森博嗣Gシリーズ4作目「εに誓って(Swearing on solemn ε)」のあらすじ、真相、トリック解説、感想、考察です。加部谷と山吹が夜行バスに乗りある事件に巻き込まれます。
「馬鹿じゃないですか、海月君って」加部谷は囁いた。
「うん、よくそう思うことはあるけれど、馬鹿じゃないんだよね」森博嗣「εに誓って」ノベルスP176抜粋
あらすじ
それぞれ、別の目的で東京を訪れた加部谷恵美と山吹早月は、同じ中部国際空港行きの夜行バスで那古野へ帰る約束をします。雪がちらつく当夜、バスに乗り遅れそうになったふたりでしたが、遅延していたバスを捕まえることができ、なんとか帰路に着きます。
ところが、そのバスが、ハイジャックされ、加部谷と山吹は人質になってしまいます。

登場人物
登場人物をまとめます。まずはGシリーズを通して登場するキャラクターです。
- 加部谷恵美
C大2年生。一人でディズニーランドへ行き、帰りのバスで人質になる - 山吹早月
C大大学院修士課程1年。国枝研所属。内緒で東京へ遊びにいき、帰りのバスで人質になる - 海月及介
C大2年生。山吹の部屋で過ごす - 赤柳初郎
探偵。ギリシャ文字の事件に興味を抱く - 西之園萌絵
N大大学院博士課程2年。犀川研所属。バスジャック事件に加部谷と山吹が巻き込まれていると知り、警察へ向かう - 犀川創平
N大助教授(准教授)。東京へ出張中 - 国枝桃子
C大助教授(准教授) - 佐々木睦子
萌絵の叔母 - 諏訪野
西之園家の執事 - 近藤
愛知県警の刑事 - 鵜飼
愛知県警の刑事。警部補 - 沓掛
警視庁の刑事。警部
以下は「εに誓って」に登場するキャラクターです。
- 柴田久美(しばたくみ)
大学生。加部谷の前に座った女性。後ろから2列目右側 - 矢野繁良(やのしげよし)
大学生。後ろから3列目左側 - 榛沢通雄(はんざわみちお)
フリーター。座っている座席は左の列 - 倉持春香(くらもちはるか)
会社員。榛沢と同じ座席に並んで座る。通路側 - 大泉芳郎(おおいずみよしろう)
会社員。右側最前列 - 市川昌夫(いちかわまさお)
バス運転手。加部谷らが乗るバスを運転する予定だったが、何者かに殺される - 三井賢太郎(みついけんたろう)
死んだ市川の代わりに、バスを運転
登場人物の座席の位置をまとめると次のようになります。
| 左シート | 通路 | 右シート | ||
|---|---|---|---|---|
| ? | ? | 最前列 | 大泉 | – |
| 省略(不明) ※通常の夜行バスは全部で10列程度 |
||||
| 榛沢 | 倉持 | ? | ? | |
| 矢野 | – | ? | ? | |
| – | – | – | 柴田 | |
| – | – | 最後列 | 山吹 | 加部谷 |
事件のまとめ
「εに誓って」の謎を整理します。
- 運転手殺害
バス運転手の市川が、何者かに殺されます。殺されたのは、バスが発車する時刻のおよそ2時間前でした - バスジャックとε
加部谷たちの乗る夜行バスがハイジャックされ、そのバスの乗客は、イプシロンという名称のツアー客のようです。イプシロンと名乗る団体がバスジャックをしているのか、バスジャックとイプシロンは関係がないのかなど、その関係性は不明です - 爆発
最終的に大泉や矢野の乗ったバスは、空港に到着する前に炎上し、そのまま谷底へと転がり落ちます。バスジャックされたバスが、突然炎上したことになります - 降車客
榛沢と倉持は炎上前にバスを降車しました。そのため、この二人は、バス炎上に巻き込まれることなく、助かります - 加部谷と山吹は降りてない?
榛沢と倉持は降りましたが、山吹と加部谷は降りていないようです。つまり、炎上するバスに乗ったままだったということになります。バスジャックから逃げ出すことを考えていたふたりが、なぜ降りなかったのか、謎です
ネタバレ
炎上したバスは、加部谷と山吹が乗っているバスではありません。バスジャックされたバスとは別に、もう一台、イプシロンの団体が乗るバスがあります。
バスジャック犯は、政治的要求のために、バスを乗っ取りました。これは、イプシロンとは関係のないテロ組織です。
テロ組織は、真の秩序の回復を目的として、イプシロンの団体が乗るバスをジャックし、人質にしようとしました。実行犯は、人質を連れたまま、国外へと逃亡する計画でした。しかしながら、組織の一人が警察に拘束され、その結果、バスジャック計画が警察に知れることになります。
バスジャックの情報を掴んだ警察でしたが、都内複数個所に爆弾を仕掛けられたため、実行犯をすぐに捕まえることはできませんでした。そこで警察は爆弾解除までの時間を稼ぐため、実行犯にバスを乗っ取らせます。実は警察は、2台のバスを用意しました。1台は、イプシロンの団体やその他の一般客が乗るバスです。もう1台は、バスジャックの犯人と警官が乗車するバスです。犯人だけを乗せるため、バス係員に成りすました警官が、犯人を誘導していました。
加部谷、山吹、柴田は遅れて到着したため、イプシロンの団体などが乗ったバスは、既に発車した後でした。警察は、犯人に気付かれるのを防ぐために、やむを得ず、3人の乗客を、これからバスジャックされるバスに乗せます。
遅れてきたのにもかかわらず、加部谷と山吹は、一番後ろの座席に座ることができましたが、これは、警官がバスジャック犯から一般市民を遠ざけるためにとった措置でした。
イプシロンの団体客は、ネットで集まった自殺志願者で構成されています。大泉、榛沢、倉持、矢野、柴田が、この団体客です。テロ組織とは関係のない団体ですが、テロ活動のために利用されてしまいました。
バスは自殺志願者が乗っていたため、炎上しました。バスジャック犯と警察、そして加部谷たちが乗ったもう一台のバスは炎上こそしていませんが、炎上と同じタイミングで、警察が犯人逮捕に動くことになります。
運転手を殺したのは、炎上したバスを運転していた三井です。三井も、イプシロンの信者、つまり自殺志願者だったようです。
考察
乗客の位置関係、真賀田四季の関与について考察します。
大泉、榛沢、倉持、矢野は同じバスに乗っていましたが、柴田、加部谷、山吹は別のバスに乗っていました。
しかし、乗客の位置関係でまとめたように、全員が同じバスに乗っているようにも、みえます。
トリック
プロローグで、エスカレーターに乗っている柴田が描かれ、そのすぐあとに、矢野が登場します。矢野は緑のダフルコートの女性がエスカレーターを上がってくる様子を目撃していますが、これは、柴田ではない別の女性であると、考えられます。作中には、柴田が緑のダフルコートを着ているという描写はないようです。
この謎の女性が、イプシロンの客だったのか、それとも、一般客だったのかはわかりません。一般客であれば、出発後早々にバスを降りているはずです。イプシロンの客であれば、バスを降りていないはずなので、バスの炎上に巻き込まれていると考えられます。
真賀田四季の関与
犀川は、「真賀田四季がこんな馬鹿馬鹿しいことをするはずがありません」(森博嗣「εに誓って」ノベルスP203引用)、と話しています。
この発言により、真賀田博士がテロを指示しているわけではないということが、推測できます。
しかしながら、警察に拘束されたテロ組織の人間を、沓掛警部は、真賀田博士の組織の一員だと考えているようです。真賀田博士の組織が関係しているが、真賀田博士自身が関与しているわけではない、ということのようです。
なお、真賀田四季とギリシャ文字の関係は、「χの悲劇」などで明らかになります。
感想まとめ
「εに誓って」の感想として、見事倒叙トリック、珍しいトリック、集団自殺、緊迫、などがよく書き込まれています。
下の画像は、感想・レビューでよく使われた言葉をまとめています。言葉と言葉を結ぶ線はその言葉が同じ文で使われたことを意味しています。

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