逃げ水・あらすじ・ネタバレ解説【相棒シーズン10第2話】

逃げ水』は2011年10月26日に放送された相棒season10の第2話です。タイトルの「逃げ水」は、遠くに見えるが近づくとまた遠のく蜃気楼の一種を指し、このエピソードの象徴となっています。元法務大臣の弁護士・瀬田宗明(渡哲也)が再登場します。この記事では、あらすじ、登場人物とキャスト、ネタバレ、感想、余談などをまとめています。

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あらすじ

5年前、路上での些細な争いから20歳の若者が命を落とす殺人事件が発生。加害者の川北誠也は懲役刑を終え出所するが、その直後に撲殺体となって発見される。怨恨による犯行と見られ、捜査線上に浮かび上がったのは、5年前の事件で息子を殺された被害者の父親・新開孝太郎だった。捜査を開始した特命係の杉下右京と神戸尊は、新開夫妻が起こした民事訴訟で弁護を担当した弁護士の瀬田宗明と接触する。瀬田は、加害者側に1億円もの賠償金支払いが命じられたものの、誠也の父である川北浩二は行方不明となり、一度も支払われていない現状を語る。癒えない悲しみと怒りを抱える被害者遺族。一方で、加害者の家族もまた、世間からの非難やマスコミの追及に疲弊し、苦しい日々を送っていた…。

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登場人物とキャスト

  • 新開孝太郎(綿引勝彦)
    5年前に息子を殺された父親。加害者の軽い刑に不満を抱き、民事訴訟を起こすなど、深い苦悩と怒りを抱えている。
  • 新開清美(二木てるみ)
    新開孝太郎の妻。息子を失った悲しみと、加害者への複雑な感情を抱えている。
  • 南智子(石橋けい)
    5年前の殺人事件の加害者である川北誠也の姉。弟の起こした事件により、自身もまた世間から厳しい目を向けられ、苦しんでいる。
  • 川北誠也(川野直輝)
    5年前に新開拓海を殺害し、懲役5年の刑期を終えて出所したばかりの男。
  • 川北浩二(久保酎吉)
    川北誠也の父親。息子が起こした事件の後、行方不明。
  • 新開拓海(和木亜央)
    5年前に川北誠也に殺害された青年。
  • 瀬田宗明(渡哲也)
    元法務大臣で、現在は弁護士。5年前に息子を殺された新開夫妻の民事裁判を担当。真っ直ぐで人情味があり、強い正義感を持つ人物。右京とも過去に縁がある。
  • 杉下右京(水谷豊)
    警視庁特命係の警部。
  • 神戸尊(及川光博)
    警視庁特命係の警部補。右京の相棒。
  • 伊丹憲一(川原和久)
    警視庁捜査一課の刑事。
  • 三浦信輔(大谷亮介)
    警視庁捜査一課の刑事。
  • 芹沢慶二(山中崇史)
    警視庁捜査一課の刑事。
  • 角田六郎(山西惇)
    組織犯罪対策部第五課長。特命係の部屋に立ち寄ることが多い。
  • 米沢守(六角精児)
    警視庁鑑識課員。右京の捜査に協力的。
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ネタバレ

川北誠也を撲殺したのは実の姉の南智子でした。出所した誠也は智子の家に金の無心に現れており。このとき、賠償金をわずかだけ支払って逃亡する計画を悪びれもなく語りました。智子の母親は誠也の事件の心労が原因で亡くなっており、智子は弟が被害者の新開拓海だけではなく、母親も殺したと考えていました。弟の無責任さと、自身が今後もその罪に苦しめられることへの絶望から、衝動的に殺害。遺体の背中にあった男物の靴跡は、遺体を運び出す際に玄関に置いてあった別の靴の裏がスタンプされたものでした。
新開夫妻が自ら「犯人だ」と名乗り出ますが、これは復讐のためではありませんでした。夫妻の目的は刑事裁判でも民事裁判でも 救われることのない被害者遺族の感情が確かに存在することを、世の中に問いかけることにありました。息子の事件が風化し、加害者が罪を償わない現実への、最後の抵抗だったといえます。

結末

智子は罪を認め、新開夫妻は捜査を混乱させた公務執行妨害の罪で自ら出頭。瀬田弁護士は夫妻の行動を理解した上で、彼らに寄り添い続けようとします。事件解決後、右京は情を挟むことなく、智子の父親に「娘さんが息子さんを殺害した」という残酷な真実を告げます。神戸がその必要性を問うと、右京は「人の罪を問うべき者として、当然の態度です」と返します。その右京の背中に、神戸はどこまで行っても追いつけない「逃げ水」を見い出します。それは、絶対的な正義を貫く右京と、人間的な情の間で揺れる神戸との距離を象徴しているかのようでした。

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感想と考察

このエピソードは被害者遺族と加害者家族の心の傷という、ミステリーの中でも特に重いテーマを扱っており、法だけでは決して癒やされない現実を真正面から描き出していました。サブタイトル「逃げ水」が象徴するように、登場人物たちはそれぞれに救いを求めながらも、それが蜃気楼のように遠のいていく様が痛々しいほどに描かれています。新開夫妻の計り知れない苦しみはもちろんのこと、加害者の姉である南智子もまた、弟の罪に翻弄され、家族として連帯責任を負わされる理不尽さに苦悩します。誰もが幸せだったであろう世界が、一つの犯罪によって永遠に失われてしまう悲劇が胸に迫ります。
また、「賠償金不払い問題」という社会的なテーマも盛り込まれており、民事裁判で確定した賠償金が必ずしも支払われない現実の理不尽さも描かれていました。これは、被害者遺族が求める償いが、金銭的なものだけでなく、加害者の反省や責任感にあることを示唆しており、法制度の限界をも浮き彫りにしています。

渡哲也さん演じる瀬田宗明の存在は、この重苦しい物語において、右京とは異なる正義のあり方を示していました。「私には自分の正義より、あなたがたの感情の方が大切なんです」という瀬田の言葉は、法の枠を超えて依頼人の心に寄り添おうとする弁護士の姿を鮮烈に印象付けます。対照的に、徹底して真実と法を追求する右京の姿勢は、時に冷徹に見えるかもしれませんが、それが杉下右京の正義の根幹であり、神戸との対話でその信念が浮き彫りになっていたと思います。重い話の中で、神戸がエレベーターのないビルで何度も階段を往復させられたり、右京に「僕は紅茶が良かったのですがね~」と突っ込まれたりするシーンは、数少ない笑いどころとしてホッとさせられます。

全体として、解決はするものの、登場人物たちの心に癒えない傷が残り、視聴後もずっしりとした感情が残ります。しかし、その重さゆえに、犯罪がもたらす影響の広さ、そして人間の感情の複雑さについて深く考えさせられる、記憶に残る一編といえそうです。

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余談

  • 本エピソードにゲスト出演された渡哲也さんと綿引勝彦さんは、共に2020年にご逝去されており、お二人の共演は今となっては大変貴重な映像となりました。
  • 元法務大臣・瀬田宗明(渡哲也さん)はシーズン7以来の再登場です。
  • 特命係の部屋でタバコを吸う角田課長を神戸が注意しますが、これが右京に 頼まれた検証作業の一環であったという展開になりました。角田課長の携帯灰皿はパンダ柄でした。
  • 劇中で伊丹刑事が「いつまでも暑いな。もう10月だぞ」と発言するシーンがあります。これは実際の撮影が真夏に行われていることを示唆しており、相棒シリーズの放送時期と撮影時期のズレを感じさせる演出です。
  • 特命係の部屋でテレビが付いているシーンは比較的珍しいです。
  • ロケ地としては、稲城署に「和光市役所」、蒲田第一ホテルに「高島平ホテル」、川北浩二が泊まっていた宿に「憩の家」などが使われています。

作中の名言

  • 「私には自分の正義より、あなたがたの感情の方が大切なんです」(瀬田宗明)
  • 「人の命を奪って5年でいいわけはない」(新開孝太郎)
  • 「民事裁判は判決後、当事者間に任されてしまいますからね」(杉下右京)
  • 「賠償金が理由で自己破産できない代わりに、裁判所が取り立ててくれることもないってやつですね」(神戸尊)
  • 「人の罪を問うべき者として、当然の態度です」(杉下右京)
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