『騙し討ち』は2018年2月22日に放送された相棒season16の第17話です。このエピソードでは、IT企業の営業マンが殺害された事件を発端に、警察組織の倫理や正義が問われる展開となり、組織の論理と個人の正義が衝突するテーマが描かれています。この記事では、あらすじ、登場人物とキャスト、ネタバレなどをまとめた上で、感想や考察などのレビューをご紹介しています。
あらすじ
大手システム会社の営業マンが自宅で殺害され、個人所有のパソコンが奪われる事件が発生する。捜査一課が強盗殺人の線で捜査を進める一方で、特命係も捜査に乗り出す。特命係は、事件が単なる窃盗ではなく、パソコン内のデータが狙われた可能性を疑う。やがて、汚職や経済事件を専門とする捜査二課の梶健介刑事が、この殺人事件に関心を寄せていることが判明。梶刑事は、殺害された営業マンが中央省庁の贈収賄事件に関与しているとにらんでおり、情報漏洩を危惧して捜査一課ではなく特命係に協力を提案する。その後、冠城は被害者の勤務先から文部科学省の役人との関わりを突き止め、一方の右京は、被害者のマンションの隣人である男性に注目する。捜査の過程で、一課と二課の間で情報共有を巡る対立が生じる中、特命係は果たして事件が窃盗目的だったのか、それとも贈収賄に絡むものだったのか、その隠された真実を解明していく。

登場人物とキャスト
- 杉下右京(水谷豊)
警視庁特命係の警部。 - 冠城亘(反町隆史)
特命係。右京の相棒。殺人事件と贈収賄事件の関連性を探るべく、右京と二手に分かれて捜査を進める。 - 伊丹憲一(川原和久)
捜査一課の刑事。 - 芹沢慶二(山中崇史)
捜査一課の刑事。 - 角田六郎(山西惇)
組織犯罪対策部組織犯罪対策五課の課長。 - 青木年男(浅利陽介)
サイバーセキュリティー対策本部所属。被害者と区役所時代に知り合いだった縁で、特命係に情報を提供する。 - 梶健介(矢島健一)
警視庁捜査二課の刑事。中央省庁の贈収賄事件を極秘に追っており、今回の殺人事件にも関心を示す。 - 瀧川洋(山中聡)
殺害された営業マンと同じマンションに住む男。過去に窃盗の前科がある。 - 稲葉芳郎(斉藤悠)
事件の被害者。大手システム会社の営業マンだった。 - 小山菜穂子(広澤草)
被害者である稲葉の婚約者。 - 岸和田啓吾(阪田マサノブ)
「ASTRAL SYSTEM」の営業開発部長で、稲葉の上司にあたる人物。 - 城島忠彦(西ノ園達大)
文部科学省総合教育局教科書企画課の課長。贈収賄疑惑の中心人物の一人。 - 田崎茂(松林慎司)
文部科学省職員で、城島の部下。 - 篠崎(五宝孝一)
警視庁刑事部捜査第二課長。
ネタバレ
当初、窃盗目的の殺人と思われた事件は、文部科学省のデジタル教科書導入を巡る贈収賄事件へと発展していきます。殺害されたIT企業の営業マン・稲葉芳郎は、文科省の城島忠彦課長が関わる贈収賄事件を告発しようとしていたため、城島によって殺害されていました。城島は証拠となるパソコンのデータ隠滅を画策していたわけです。この贈収賄事件を追っていたのが、捜査二課の梶健介刑事です。梶刑事は、事件の立件に焦るあまり、過去に窃盗の前科がある瀧川洋を協力者として利用していました。瀧川は梶の指示を受け、稲葉の部屋に盗聴器を仕掛け、さらに稲葉のパソコンを奪い、そのパスワードの解読を試みます。梶は、情報漏洩を恐れて捜査一課との協力を避け、特命係を間接的に利用してパスワードを解析させ、贈収賄事件の証拠を得ようとしました。しかし、右京の鋭い洞察力により、瀧川が事件を通報した「匿名通行人」と同一人物であること、そして梶が過去の事件でも瀧川を非合法な協力者として利用し、さらには今回の事件でも証拠をねつ造していたことが暴かれます。
結末
殺人事件の犯人である文科省課長の城島忠彦は、特命係の捜査によって逮捕されます。また、贈収賄事件の証拠を得るために非合法な手段を用い、証拠ねつ造まで行った捜査二課の梶健介刑事も、右京の追及により逮捕されることになります。梶刑事によって利用され、犯罪に加担してしまった瀧川洋は、右京から「やり直しましょう」という言葉をかけられ、自身の行為を深く悔いることになります。
感想と考察
今作は「組織を守るための犯罪」というテーマを深く掘り下げたエピソードでした。捜査一課と捜査二課という異なる部署の対立に特命係が介入していくという構図の中で、警察組織内部の倫理観が描かれていたと思います。そして、殺人事件と贈収賄事件という二つの軸が複雑に絡み合い、飽きのこない展開や真相の衝撃など、最後まで楽しめる内容になっていました。刑事の「検挙のためなら手段を選ばない」という暴走は、組織としての成果を求めるあまり、法の正義を踏み越えてしまう危険性を象徴しているかのようです。これに対し、右京が放った「組織を守るためにいるのでいるのではない」という言葉は、物語の核心をつくのと同時に、相棒というドラマのテーマも感じられるセリフになっていました。そのうえで、梶に利用された瀧川の葛藤や、右京が彼に差し伸べた「やり直しましょう」という言葉は、再生や成長を描いた普遍的なドラマとしての見ごたえがあったと思います。
余談
- 本作の放送日は2018年2月21日でした。このときの視聴率は12.0%を記録しています。
- 脚本は金井寛、監督は権野元が担当しました。
- 山中聡さんは、捜査一課の芹沢慶二を演じる山中崇史さんの実弟です。
- 殺害された被害者はフランスの象徴主義の画家オディロン・ルドンを好んでいました。右京は、ルドンの本名である「ベルトラン=ジャン・ルドン」から被害者のパソコンのパスワードを解読しています。
- 放送直後の2月21日未明に、衣笠副総監役で出演していた俳優の大杉漣さんの訃報が報じられました。
作中の名言
- 「我々警察官は法の正義を守るためにいるんです。組織を守るためにいるのではありませんよ!」(杉下右京)
組織の論理を優先し、違法な捜査を行った梶刑事に対し、杉下右京が警察官としての本質を問い質した場面で発せられました。 - 「やり直しましょう」(杉下右京)
梶刑事に利用され、自らも罪を犯してしまった瀧川洋に対し、杉下右京が彼の更生を促し、新たな道を歩むことを勧めた言葉です。

