刑事コロンボ第28話・S4E3『祝砲の挽歌(By Dawn’s Early Light)』は士官学校の校長が犯人で、犯行時にみた光景が決め手になるエピソードです。三谷幸喜氏が最も好きなエピソードと語り、NHKの「あなたが選ぶ!思い出のコロンボ」では第6位に選ばれるなど、その評価が非常に高いエピソードでもあります。この記事では、あらすじ、登場人物とキャスト、犯人の偽装工作や結末、感想、考察、小ネタ(豆知識やトリビア)などをまとめています。
あらすじ
士官学校の校長であるライル・C・ラムフォードは、元教え子の理事長が士官学校を廃校にし、新たに短大を設立するのを阻止するため、理事長殺害を企てます。
ラムフォードは開校記念日に使う大砲の砲身に雑巾をつめ、さらに、砲弾を危険な爆薬の入ったものにすり替えます。そして、理事長を挑発し、祝砲を撃つ役割を任せます。挑発にのった理事長は祝砲を放ち死亡。犯人は、大砲の事故に偽装し、完全犯罪を成し遂げようとします。
犯人のラムフォードは、大砲の清掃係である青年が雑巾を砲身に忘れたことにして、事故の原因を捏造しようとします。ところが、その青年は、こっそり外出していたため、そもそも、記念日の前は掃除をしていませんでした。
コロンボは雑巾を詰めた人間がいること、空砲のはずが危険な爆薬にすり替わっていたこと、などから殺人を疑います。
そして、ラムフォードがリンゴ酒の密造を知ったのが、事件が起きた日の早朝であり、その時、大砲の近くにいたことを証明し、ラムフォードを追い詰めます。

©Universal City Studios
登場人物とキャスト
- コロンボ警部(ピーター・フォーク)
事件の捜査を担当。いつものトリッキーな手法を封印し、犯人の信念に深く向き合い、共感を覚える珍しいエピソードとなる。吹き替え声優は小池朝雄。 - ライル・C・ラムフォード大佐(パトリック・マクグーハン)
ヘインズ陸軍幼年学校の校長。伝統と国家防衛の信念のため、学校の廃止を企む理事長を殺害。規律に厳しく、生徒からも恐れられるが、深い愛情と教育への情熱も持ち合わせる複雑な人物。この役でエミー賞を受賞した。吹き替え声優は佐野浅夫(一部中庸助)。 - ウィリアム・ヘインズ(トム・シムコックス)
陸軍幼年学校の理事で創立者の孫。経営難を理由に学校を男女共学の短期大学に転換しようと計画する。ラムフォードとは旧知の仲だが、学校の未来を巡って激しく対立する。吹き替え声優は堀勝之祐。 - ブレイディ(マデレーン・シャーウッド)
ラムフォード大佐の秘書。ラムフォードとヘインズの口論を聞き、ヘインズが自ら祝砲役を引き受けた際の証人となる。吹き替え声優は高橋和枝。 - スプリンガー候補生(マーク・ホイーラー)
ヘインズ陸軍幼年学校の問題児。密造酒を作っていたことからラムフォード大佐に目をつけられ、事件の濡れ衣を着せられそうになる。後に映画『アポロ13』でニール・アームストロング役を演じた。 - ミラー候補生(ロバート・クロットワーシー)
靴の汚れをラムフォード大佐に指摘され、厳しく叱責される生徒の一人。 - モーガン候補生(ブルーノ・カービー)
クレイマー刑事の息子。スプリンガー候補生と共にリンゴ酒密造に関わり、コロンボに高校時代の思い出話を語る。 - クレイマー(ブルース・カービー)
コロンボ警部の部下として初登場。当初は「デーブ」と呼ばれていたが、後に「ジョージ」が定着する。 - ルーミス大尉(バー・デベニング)
ラムフォード大佐の部下。リンゴ酒密造犯捜査を命じられ、その不本意そうな反応が印象的。吹き替え声優は徳丸完。
トリック解説
犯人は大砲を使って、事故死に偽装します。
事故死偽装
大砲の砲身に詰め物をし、砲弾を取り替えることで、大砲が爆発するようにします。
- 雑巾
砲身には、清掃用の雑巾を詰めます。もしも雑巾がみつかっても、清掃員がうっかり忘れたようにみせることができます。 - 砲弾のすり替え
通常は空砲を使っており、中身は硝酸ナトリウムと詰め綿です。これを、ゼリグナイト(プラスチック爆薬)という爆薬にかえます。 - 被害者を挑発
開港記念日に祝砲を撃つのは主催者であるラムフォードが務めるはずでした。これを標的の理事長に任せるため、主催なんて大役はできない、などと言い挑発します。挑発にのった理事長は、主催者となり、爆弾となった大砲で祝砲を放ちます(被害者の理事長は、学校の元生徒であり、士官学校には、彼の生徒時代の記録が残っていました。記録には、人が白と言えば黒と答える、というような内容が書かれており、できないと言われればできると答える、つむじまがりな性格のようです)。 - 事故原因の偽装
大砲の掃除係に事故の原因を押しつけようとします。掃除係として、学内で問題行動の多い生徒を選び、あの生徒ならやりかねない、という雰囲気を作ります。
犯人のミス
コロンボが事件に疑いを持ち、犯人を追い詰める手がかりです。
ちぐはぐな証拠
- 現場に散った切れ端
事故のあった現場には、雑巾の切れ端が落ちていました。この切れ端をみつけたコロンボは、単なる事故として処理せず、ぼろ雑巾を詰めた人物の捜索を始めます。 - 遠くまで響いた爆発音
事故は普段の空砲ではなく、危険な爆薬の入った砲弾だったため、爆発音が12km先まで鳴り響いていました。これがきっかけで、砲弾に爆薬が詰められていたことが明らかになります。 - 清掃係の青年
大砲の清掃係をしていた青年は「雑巾を忘れることは不可能」と証言します。大砲は毎日掃除されています。しかし、事件の前の日は、清掃係の青年が恋人と会うため学校を抜け出していたので、掃除されていませんでした。大砲の掃除をしていないので、雑巾を忘れることはありません。
犯行を示唆する証拠
- 武器庫の鍵
火薬を持ち出せる人物は、犯人のラムフォード、清掃係、発射当番だけでした。 - 被害者の青写真
被害者の理事長は、体育館の青写真を持参しており、この青写真には、男子用の小便器がありませんでした。 - 清掃係の選出
学内で大砲の掃除は名誉ある係でした。しかし、清掃係に選ばれていた青年は、学校の問題児でした。
ラムフォードは、最初、清掃係についてよく憶えていないといった内容を話します。しかしその後、彼が選ばれた理由などを詳しく話します。 - 少ない生徒
食堂には生徒が少なく、宿舎は空きが多くなっていました。コロンボは青写真や生徒数をみて「理事長は経営難の学校を共学に変えようとしていた」ということに気付きます。
決定的な証拠
リンゴ酒
生徒たちは宿舎でリンゴ酒を密造していました。ラムフォードは、大砲に雑巾を詰めた時、宿舎にぶら下がっているリンゴ酒をみつけます。
- リンゴ酒の目撃が可能な曜日
生徒たちは、リンゴ酒を吊るす曜日を土曜日と決めていました。 - リンゴ酒の目撃が可能な時刻
リンゴ酒は、土曜の夜から日曜の早朝にかけて吊るされていました。夜は暗くて見えず、早朝は発覚を防ぐため生徒が片づけているので、リンゴ酒は、土曜の明け方(6:15)から、生徒が片づける(6:25)までのわずかな時間にしか、目撃することができません。 - リンゴ酒の目撃が可能な場所
木が邪魔をするため、リンゴ酒がみえるのは、大砲の近くだけでした。 - リンゴ酒の捜索を始めた日
リンゴ酒をみたラムフォードは大砲爆発事件の直後にリンゴ酒の捜索を始めています(いつの出来事なのかハッキリしている)。
以上のことから犯人のラムフォードは、事件当日の朝に大砲の近くにいたことになります。部屋から一歩も出ていないと証言したにもかかわらず、大砲の近くにいたことを証明され、犯人は自白します。
事件の日よりも前(例えば1週間前の土曜日)に犯人がリンゴ酒をみていたとすれば、翌日には、リンゴ酒の捜索を始めていたはずです。つまり、犯人が大砲近くにいたのは、大砲の事件があった日以外には、考えらえません。
感想
閉鎖的な陸軍幼年学校という舞台設定が、物語に独特の緊張感と重厚感を与えています。冒頭の台詞のない長いシーンは、ラムフォードの周到な犯行準備と冷静さを描き出し、期待感を最大限に高める演出になっていました。パトリック・マクグーハン演じるラムフォード大佐の存在感と演技力は圧倒的で、その完璧な役作りに魅了されます。コロンボ警部がいつもの挑発的な捜査スタイルを封印し、真正面から犯人の内面に迫るという、シリーズでは珍しいアプローチも本作の魅力の一つです。個人的には食堂のパンをくすねるようにポケットにしまい、夜中の3時にそれを食べるというシーンが印象的でした。原題は「By Dawn’s Early Light」で直訳すると「夜明けの光に」です。邦題の「祝砲の晩歌」とは異なります。
古畑任三郎「忙しすぎる殺人者」に似ている気がします。
口コミ分析
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小ネタ
- コロンボの手帳の中身が数秒間だけ映し出されるシーンがあります(本編54分18秒頃)。
- コロンボを空き部屋に案内したモーガン候補生を演じたブルーノ・カービーは、クレイマー刑事を演じたブルース・カービーの実の息子です。
- このエピソードに登場する「ヘインズ陸軍幼年学校」のロケ地は、サウスカロライナ州チャールストンです。
- 「幼年学校」は軍の施設ではなく、「軍事教育を取り入れた私立高校」であり、生徒たちは「ただの高校生」です。この事実を知ると、ラムフォード大佐の「誰かが子供を大人にしてやらなくては」という言葉や、スプリンガーが謹慎で済んだ理由などがより深く理解できます。
- ラムフォード大佐がヘインズを挑発する際に引用する「ストーンウォール・ジャクソン」は、南北戦争における南軍の優秀な将軍、トーマス・ジャクソン将軍の通り名です。
- 原題「By Dawn’s Early Light」(夜明けの光によって)は、事件解決の鍵となる早朝の出来事を暗示しており、邦題「祝砲の挽歌」と共に、この作品のテーマを象徴する秀逸なタイトルです。
- 半んンを演じたパトリック・マクグーハンは本作を含め、コロンボシリーズで最多の4回犯人役として出演しており、さらに5作品で監督も務めるなど、主演のピーター・フォークと深い信頼関係を築いていました。
この記事のまとめ
刑事コロンボ「祝砲の挽歌」について、あらすじやトリックをご紹介しました。最後にドラマの内容を、殺人の計画性、偽装工作、犯人のミス、動機、凶器、トリック、コロンボの罠で簡単にまとめます。犯人は、砲身に雑巾をつめ、大砲が爆発するようにします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 殺人の計画性 | あり |
| 偽装工作 | 事故死を偽装 |
| ミス | リンゴ酒の捜索 |
| 動機 | 廃校を阻止 |
| 凶器 | 大砲 |
| トリック | 砲身に雑巾を詰める |
| コロンボの罠 | ― |

