取り上げられることが増えたのは素晴らしいことです。この障害に対する理解を深めるきっかけになります。蓮くんの困難に気づけなかった弥生さんの後悔は、多くの親が共感する部分だったのではないでしょうか。佐野くんが今後、理解ある職場で前向きに生きていけることを願わずにはいられません。最終的に、蓮くんが弥生さんの絵本を通じて誰かの心を救っていたという事実が明かされたのは、この悲劇に一筋の光を差し込む、救いのある結末でした。
余談
- 2025年12月10日にテレビ朝日で放送されました。
- 作中で取り上げられた「ディスレクシア(読み書きの障害)」は、15人に1人程度の出現率があると言われています。有名人にもトム・クルーズなどが挙げられることがあります。
- 被害者となった女性(澤村ひとみ)が働いていたカフェは「TOKYO EXIT Glamping Base」がロケ地として使われています。
作中の名言
- 「お邪魔しませんのでおかまいなく」「いるだけで邪魔だ。亀は首ひっこめとけ(亀山薫と伊丹憲一)」
亀山薫と伊丹憲一の定番なやりとり。 - 「言っとくけど俺、おまえらほど暇じゃないからね(角田課長)」
「暇か?」の発展形ともいえそうなセリフ。 - 「犯した罪と相応の罰があなたを待っています。それがどんな罰なのか、想像するがいい!(杉下右京)」
小塚悟を糾弾し、彼の悪行に怒りをぶつける場面で登場。 - 「夜の孤独をこわがる孤独なふっくろうは、さまざまな出会いを通して、希望を見出していく。ええ、彼の物語はこれからです(杉下右京)」
事件解決後、佐野に渡された絵本について、今後の彼の人生に希望を込めて語るエピソードの締めくくりの言葉。

