名探偵ポワロ・第20話
名探偵ポワロ『スタイルズ荘の怪事件(The Mysterious Affair at Styles)』のあらすじ、トリック解説です。スタイルズ荘で女主人が毒殺される事件です。
あらすじ
療養中のヘイスティングス中尉は友人に招かれスタイルズ荘へと赴く。とある日の早朝、女主人であるイングルソープ夫人がストリキニーネで毒殺される事件が発生。中尉は亡命中の名探偵ポワロに捜査を依頼する。
中尉から事件のあらましを聞いたポワロは現場へ急ぐ。そしてその観察力により、保存された死体発見場所――夫人の寝室からいくつかの手掛かりを得る。寝室には書類箱が残されており、ポワロが調べた後、犯人がそれをこじあけ中から何かを取り出したことが明らかになる。
事件は、夫であるアルフレッド・イングルソープに容疑がかかる。しかし、夫には完璧なアリバイがあり、犯行を立証することはできなかった。結局、死んだ夫人の息子であるジョンが逮捕されることになる。
一方ポワロはヘイスティングス中尉の発言からヒントを得て、書類箱があった部屋のマントルピースの上にあった置物を整えたことを思い出す。スタイルズ荘へ急いだポワロはある重要な証拠を手に入れる。
登場人物
ポワロ、ヘイスティングス中尉、ジャップ警部以外の登場人物です。
- イングルソープ夫人
被害者。毒殺される。強心剤を常用している - ジョン・カベンディッシュ
イングルソープ夫人の義理の息子。ヘイスティングス中尉をスタイルズ荘へ招いた人物 - メアリ・カベンディッシュ
ジョンの妻 - ローレンス・カベンディッシュ
ジョンの弟 - アルフレッド・イングルソープ
イングルソープ夫人の二人目の夫。髭の男性 - エヴリン・ハワード
夫人の友人。草むしりの女性。途中、スタイルズ荘を出ていく - シンシア・マードック
スタイルズ荘の居候。ローレンスと同じ病院で働く女性 - レイクス夫人
騎乗の女性。未亡人
注目のシーン
庭球。

©Agatha Christie Ltd, ITV BBC
謎
毒殺犯、そして、その手口が最も大きな謎です。
夫人の毒殺
スタイルズ荘の住人が、夫人の異変に気付いたのは、夜明けの5時頃です。
鍵のかかった寝室を押し開けたとき、まだ夫人は生きていましたが、その後、亡くなります。
毒殺方法
寝室にはココアとコーヒーが残されていました。調査の結果、ココアから毒物は検出されませんでしたが、コーヒーの方はそもそも調べることができませんでした。
事件当夜、夫人は20時に就寝したので、もしも、この時、ストリキニーネの入ったコーヒーを飲んだのであれば、すぐにでも死亡していたはずです。しかし、夫人が亡くなったのは就寝の9時間後でした。
アリバイ
夫人が亡くなった時、屋敷にいなかった人物がいます。夫のアルフレッドと夫人の友人であるハワードです。夫は、夜遅くに出掛け、そのまま朝帰りします。ハワードの方は、夫人との口論の結果、屋敷を出ていっていました。
ハワードが出ていくとき、アルフレッドをにらみつけながら、ヘイスティングス中尉に、「悪魔に気を付けて」と忠告しています。ハワードは、夫人の新しい夫が悪党だと言い付け、喧嘩になり、出ていきました。
証拠品
夫人が死んだ寝室には、いくつかの謎めいた証拠品が残されていました。
粉々のコーヒーカップ
寝室のコーヒーカップは粉々に砕け散っていました。しかし、近くに落ちていたランプシェードは、割れていますが、粉砕されてはいません。
つまり、コーヒーカップだけを誰かが粉々にしたようです。なぜ、そのようなことをする必要があったのか、不明です。
糸くずとろうそくの跡
寝室から、シンシアの部屋へ続く扉に、緑の糸くずが付いていました。持ち主はわかりません。
そして、誰が落としたかわからない白いろうが、絨毯に落ちていました。これも、落とし主はわかりません。
口論
夫人は死ぬ前に誰かと口論していました。
ジョンの妻であるメアリと、メイドがそれを聞いていました。口論の相手は、夫だったと考えられますが、夫はこれを否定します。
暖炉
暑い日にも関わらず、夫人が死んだ日、寝室の暖炉は火がいれられていました。
火を入れるように頼んだのは夫人ですが、その理由は明らかではありません。
手掛かり・伏線
真相を明らかにするヒントです。ポワロは中尉に複雑な事件であると話しています。
証言
メイドの証言です。
- 強心剤
夫人は、亡くなった日、強心剤を飲んでいました。それが分かる理由は、強心剤が空になっていたからです。 - 睡眠薬
夫人の飲んでいた睡眠薬は、死ぬ2日前に空になっていました。物証として、洗面台に空の睡眠薬の箱が残されていました。
証拠
犯行に使われたとい思しきストリキニーネは、薬局で購入されており、その記録が残っていました。購入したのは、イングルソープ氏のようですが、それを、彼は否定します。
事実、イングルソープ氏にはアリバイがあり、複数の人物が、12km離れた場所にいたことを証言しています。ただ、氏は、それを隠すという不審な行動をとっています。
つけひげ
屋敷の屋根裏に衣装箱があり、そこに、つけ髭が仕舞われていました。それをつけると、イングルソープ氏のようになるようです。
真相(ネタバレ注意)
夫のアルフレッドと友人のハワードが犯人です。二人は愛し合っており、夫人の遺産が目当てでした。
事件には、毒殺以外に3つの出来事が重なっており、これらが殺人事件を複雑にしています。
毒殺の真相
犯人は、夫人の強心剤に臭化カリウムを成分に含む睡眠薬を入れ、沈殿反応を起こし、強心剤のストリキニーネだけを底に沈めさせました。
最後の一回分を飲んだ夫人は、そこに溜まった致死量のストリキニーネを摂取し、死亡しました。
毒が入っていたのはコーヒーでもココアでもありませんでした。
死亡時刻から、夫人は強心剤を夜明けに飲んだと考えられます。もしくは、睡眠薬の効果によってストリキニーネの毒性が遅れて生じたとも考えられます。
手紙
犯人はある重要な手紙を手に入れるため、ポワロが調べた後の寝室に忍び込みました。しかし、ポワロらが部屋にやって来たため、それを急いで、マントルピースの置物の中に隠しました。
そして、その手紙は、ずっとそこに置かれたままとなります。
夫アルフレッドからハワード(ニックネーム;イビー)へ宛てられたその手紙には、夫人殺害について書かれていました。
偶然、この手紙をみつけた夫人、それを書類鞄の中に仕舞っていました。
ポワロは、最初部屋にやってきた時、マントルピースの上を整理整頓しています。そして、書類ケースがこじ開けられたあと、もう一度、置物の配置を調整しています。これらの様子が、しっかり撮影されています。
変装
薬局に現れたのは、つけ髭で変装したハワードです。離れた所で目撃された夫は、本物です。
嫌疑回避
ハワードがアルフレッドを悪魔呼ばわりしていたのは、演技です。
ハワードが犯人であると思い込ませ、一度無罪にすることで、容疑者から外すトリックです。
コーヒーカップの真相
コーヒーカップを砕いたのは、ローレンスです。彼は、思いを寄せるシンシアの犯行を疑い、彼女をかばおうとしました。
鍵のかかっていない扉
居候であるシンシアの部屋は、夫人の隣です。
ローレンスは夫人の寝室に入った時、シンシアの部屋へ通ずる扉が開いていることに気付きます。そして、彼女の犯行を疑います。
中尉はローレンスがマントルピースをみていたと話していましたが、本当は、扉の鍵を見ていました。
糸くずの正体
糸くずを残したのはジョンの妻であるメアリです。彼女は未亡人のレイクスと夫の不倫を疑っていました。そして、その証拠である手紙を手に入れるため、早朝に、夫人の寝室に忍び込みました。このとき、夫人が発作を起こします。そして、慌てて部屋から飛び出したメアリは持っていたろうそくを落とし、さらに、衣服を引っかけて繊維(糸くず)を残してしまいます。
実際、そのような手紙はなく、ただの妄想であったことが明らかになります。
メアリが現場に残したのは、腕にまいていた農作業用カバーの糸くずでした。服装の選び方は、その人の気分次第なので、理由を求めても簡単に言い逃れできそうですが、この場合、メアリは庭作業に出ようとしていたので、カバーを身に着けていたと考えられます。
口論の真相
夫人と言い争っていたのは、息子のジョンです。
彼は、未亡人に金を貸していました。このことを母親であるイングルソープ夫人が知り、口論となりました。
暖炉の火
ジョンの行いに立腹した夫人は、遺言から息子を外す決意をします。そして、既に用意してあった遺言を燃やすため、暖炉に火をいれさせました。
結局、新しい遺言を書き始めぬまま、夫人は亡くなります。
結末
すべての謎を解いたポワロは、決定的な証拠である手紙を、犯人のアルフレッドとレイクスに突き付け、彼らを告発します。
事件解決後、ジョンとメアリは仲を取り戻し、ローレンスはシンシアと婚約します。
感想と考察
友人を殺そうとする女と妻を殺そうとする夫、愛する人をかばう男、愛する人を疑う女、未亡人に金を貸す男が絡み合うという事件でした。複雑な分、謎解きがとても爽快です。
ストリキニーネ
臭化カリウムの入った睡眠薬と、ストリキニーネを混ぜて飲んでしまったため、若い女性が死亡するという事件が、実際にあったようです。つまり、ストリキニーネが沈殿し、底にたまり、一度に致死量を飲んでしまうという事故です。
たとえ、ストリキニーネが沈殿していたとしても、ドレッシングの要領で、よく振って飲めば、回避できるようです。
この記事のまとめ
名探偵ポワロ「スタイルズ荘の怪事件」のあらすじ、真相をご紹介しました。このエピソードは英国放送でも第20話で、第3シーズンの第1話となります。
- スタイルズ荘の主人・イングルソープ夫人が毒殺される
- 夫人の夫(アルフレッド・イングルソープ)に容疑がかかるが、アルフレッドにはアリバイがあり犯行は不可能だった
- 犯人はアルフレッドと被疑者の友人エヴリン・ハワードだった。アルフレッドとエヴリンは不倫関係にあり、夫人を殺して遺産を手に入れようとしていた
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 監督 | ロス・デヴェニッシュ Ross Devenish |
| 脚本 | クライブ・エクストン Clive Exton |
| 原作 | アガサ・クリスティ Agatha Christie |
| 制作 | LWT (現ITV) |

