倒叙(とうじょ)と倒叙(じょじゅつ)についてまとめています。ミステリー用語としての倒叙はミステリー作品のジャンルを意味します。叙述トリックはその名前の通りトリックの一種です。

倒叙と叙述の違い
倒叙はミステリのジャンルです。最初に真相(らしきもの)を教えてしまうという斬新な物語の書き方です。
一方、叙述ミステリというのは、叙述トリックを使ったミステリのことを指します。こちらはミステリの内容を区別するキーワードとして使われる場合があります。
なお、倒叙ではない一般的なミステリーを叙述ミステリと呼ぶ場合もあるようです。一般的なミステリーというのは、最後に真相が明かされるミステリーのことです。
倒叙トリック
倒叙トリックというのは、あまり使われない言葉です。
あえて例を挙げるならば、倒叙モノのミステリーだと思っていたらそうではなかったという展開が、倒叙トリックといえます(実際にそういった作品があるわけですが、倒叙トリックという言葉では紹介されていません。そもそも、倒叙トリックだと言ってしまうとネタバレになってしまいます)。
倒叙ミステリー
倒叙(とうじょ)ミステリーは読者や視聴者が最初から犯人を知っている作品です。
物語に登場する人物、特に事件の捜査にあたる探偵や刑事などは犯人を知りません。そのため、探偵役がどうやって犯人に辿り着くのかという部分が見どころになります。余談ですが、「倒叙」は英語で「Inverted detective story」です。ミステリの特徴を表す言葉として、「howcatchem」(how chatch)も使われます。
代表作
ドラマ、小説、漫画で有名な作品をご紹介します。
小説
世界初の倒叙ミステリー「オスカー・ブロズキー事件」が有名です。このエピソードは江戸川乱歩が選んだ傑作ミステリー短編小説として、“世界推理短編傑作集2”に収録されています。この作品は、現在広く知られている倒叙ものとは違います。最初に犯人の犯行が描かれるのは同じですが、犯人に辿り着くまでの過程が重視された作品といえます。
最近では、城塚翡翠(じょうづか・ひすい)シリーズの小説も、倒叙モノとなっています。こちらは、ドラマ化もされています。東野圭吾の有名な数理小説「容疑者Xの献身」も倒叙といえます。
ドラマ
最も有名なのは、「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」です。冒頭で犯行が描かれ、序盤終了後に探偵役が登場します。これらのドラマシリーズはほとんどのエピソードが倒叙です。
推理ドラマのシリーズの中で、エピソードが倒叙で構成される場合もあります。ガリレオの「燃える」などがこれに該当します。
マンガ
「デスノート」は倒叙ミステリーといえます。夜神月が犯人であることは読者とって自明なことですが、登場人物のほとんどは、夜神月の正体を知りません。そこに、探偵Lという人物が現れ、夜神月を追い詰めようとします。
アニメやドラマでもお馴染みの「金田一少年の事件簿」には、「犯人たちの事件簿」という外伝作品があります。これは、金田一一が解決した事件を犯人の視点で描き直した物語となっています。犯人が主人公といえる作品ですが、ミステリーというよりはコメディです。
叙述ミステリー
叙述ミステリーは叙述トリックを用いた作品です。この叙述トリックというのは、作者が読者だけを騙すトリックです。小説の場合、叙述トリックの多くは、文章で伝わる情報が少ないことを利用しています。そのため、叙述トリックは映像化すると使えなくなることが多いです。
代表作
ネタバレ注意
推理小説「十角館の殺人」「ハサミ男」「アクロイド殺し」などが、叙述トリックで有名な作品です。
この記事のまとめ
倒叙ミステリーと叙述ミステリーについてまとめました。
倒叙ミステリーであってもそうでなくても、物語で起きる事件自体に根本的な違いはありません。ただし、その見せ方は異なります。
叙述は登場人物ではなく読者にトリックを仕掛けるかどうかのため、叙述であり倒叙でもあるということがあります。そのため、物語の構成は倒叙で、そこに叙述トリックが仕掛けられているということもありえます。

