多忙な犯人
古畑任三郎S3E2「忙しすぎる殺人者(その男、多忙につき)」のあらすじとトリック解説です。メディアプランナーの由良一夫(真田広之さん)が犯人です。

あらすじ
メディアプランナーの由良一夫(ゆら・かずお)は、政治家の岩田大介(いわた・だいすけ)に投資を断られそうになったため、井沢ホテルで、岩田を自殺にみせかけて銃殺します。岩田のおかしな会見は、由良が仕込んだもので、これによって、岩田の自殺の動機が捏造されます。
古畑は被害者が由良の部屋に電話しようとしていたと推理し、食事中の由良と接触します。刑事の事情聴取を受けることになった由良ですが、岩田とは面識がないと、はっきり答えます。
登場人物(キャスト)
主な登場人物をまとめます。
| 名前 | キャスト | 説明 |
|---|---|---|
| 由良一夫 | 真田広之 | 犯人 プランナー |
| 岩田大介 | 佐渡稔 | 被害者 都議 |
犯人
由良一夫(ゆら・かずお):メディア・プランナー。メディアの運営を計画する仕事のように思えるが、実際の業務は会見の原稿を用意したり、ドラマの企画を作ったり、ホテルの企画を考えたりと、いろいろである。由良自身は何でも屋と自称しているが、近頃の言葉ではコンサルというのかもしれない。
非常に忙しくしており、やり手感が出ている。とはいえ、その実、下請けなので自分の企画というものを進めたがっている。その企画のスポンサーが岩田だったのだが、岩田が融資を断り、犯行に及ぶことになる。
由良は岩田を自殺にみせかけて殺すため、まず、岩田が女性スキャンダルの会見で酷い内容を話すように仕向けた。これによって、自殺の動機が捏造されることになる。その後、ホテルで岩田の頭を銃で撃ち抜いて殺害する。「会見で大失敗した議員が後悔して自殺した」というわかりやすい筋書きに加え、動機がしっかりしているため、とりあえず字面だけみれば、疑いを生じさせるような欠点は見当たらない。
ところが、被害者は死ぬ前に電話をかけまくっていたことが判明する。相手はホテルのマッサージサービスだった。自殺する前に体をほぐしてもらう人は、いてもおかしくはないのだが、違和感が全くないとも言い切れない。
そもそもマッサージを受けようとしていたわけではなさそうである。ひょっとすると電話番号を間違ったのかもしれない、ということで、最終的に古畑は由良に辿り着く。そして、由良=せっかちな性格、手袋の跡、由良の嘘(ホテルの電話を使ったという偽証、由良が岩田との関係性を否定していたこと)などが積み重なり、由良が犯人に違いないという状況証拠が出そろう。
そして、決定的な証拠となるのが、犯人のエピソードトークで、由良は刑事である古畑の前で得意げに『アイデアが浮かぶ時』の話をしてしまう。たまたまホテルの窓から男女の逢引き(交わりそうな勢いだった)を見てしまったんですよ。なるほど……。それを目撃できたのは被害者の部屋だけでした。
イルミネーションの関係で、カーテンが開いている客室は限られていた。それでもいくつか部屋はあるわけだが、運悪く、被害者の客室以外にはあり得ないということになっていた。もしもご自身の部屋からみたなら、井沢ホテルが丼沢ホテルになるというのは犯人を追い詰めるシリアスなシーンだけれども、かなり笑えてしまう。
とはいえ、部屋にいたことが証明されただけなので、岩田を殺害したとは言い切れない。岩田が自殺しようとしていたので説得を試みたが、目を離したすきに死んでしまった、疑われそうだったので嘘をついた、などという言い訳も考えられる。なので、由良の殺人を立証するには、犯行に使った手袋(おそらく処分されているだろう)や拳銃の出所(拳銃の持ち主=発砲した人物ではないが)、などを調べる必要がある。ここまでくると、ミステリーというか警察密着24時みたいになってくるので、ドラマとしての面白さは損なわれてしまいそう。
ホテルのイルミネーションを企画したのは犯人の由良だった。多忙でなければ、きっとイルミネーションの企画を覚えていいたはずで、失言も回避できたかもしれない。
最初のセリフ
テレビを見ながら食事をする人、いらっしゃいますよね。お風呂の中で雑誌を読む方、いらっしゃいますよね。ただ、私からのお願いです。人を殺す時くらいはどうか、殺人に集中してください
忙しいということが原因で、犯人は追い込まれることになります。
トリック解説
犯人の由良は岩田の死を自殺に偽装し、動機も捏造します。そして、犯行時にはアリバイも作っています。被害者と面識がなかったと話したのも、犯行計画の一つです。
自殺偽装と動機捏造
由良は岩田が不甲斐ない自分の会見を後悔し自殺した、というシナリオを用意します。好都合なことに、岩田は女性スキャンダルの会見で読み上げる原稿を由良に依頼していました。由良は、岩田が自殺したようにみせるため、あえてひどい内容の原稿を用意します。
時計破壊と硝煙
岩田の客室の時計を銃で撃って壊すことで、自殺した時刻を明確にします。時間を明確にしておかないと、犯人のアリバイ工作に意味がなくなってしまいます。
時計を壊す際に、犯人は被害者に拳銃を握らせ発砲しています。これは、遺体が発砲したという証拠(硝煙)を残すためです。
アリバイ工作
犯行時刻、岩田は、ホテルの自室で秘書と電話をしていたと嘘をつきます。実際は、携帯電話を使って、電話をしながら岩田を殺害しています。
犯人のミス
古畑が偽装工作を疑うきかっけや、犯人を追い詰める証拠などです。
岩田の電話
岩田はホテルの電話で、何度もホテルのマッサージに電話していました。この電話の記録が残っていたこと、岩田がマッサージを受けていないことなどから、古畑は、岩田が他の部屋に電話しようとして間違えたと推理します。
さらに、ホテルが閑散期だったこともあり、マッサージと似たような電話番号は、由良の部屋だけでした。
灰皿の燃えカス
由良は火皿で燃やしたメモをペンでつつきます。このペンでつつかれた燃えカスから、古畑は、犯人がせっかちな性格であると推理します。
手袋
由良は犯行時、手袋していましたが、現場には手袋の跡が残っていました。指紋は残りませんでしたが、手袋の跡が残っていました。これがきっかけで、岩田が誰かと会っていた、と疑われるようになります。さらに、手袋の跡から、犯人の片手がふさがっていた、という状況が浮かび上がります。
犯人の証言とイルミネーション
由良は古畑との会話で、秘書と電話をしていた時、向かいのビルでいちゃつく男女を目撃したと話します。
由良はホテルの自室で目撃したと話しますが、ホテルの部屋の明かりを利用したイルミネーションの関係で、自室からは絶対にみることができませんでした。
さらに、向かいのビルの男女をみることができた部屋は被害者の岩田が泊まっていた部屋だけでした。
ホテルは、井沢という名前にちなんで、“井”の文字を浮かび上がらせていました。そのため、由良が自室から窓の外をみたとすると、イルミネーションは“丼”という文字になってしまいます。
ドラマの中では、井沢ホテルの“井”のロゴが何度も登場します。また“井”の真ん中で立ち止まる古畑など、丼を連想するシーンもあります。
結末
犯人の由良が犯行に及んだ時、ホテルは客室の照明を使って、ビルに“井”の文字をイルミネーションとしてビルに描いていました。そのため、犯行時刻、由良は向かいのビルにいた男女を目撃することは絶対にできませんでした。古畑にこのことを突きつけられた由良は犯行を認めます。
いい休暇になりそうだ。
感想
『丼』というオチが面白く、それを知っていても見返すと、新しい発見のある作品でした。
向かいのビルで起きた殺人を偶然目撃するというミステリーは、刑事コロンボにもあります。「ホリスター将軍のコレクション」というエピソードです(なお、目撃するというのは、特にネタバレではありません)。
この記事のまとめ
古畑任三郎の「忙しすぎる殺人者」について、あらすじやトリックをご紹介しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 殺人の計画性 | あり |
| 偽装工作 | 自殺に偽装 |
| ミス | 窓から見たカップル |
| 動機 | 事業への投資 |
| 凶器 | 拳銃 |
| トリック | 電話をしながら殺害 |
| 古畑の罠 | ― |
ホテルのロケ地
レストランなどはセットですが、井沢ホテルの外観はオークラアクトシティホテル浜松です。
番組情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 脚本 | 三谷幸喜 |
| 監督 | 関口静夫 |
| 演出 | 鈴木雅之 |
| 長さ | 46分 |
| 放送 | 1999年 4月20日(火) |
| 視聴率 | 24.5% |

