『右京の眼鏡』は2021年2月24日に放送された相棒season19の第17話です。『右京のスーツ』『右京の腕時計』に続く、杉下右京の愛用品にスポットを当てた「服飾シリーズ」の第3弾。老舗眼鏡メーカーを舞台にしたお家騒動と殺人事件が、杉下右京の眼鏡愛と青木年男の癖をきっかけに、思わぬ真相へと繋がっていきます。この記事では、あらすじ、登場人物とキャスト、ネタバレ、感想、余談などをまとめています。
あらすじ
オーダーメイド眼鏡で有名な老舗「田崎眼鏡」で殺人事件が発生。殺害されたのは、社長代行を務めていた専務の三澤渚だった。3ヶ月前に社長の田崎恭子が心臓発作で倒れて以来、会社は後継者を巡るお家騒動の渦中にあった。警察は渚の経営方針に反発していた恭子の長男・明良を容疑者として行方を追う。その頃、特命係には青木年男が駆け込んでくる。青木は、向かいのマンションの一室に怪しい男女が誰かを連れ込み、その人物が出てこないことから「監禁事件ではないか」と報告する。右京と亘が捜査を始めると、その部屋にいたのは、事件のショックから母を守ろうとする恭子の次男と末娘、そして奇跡的に意識を回復した恭子本人だった。右京は警察の身分を隠して恭子に接近。生粋の眼鏡好きであることから恭子の信頼を得て、会社の複雑な内情を探り始める。さらに、名工と名高い職人に自身の眼鏡をオーダーする中で、右京は殺人現場に残された些細な違和感から、事件の裏に隠された悲しい真実に辿り着くことになる。

登場人物とキャスト
- 田崎恭子(かとうかず子)
老舗眼鏡メーカー「田崎眼鏡」の社長。心臓発作で倒れる。 - 三澤渚(岩橋道子)
「田崎眼鏡」の専務で社長代行。恭子が倒れた後、社長代行として経営を仕切っていた。今回の事件の被害者。 - 田崎明良(赤木悠真)
田崎恭子の長男で、取締役。伝統を重んじる職人肌。殺人事件の容疑者として行方をくらます。 - 田崎拓人(田本清嵐)
田崎恭子の次男で、営業部長。会社の規模拡大を狙う野心家です。母・恭子をかくまう。 - 田崎由衣(天野はな)
田崎恭子の末娘で、工房勤務。職人。母・恭子をかくまう。 - 松田正一郎(青山勝)
「田崎眼鏡」の熟練職人。右京が自身の眼鏡の製作を依頼する、腕利きの職人。 - 新虎幸明(新虎幸明)
「田崎眼鏡」の社員。 - 杉下右京(水谷豊)
警視庁特命係の警部。論理的な思考と、その場の状況に合わせた変装・潜入捜査を得意とする。 - 冠城亘(反町隆史)
警視庁特命係の杉下の相棒。元法務省キャリア官僚。 - 小出茉梨(森口瑤子)
家庭料理「こてまり」の女将。特命係の二人に情報提供することも。 - 伊丹憲一(川原和久)
警視庁捜査一課刑事。特命係を厄介者扱いしつつも、時に協力する。 - 芹沢慶二(山中崇史)
警視庁捜査一課刑事。伊丹と行動を共にすることが多い。 - 角田六郎(山西惇)
警視庁組織犯罪対策第5課長。特命係に情報を与えることが多い。 - 青木年男(浅利陽介)
サイバーセキュリティ対策本部所属。覗き趣味があり、それが事件解決のきっかけとなることもある。 - 出雲麗音(篠原ゆき子)
警視庁捜査一課所属。 - 益子桑栄(田中隆三)
鑑識課員。右京の細かい要望に応える。 - 中園照生(小野了)
警視庁刑事部長代理・参事官。
ネタバレ
犯人は、田崎眼鏡の職人・松田正一郎でした。事件の夜、松田は完成した新作の眼鏡を渚に見せに行きました。その際、渚から会社の「身売り」話を聞かされます。長年、田崎眼鏡の技術と伝統に誇りを持ってきた松田は、その言葉に激昂し、衝動的に近くにあった植木鉢で渚を殴打し殺害してしまいます。しかし、渚が口にした「身売り」は松田の勘違いでした。実際には、外部の商社と提携して工房と工場を一体化させた新社屋を建設するという、会社の未来を考えた拡大計画でした。守秘義務があったため、渚は詳細を語れず、結果として松田の誤解を招いてしまいました…。
事件現場で渚の眼鏡が全く乱れていなかったのは、松田が殺害後、渚が試着していた新作の眼鏡から、彼女が元々かけていた 眼鏡に掛け替えさせたためでした。しかし、その際に無意識に正しい位置に直してしまったことが、右京に違和感を抱かせるきっかけとなります。鑑識の益子が現場から発見した極小のネジが、壊れた新作眼鏡のものと一致し、それが決定的な証拠となりました。一方、容疑者とされていた長男の明良は、渚と結婚を約束した仲でした。事件現場に駆けつけた彼は、渚の遺体を発見し、彼女が進めていた提携話が破談になることを恐れ、金庫から秘密保持契約書を持ち出して姿をくらましていました。松田は、自分のせいで明良が追われる身となったことに罪悪感を覚え、彼を工房にかくまっていました。
感想と考察
今回の物語は「コミュニケーション不足が招いた悲劇」でした。もし渚が守秘義務に縛られながらも、もう少し言葉を選んで松田に説明できていれば――あるいは、松田がカッとせずに、渚の真意を確かめようとしていれば。そんな「もしも」を考えさせられる、非常にやりきれない結末です。それぞれの人物が田崎眼鏡と眼鏡そのものを深く愛しているからこそ、その想いがすれ違い、最悪の事態を招いてしまった皮肉な構図は見ごたえがあります。ミステリーとしては、早い段階で犯人の見当がついた視聴者も多かったかもしれませんが、そこに至るまでの人間ドラマや、右京の眼鏡へのこだわりが捜査線上に浮かび上がる展開が秀逸でした。
右京が自身の眼鏡をオーダーする過程で事件の核心に迫っていく流れは、『右京のスーツ』を彷彿とさせ、シリーズのファンにとっては嬉しい作りでした。ただの小道具ではなく、「眼鏡」そのものが事件解決の重要な鍵となる一作です。
余談
- 初回放送は2021年2月24日で、平均視聴率は15.1%でした。
- シーズン9第14話『右京のスーツ』、シーズン11第17話『右京の腕時計』に続く本話。次は『右京のネクタイ』か、はたまた『右京の靴下』か…ファンの間では次回作への期待が高まっています。
- 今回、青木の私服姿(ダッフルコートやスウェット)と自室が公開され、 彼のキャラクターをより深く知ることができました。覗き癖という歪んだ趣味が結果的に事件解決の端緒となる展開は、もはや『相棒』のお約束となりつつあります。
- いつもはYシャツ姿の出雲刑事が、今回はハイネックのトップスにジャケットという、少し違ったファッションで登場。細かなキャラクターの着こなしの変化も本作の楽しみの一つです。
- ロケ地としては、田崎眼鏡に「シャルマン銀座並木通り」、田崎眼鏡のオフィスに「山野美容専門学校」、田崎恭子が倒れた場所に「Daiwa笹塚タワー水遊び場」などが使われました。

