刑事コロンボS5E5・通算36話「魔術師の幻想(Now You See Him)」は、華麗なマジックと緻密な殺人計画が織りなす幻想の世界で、ジャック・キャシディが三度目の犯人役として登場し、その圧倒的な存在感で視聴者を魅了します。この記事では、あらすじやトリックなどを詳しく解説しています。
あらすじ
マジシャンのサンティーニ(ジャック・キャシディ)は、マジックショーのクラブオーナーに、昔、ナチス親衛隊の軍曹だったという弱みを握られていました。クラブオーナーによる講演料の搾取にサンティーニが意見したことがきっかけで、オーナーは、サンティーニの過去を公表しようとします。サンティーニは口封じのため、オーナーを拳銃で殺害。プロの犯行にみせる証拠を残したり、アリバイ工作をしたりして、容疑者から外れようとします。さらに、オーナーが殺される直前までタイプしていた告発状を処分し、動機を示す証拠も隠滅します。
コロンボは犯人が被害者の部屋の鍵をピッキングしたという証拠をもとに、サンティーニに手錠をかける罠を仕掛けます。見事に手錠を外したサンティーニをコロンボは犯人と確信します。サンティーニのアリバイを崩したコロンボでしたが、動機だけは明らかになりません。そこでオーナーが殺される直前まで椅子に座って何をしていたかを推理し、タイプのインクリボンを見つけます。このインクリボンには、オーナーがタイプしていた告発状の内容が残っていました。動機や犯行の方法を立証されたサンティーニは、「完全犯罪を成し遂げるつもりだった」といい、罪を認めます。

©Universal City Studios
登場人物とキャスト
- サンティーニ(ジャック・キャシディ)
世界的に高名なマジシャン。本名はステファン・ミューラーで、ナチス親衛隊員だった過去を隠している。自身の秘密を握るジェロームを殺害するため、マジックのトリックを応用した完全犯罪を企てる。その華麗な手品と自信に満ちた振る舞いは、シリーズ屈指の悪役としての魅力を放っている。 - ジェシー・ジェローム(ネヘミア・パーソフ)
ナイトクラブ「キャバレー・オブ・マジック」のオーナー。サンティーニの過去の秘密を握り、彼を恐喝する冷酷な人物。従業員からも嫌われている「銭の亡者」。 - フレデリック・ウィルソン刑事(ボブ・ディシー)
コロンボ警部の捜査に協力する刑事。過去に「悪の温室」にも登場。真面目でマニュアル通りの捜査を進めるタイプだが、コロンボを尊敬しており、持ち前の知識と粘り強さで事件解決に貢献する。 - デラ・サンティーニ(シンシア・サイクス)
サンティーニの娘であり、マジックショーのアシスタントを務める。前座の歌手ダニー・グリーンと恋人関係にあるが、父親のサンティーニは快く思っていない。 - ハリー・ブランドフォード(ロバート・ロジア)
クラブの共同経営者。当初はサンティーニを慕っていたが、事件の真相を知るにつれて態度を硬化させる。 - マイケル・ラリー(マイク・ラリー)
元綱渡りの名人。サンティーニとは旧知の仲で、彼の変名や訛りに関する情報を提供する。 - 手品ショップの店主(セイヤー・デヴィッド)
コロンボにマジックの仕掛けに関するヒントを与える。 - 警察署の研究員(ロバート・ギボンズ)
鍵や凶器の分析について語る。 - ミス・マッカーシー(キャサラン・スキレン)
レストランでサンティーニが巡業の新しい助手として誘う女性。 - 愛犬ドッグ(本人)
コロンボの愛犬。コロンボの新しいコートを見張る役割を果たす。
トリック解説
犯人のサンティーニはオーナー殺害をプロの犯行にみせます。犯行時には、アリバイも用意します。
プロの犯行
盗まれた拳銃を使うなどして、プロの犯行にみせます。
- 凶器には盗まれた拳銃を使います。盗品なので、持ち主は分かりません。
- クラブで使われているナプキンを拳銃にまき、硝煙反応を消します。
- 拳銃は、持っていると犯行の証拠になってしまうので、殺害現場に置いていきます。
アリバイ工作
サンティーニは「水槽の幻想」というマジックの最中に、舞台を抜け出し、オーナーを銃殺します。殺害後、死体がすぐに見つかるようにし、オーナーが死んだときマジックを披露していた、というアリバイを作ります。
水槽の幻想
オーナー殺害時に披露した「水槽の幻想」は、サンティーニが箱に入り、その箱を水の中に沈めるマジックです。サンティーニは箱に入った後、秘密の抜け穴を使って、舞台下の地下室に脱出します。マジックのタネがわからなければ、サンティーニは箱の中にいたようにみえます。マジックの最中、地下室で待機するサンティーニに、普段なら給仕がブランデーを持っていきます。そのため、今回の犯行時には、無線装置を地下室に仕掛け、給仕と会話しています。声だけではなく、地下室で動いているようにみせるため、回転するライトを使っています。
手口の詳細
犯行に使う拳銃は、あらかじめ地下室に隠しておきます。地下室からオーナーの部屋へ向かう際、給仕に変装します。凶器は、おぼんにのせ、上からナプキンをかけて隠します。
殺害後、オーナーの声色を真似て、コーヒーを注文します。コーヒーの注文は夜9:56です。コーヒーを運んできた給仕が夜10:06に死体を発見します。この時間帯は「水槽の幻想」の真っ最中となります。
犯人のミス
コロンボが犯行の方法や動機に辿り着く手がかりです。
ちぐはぐな証拠
事故とは思えない証言や証拠などです。
被害者の位置
被害者は扉から離れた位置で、前から撃たれて死んでいました。被害者が開けたのであれば、扉のすぐ近くに倒れているはずです。もしも、逃げたのであれば、後ろから撃たれているはずです。
被害者の行動
被害者は死ぬ直前、売り上げの計算をしているはずでした。しかし、金庫は開いていませんでした。被害者は告発状を書く予定を誰にも話していませんでした。売り上げの計算をするときは部屋に鍵をかける習慣だったことと、部屋に鍵がかかっていたことから、コロンボは被害者が売り上げの計算をしていたと推理します。しかし、金庫や書類など、ちぐはぐな証拠が見つかります。
老眼鏡
被害者の机には老眼鏡がありました。しかし、書籍や書類は見当たりませんでした。
犯行の証拠
サンティーニが犯人であることを匂わせる証拠です。
鍵の傷
殺されたオーナーは、部屋に扉に特殊な鍵をつけていました。サンティーニはピッキングで部屋の鍵を開けますが、鍵に傷が残ります。サンティーニは、一度、オーナーの部屋の扉を開けようとしています。そのため、部屋に鍵がかかっていたのは、想定外だったはずです。しかし、プロの犯行にみせるため、あえて鍵にピッキングの傷を残したとも考えられます。
湿った背中とインクリボン
被疑者の背中からお尻は湿っていました。このことからコロンボは、被害者が死ぬ直前に座っていたことに気付きます。被害者が使っていたタイプのインクリボンに告発状の文面が残っていました。
コロンボの罠
オーナーの部屋の鍵を開けることができる人物が犯人であるとにらんだコロンボは、サンティーニに罠を仕掛けます。
コロンボはマジックショーに飛び入り参加し、サンティーニに手錠をかけます。罠にはまったサンティーニは手錠を外し、みずから難しい鍵を外せる人物であることを証明します。
感想
「魔術師の幻想」は、ジャック・キャシディの3度目の登場、ウィルソン刑事とのコンビ、そしてコロンボの「新しいコート」といった数々の魅力的な要素が詰まっており、視聴者から高い評価を受けているようです。コミカルな要素としては、新しいコートが気に入らないコロンボが面白いです。愛犬も登場し、コートを盗むやつがいたら見過ごすように命じられています。
古畑任三郎に「魔術師の選択」というエピソードがあり、こちらもマジシャンが犯人です。しかし、内容は大きく異なります。
口コミ分析
海外サイトの口コミには、magician、great、best、perfectなどが書き込まれています。

国内口コミサイトには傑作、印象残る、手錠外すシーンなどが書き込まれています。

余談
原題の「Now You See Him」の「そら見えたぞ」という訳は、「Now You See Him, Now You Don’t」という映画を参考にしています。邦題の「魔術師の幻想」とは異なります。
- 『シャレード』のBGM
劇中で歌手ダニー・グリーンが歌い、ラストシーンでも流れる『Charade』は、ヘンリー・マンシーニ作曲の映画「シャレード」のテーマ曲です。マンシーニが『刑事コロンボ』のメインテーマも手がけていることから、同じ作曲家の楽曲が使用されたのは「粋な計らい」と言えるでしょう。 - 長寿の俳優ネヘミア・パーソフ
悪人オーナーのジェシー・ジェロームを演じた ネヘミア・パーソフは、驚くべきことに102歳で亡くなりました。 - 『古畑任三郎』との類似性
三谷幸喜脚本の『古畑任三郎』第2シーズン「マジシャンズ・セレクト」(山城新伍、松たか子出演回)が、「魔術師の幻想」と設定やトリックが類似しているとの指摘があります。これは、本作の高い完成度が、後の作品に影響を与えた可能性を示唆しています。
犯人役の俳優
犯人を演じた俳優ジャック・キャシディ氏は「構想の死角」「第三の終章」でも犯人を演じています。アメリカで1976年4月29日に、このエピソードが放送され、同年12月12日に、49歳という若さで、亡くなりました。そのため、この作品以降、ジャック・キャシディ氏が登場することはありません。
刑事の名前
「悪の温室」に登場したボブ・ディシー演じるフレデリック・ウィルソン刑事が再登場します。この刑事、「悪の温室」ではジョン・J・ウィルソンですが、今回はフレデリック・ウィルソンに名前が変わっているようです。同一人物のはずですが、なぜか、ファーストネームは違います。アメリカでは、犯罪の罪から逃れるなどの意図がない限り、概ね、好きなように名前を変えることができるようです。実際、「かみさんよ、やすらかに」にも名前を変えた犯人が登場します。
コロンボとの息の合ったやり取りは、ピーター・フォークが旧知の仲であったディシーと脚本に手を加えた結果であるとされています。
吹替では、名前が統一されているようです。
ホームズとワトソン
サンティーニは、捜査するコロンボと刑事をホームズ、ワトソンと呼びます。確かに、小さなひとつの手掛かりから事件を推理する姿は、まるでシャーロック・ホームズのようです。ちなみに、ホームズの脅威的な推理はドラマでは「青い紅玉」などに登場します。
この記事のまとめ
刑事コロンボ「魔術師の幻想」について、ネタバレありであらすじやトリックをご紹介しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 殺人の計画性 | あり |
| 偽装工作 | プロの犯行を偽装 |
| ミス | タイプのインク |
| 動機 | 口封じ |
| 凶器 | 拳銃 |
| トリック | 無線 |
| コロンボの罠 | 手錠 |

