森博嗣Gシリーズ11作目「ψの悲劇(The Tragedy of ψ)」のあらすじ、感想、考察です。八田家のパーティーに島田文子が参加します。
あらすじ
八田洋久(はった・ひろひさ)博士の失踪から一年。家族と友人知人は、洋久の生存を祈って、八田家でパーティーを開催します。そのパーティーに急遽参加することになった島田文子(しまだ・あやこ)は、どいうわけか、若い女性の姿で登場します。
パーティーの後、八田家の執事である鈴木が深夜に飼い猫の毒殺死体を発見。翌朝、洋久が使っていた実験室で八田家のかかりつけ医である吉野公子(よしの・きみこ)の死体をみつけます。
警察の捜査が進む中、猫と吉野公子の死に続き、今度は洋久の孫である将太が毒を飲み重体となります。公子の死体発見後、早々に八田家から逃亡した島田文子は執事の鈴木と接触し、意味深なことを話します。

ネタバレ
執事の鈴木はロボットです。猫の毒殺、吉野公子の殺害、将太の毒殺未遂はすべてロボットである鈴木の犯行です。
ロボットには、人を殺すことができません。しかし、鈴木には八田洋久がインストールされています。つまり、二重人格のような状態だったため、殺人も可能でした。
八田洋久は、妻の死に関して、吉野公子の判断ミスを恨んでおり、これが動機です。鈴木の中の八田は、夜中だけ、鈴木の自由を奪うことができたため、公子に「ψの悲劇」を読ませて、公子の体にいれたチップの誤作動を誘発し、夜中に殺害現場へおびきだしています。
「ψの悲劇」は2063年頃を描いています。「χの悲劇」で島田文子は89歳、「ψ」では100歳なので、少なくとも「χ」から11年以上経過しています。
八田洋久は、実は、孫の将太の中にも存在していました。将太の中の洋久は、孫の将太を眠らせるため、テストで猫を毒殺します。そして、自ら毒を飲み、洋久は、将太の体を奪います。
島田文子と八田洋久は共同で人工知能に、特定の人間の思考回路を作り出す方法を研究していました。研究の結果、島田と洋久はロボットの体に連続した意識をもつようになります。なお、洋久の場合、ロボットは鈴木です。人間に応用する研究を進めていた洋久は、孫の将太の中にも、洋久のコピーを作っています。
島田文子は、鈴木にインストールされた洋久の暴走を恐れ、パーティーに参加しました。しかし、洋久のねらいやトリックに気付くことはできず、公子殺害事件が起きてしまいます。
トリック
犯人は吉野公子を殺し、八田将太を自殺に追い込みました。主なトリックは以下の通りです。
- 吉野公子の殺害
執事の鈴木、正確には、鈴木の中の八田洋久が犯人です。ロボットは人を殺せないという常識が広く知れ渡った世界なので、鈴木が捕まることはありません - トロイの木馬
鈴木の中の洋久は、鈴木の体を奪うため、小説にトロイの木馬を仕込みます。この小説は、公子殺害に使われます - 感染
吉野公子は、作中に登場する「ψの悲劇」を読んだため、トロイの木馬(ウイルス)に感染しました。感染した公子は、自分の意思とは関係なく、夜中に、殺害現場となる実験室に向かいます - 将太毒殺未遂
将太の中にも、八田洋久がインストールされていました。将太の中の洋久は、将太の体を奪うため、毒を飲みます。なお、将太で毒を飲む前のテストで、猫が死んでいます
伏線
真相につながる伏線をご紹介します。
- マウスの位置
八田洋久は右利きだったので、マウスは右に置いてありました。しかし、パーティーの日、マウスは左側に動いていました。洋久以外の人物がパソコンを使ったようにみえる伏線でしたが、実際使ったのは鈴木の中に入った洋久です - 左右が入れ替わった理由
ロボットにインストールされ、八田洋久は左手でマウスを使うようになりました。人間は左脳で右手を動かしますが、ロボットは違うようです - 島田の発言
鈴木との会話における「ニュータイプ」、「ピンクになりたかった」などの島田の発言は、鈴木と島田がロボットであることを匂わせます
考察
島田文子と鈴木は、真賀田四季らしき人物と遭遇します。この人物が「すべてがFになる」に登場した真賀田四季であれば、年齢は100歳以上となります。プロトタイプではないとしても、四季は島田と同じ方法で生きていると考えられます。
洋久は次の様に語っています。
すべてをスリープさせる技術が試みられた。それが実際に、理屈どおりに実現するものなのか、誰も確かめることはできなかった。確認には、長い時間が必要であり、結局は未来に結論を先送りするしかなかったからだ。
森博嗣「ψの悲劇」ノベルスP248抜粋
誰かはわかりませんが、スリープ技術が使われたことは確かです。真賀田四季のプロトタイプ、つまり、「すべてがFになる」に登場した四季は、スリープしているかもしれません。
冷凍睡眠については、「女王の百年密室」で次のように語られています。
「え、冷凍催眠?」僕は驚いた。「でも……、あれは危険だから、禁止されているんじゃ」
(中略)
「金のあるやつらは今でもやっているよ。ただし、体質に、向き不向きがあるだけだ。歳をとってから始めたんじゃあ、適応できないよ」
森博嗣「女王の百年密室」ハードカバーP325抜粋
スリープ=冷凍睡眠と考えると、「女王の百年密室」の時代、つまり2113年頃には、スリープが実現可能という結論に至っていることがわかります。
歳をとってからでは適応できない、と言われていますが、例外もあります。なお、冷凍睡眠が禁止されたのは2083年よりも前です。
みんなの感想
「ψの悲劇」の感想としては、最後衝撃、最後怖い、もはやSF、もはやホラー、もう世界違う、最終巻待ち遠し、などがよく書き込まれています。
前作「φの悲劇」に続き、島田文子が登場し、大活躍します。
下の画像は、感想・レビューでよく使われた言葉をまとめています。言葉と言葉を結ぶ線はその言葉が同じ文で使われたことを意味しています。

| レビュー数 | 文章数 | 異なり語数 |
|---|---|---|
| 380 | 1870 | 2537 |
関連記事
Gシリーズ最終話「ωの悲劇」については、下記の記事にまとめています。

