名探偵ポワロ・第43話『ヒッコリー・ロードの殺人』のあらすじ、トリック解説です。
学生寮で物が紛失する事件が頻発し、ミス・レモンがポワロに捜査を依頼します。紛失事件の犯人は一旦、突き止められますが、その犯人が何者かに殺害されます。
あらすじ
ミス・レモンの姉フローレンス・ハバードはヒッコリーロードにある学生寮で管理人をしていました。その学生寮で、様々な物が紛失するという事件が発生。不気味に感じたフローレンスはミス・レモンを通じて、エルキュール・ポワロに相談します。
紛失したものというのは、聴診器、片方の靴、電球、ホウ酸、指輪、リュックサックなど様々で、比較的高価な指輪だけは、盗まれた後、スープの中から見つかっていました。
寮に赴いたポワロは推理力でなくなった片方の靴を見つけ出してみせ、学生たちを驚かせます。最終的に、政治学を学ぶ女学生シーリアがクレプトマニアを告白し、盗難を自白します。
事件は解決したように思えましたが、シーリアが何者かに殺害されるという新たな事件が発生します。ポワロは犯人を探すため、それぞれの学生から話を聴き、実は、聴診器、ホウ酸、リュックサック、そして、電球の四つを盗んだのは、シーリアではないことを知ります。
亡くなる前、リュックを盗んだ人物が誰か知っていたシーリアは、その人物と接触していたようでした。シーリア殺害事件の捜査が進む中、学生寮のオーナーと政治学を専攻していたパトリシアも殺害されます。オーナーのクリスティーナ・ニコレティスは、学生たちの前で犯人を知っていると話し、脅すような態度をみせていました。そして、パトリシアは政治家のサー・アーサー・スタンリーと病院で接触した後、何者かに殺害されてしまいました。

©ITV, Agatha Christie Ltd
登場人物とキャスト
ポワロ、ジャップ警部、ミス・レモン以外の登場人物です。
- フローレンス・ハバード
ミス・レモンの姉。学生寮の管理人 - シーリア・オースティン
最初の被害者。クレプトマニア(窃盗症)だと告白した女子学生。病院の薬局でバイトをしている。化学専攻 - パトリシア・レイン
三番目の被害者。スタンリー卿と接触。政治学専攻 - バレリー・ホブハウス
ファッションの勉強をする女子学生 - ナイジェル・チャップマン
眼鏡でパーマの男子学生。中世史と考古学専攻 - コリン・マックナブ
ポワロに挑戦的な内容を話す男子学生。心理学専攻 - レナード・ベイトソン
旅行に行っていた男子学生。赤毛。聴診器をなくした医学部生 - サリー・フィンチ
旅行に行っていた女子学生。イギリス文学専攻 - クリスティーナ・ニコレティス
二番目の被害者。学生寮のオーナー。ダイヤを持ち込むなどしてる。寮の前の鞄屋も経営する - サー・アーサー・スタンリー
政治家。過去に妻を亡くしている。捜査を担当したのはジャップ警部 - ジョン・キャスタマン
鞄屋の店員。サリーと顔見知りのようである
主要ゲストの役名と役者名をまとめます。スタンリー卿を演じていたのは「シャーロック・ホームズの冒険」で初代ワトソンを演じていた俳優さんです。
| 役名 | 役者名 |
|---|---|
| Sally Finch サリー |
Paris Jefferson |
| Nigel Chapman ナイジェル |
Jonathan Firth |
| Leonard Bateson レナード |
Damian Lewis |
| Florence Hubbard フローレンス |
Sarah Badel |
| Valerie Hobhouse バレリー |
Elinor Morriston |
事件のまとめ・謎
シーリア、ニコレティス、パトリシアが何者かに殺害されました。シーリアは常飲していた睡眠薬をモルヒネとすり替えられ死亡していました。オーナーのニコレティスは刺殺、パトリシアは文鎮を入れた靴下で殴られ殺されています。
盗難
盗難の多くはシーリアの犯行でした。彼女はクレプトマニアという病を患っていると告白しています。シーリアが盗んでいないのは、聴診器、ホウ酸、リュックサック、電球で、これらが紛失した理由や犯人はわかっていません。
秘密
素性や、事件との関連性が不明な人物が登場しています。
- サリーとキャスタマン
二人は知り合いのようです。サリーは英文学専攻でジョン・キーツという詩人について研究しているようです。しかし、ポワロが口にしたキーツの有名な詩の一節には気付きませんでした - スタンリー卿
政治家のスタンリー卿は病に倒れ入院しています。スタンリー卿を尊敬するパトリシアが彼と面会し、写真を一枚持ち帰っています。しかし、これ以外の接点は、何もないように見えます
スタンリー卿の妻は何年も前に亡くなっています。死因は睡眠薬の過剰摂取でした。睡眠薬を渡していたのは夫のスタンリー卿で、その証言にはあやふやな部分がありました。捜査を担当したジャップ警部はスタンリー卿を調べようとしますが、圧力がかかり、捜査から外されます。そして、事件は事故死として処理されます。
ジャップ警部は、スタンリー卿の弁護士であるエンディコットが卿から何かを受けっとた様子を目撃しており、スタンリー卿が妻を殺したと考えています。
手掛かり・伏線
殺人の謎を解くヒントです。
シーリアはリュックサックを盗んで破いた人物を知っていたようです。そして、オーナーも犯人を知っているようでした。これに対して、パトリシアは、特に何も知らなかったのに殺されたようにみえます。殺される前、パトリシアはスタンリー卿と面会し、こっそり、写真を持ち帰っていました。
証拠
寮の前で売られているリュックサックは寮で破られたリュックサックと同じでした。このリュックサックを一つ購入したポワロは、リュックをナイフで切り刻み、秘密のポケットがあることに気付きます。その特徴的な縫い付け方は、バレリー・ホブハウスが自作した洋服と同じでした。
心理学を専攻するコリン・マックナブの部屋から、モルヒネの瓶が発見されます。これが証拠となり、コリンは逮捕されます。最初の被害者シーリアがバイトをしていた病院の薬局からモルヒネが盗まれており、これを盗んだのは間違いなくコリンでした。
証言
聴診器を盗んだのはコリンです。彼は、他の学生たちとモルヒネを盗めるかどうかの賭けをしていました。賭けに勝つためコリンは、まず聴診器を盗みました。その後、医者に変装して薬局に入り、堂々とモルヒネを盗み出しました。
この盗み出したモルヒネは一週間ほどコリンが所持していましたが、その後、トイレに流して処分されました。コリンは他の学生の立ち合いのもと、モルヒネを処分しましたが、実は、このとき、モルヒネはホウ酸にすり替えられていたようです。
アリバイ
最初と二番目の事件に関しては、誰もアリバイがないようです。しかし、三番目のパトリシア殺害に関しては、ナイジェル・チャップマンに完璧なアリバイがあります。
ナイジェルは、パトリシアが殺されたと思しき時刻、ポワロのマンションにいました。
真相(ネタバレ注意)
犯人はナイジェル・チャップマンです。そして、バレリー・ホブハウスが共犯者です。
最初に殺されたシーリアが盗みを働いたのは事実ですが、シーリアがクレプトマニアだというのは嘘です。シーリアは心理学を専攻するコリンのことが好きでした。しかし、全く関心を持ってもらえなかったため、精神的な病気の振りをしていました。
このアイディアはシーリア自身のものではなく、バレリーの入れ知恵です。
- リュック
リュックサックにはダイヤが入っていました。寮のオーナーは密輸犯の一人で、リュックを購入した学生を運び屋にして密輸していました。学生たちは何も知らずに、運び屋になっていました - 電球
電球がなくなっていたのは、寮に警官がやってきたためです。この警官は密輸事件を調べており、犯人は警官の目をごまかすため、電球を外して暗がりを作りだしていました - ホウ酸
ホウ酸がなくなったのは、真犯人のナイジェルがモルヒネとすり替えるためです。紛失したホウ酸はモルヒネと勘違いされ、トイレに流されました
聴診器は医者に変装するためコリンが盗んでいました。
最初の被害者は、犯人のナイジェルがリュックを切り裂いてダイヤをとる所を目撃していました。これを犯人に告げたため、殺されました。寮のオーナーだったニコレティスは密輸の一員でしたが、殺人まで犯すつもりはありませんでした。そのため、犯人を告発しようとして、逆に殺されてしまいます。
最後の犠牲者となったパトリシアはスタンリー卿の家族写真を持っていました。そこには、ナイジェルが写っていました。
犯人の正体
ナイジェルは名前を変えていました。本当はスタンリー卿の息子で、スタンリー卿の妻を殺害したのはナイジェルでした。理由は、ナイジェルが母の金を何度も盗んだためです。母が警察に通報すると言い出したため、殺すしかありませんでした。
もしもナイジェルが何かしらの罪を犯した場合は母親殺しも公表されるようになっていました。このことは誓約書に記され、スタンリー卿が弁護士に渡していました。ジャップ警部が目撃したのは、この誓約書を入れた封筒の受け渡しでした。
最後の殺人に関しては、ナイジェルに完璧なアリバイがあります。これは共犯者のバレリーが実行犯となっていました。ポワロとジャップ警部は被害者と電話で話していますが、相手はバレリーです。バレリーは声真似をしていました。
なお、サリーはキャスタマンと共に密輸を追っていました。サリーは寮に、キャスタマンは鞄屋に潜入していました。
結末
謎解きの最中、ねずみが飛び出してきて、ミス・レモンが悲鳴を上げます。この隙にナイジェルは窓を突き破って逃走します。列車に身を投げたようにも見えたナイジェルでしたが、生きたまま警察に捕まります。
感想
原題の「Hickory Dickory Dock」は童謡のタイトルで、歌詞の一節でもあるようです。Hickory Dickory Dockの意味を調べようと思いましたが、Hickory Dickory Dockはヒッコリー・ディッコリー・ドックのようです。「どんぐりころころどんぐりこー」みたいなことかもしれません。歌の内容は、ネズミと時計が登場し、ちょうど、ドラマのラストシーンのようでした。
なお、このエピソードの脚本はアンソニー・ホロヴィッツさんです。
この記事のまとめ
名探偵ポワロ「ヒッコリー・ロードの殺人:原題Hickory Dickory Dock(ヒッコリー・ディッコリー・ドック)」のあらすじ、真相をご紹介しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 依頼 | 紛失 |
| 事件分類 | 殺人 |
| 謎 | 紛失の理由 |
関連記事
『アガサ・クリスティーの謎解きゲーム』では、第八話『ヴァニロス荘の殺人』が『ヒッコリー・ロードの殺人』を原作にしてます。

