『サザンカの咲く頃』は2007年3月14日に放送された相棒season5の第20話で、シーズン5の最終話です。国家の根幹を揺るがす陰謀と、特命係の右京と薫、そして小野田官房長の思惑が複雑に絡み合います。この記事では、あらすじ、登場人物とキャスト、ネタバレ、感想、余談などをまとめています。
あらすじ
プログラマーの瀬沼優がビルから転落死する。現場の状況から他殺が疑われるが、その証拠となる資料一式が鑑識課から忽然と姿を消してしまう。右京と薫は、優の勤めていた会社で彼の双子の弟である翔と出会う。どうやら翔は、防衛省関係者と打ち合わせをしているようだった。その頃、公安幹部の嶋村が心臓発作で急死。小野田官房長はかつて部下だった嶋村の死を不審に思い、右京に調査を依頼する。
捜査を進める右京たちは、嶋村の部屋から盗聴器や隠しカメラ、そして発信機を発見し、何者かが自分たちの動きを監視していることを知る。そんな中、国会中継で防衛省幹部の佐々木が答弁中に倒れ、そのまま死亡してしまう。病死として処理されるが、右京の調査で嶋村が優と接触していたことが判明し、さらに嶋村と佐々木の死が、10年前に起きた毒殺事件と酷似していることも明らかになる。右京と薫は当時の事件を知る小野田から話を聴き、小野田の自宅に立ち寄ることに。そこに、嶋村から盗まれた証拠品とUSBメモリーが送られてくる。それを持ち帰る右京たちだったが、何者かに襲撃されてしまう。難を逃れた右京たちは、そんないわくつきともいえるUSBメモリーの解析を進める。すると、防衛省の女性官僚である水原塔子が瀬沼兄弟に「衛星プログラム」の開発を非公式に依頼していたことが判明。しかし、捜査一課が事件から外され、翔の身柄が公安に移されるなど、事件は国家機密として闇に葬られようとする。右京と薫は、タマキと美和子の隠し撮り写真で脅迫されながらも、真実を追及し続ける。

登場人物とキャスト
- 杉下右京(水谷豊)
冷静沈着でずば抜けた洞察力を持つ警視庁特命係の警部。論理的な思考で事件の真相を追い詰めます。 - 亀山薫(寺脇康文)
熱血漢で情に厚い、右京の相棒である特命係の巡査部長。右京とは対照的ながら、固い信頼関係で結ばれています。 - 亀山美和子(鈴木砂羽)
亀山薫の妻で、帝都新聞の記者。事件に巻き込まれることもありますが、 夫を支える強い女性です。 - 宮部たまき(高樹沙耶 / 益戸育江)
右京と薫が通う小料理屋「花の里」の女将。二人の良き理解者です。 - 伊丹憲一(川原和久)
警視庁捜査一課の刑事。特命係を煙たがりながらも、時に協力する。 - 三浦信輔(大谷亮介)
警視庁捜査一課の刑事。伊丹や芹沢と共に特命係の捜査に顔を出します。 - 芹沢慶二(山中崇史)
警視庁捜査一課の刑事。伊丹の部下として行動を共にします。 - 角田六郎(山西惇)
警視庁組織犯罪対策部第五課長。特命係の部屋によく現れ、コーヒーを飲んでいきます。 - 米沢守(六角精児)
警視庁鑑識課の鑑識官。右京の信頼も厚く、豊富な知識で捜査をサポートします。 - 大河内春樹(神保悟志)
警視庁警務部監察官。ストイックな性格で、組織の規律を重んじます。 - 小野田公顕(岸部一徳)
警察庁長官官房室長。右京の元上司であり、特命係を巧みに利用する公安出身の切れ者です。 - 水原塔子(横山めぐみ)
防衛省情報本部主任調査官。キャリア官僚の一人。 - 南蒼一郎(畠中洋)
法務省公安調査庁統括情報官。水原塔子らと同じキャリア官僚の一人。 - 江良司(大城英司)
外務省国際情報局主任分析官。水原塔子らと同じキャリア官僚の一人。 - 嶋村雅弘(宮内敦士)
警察庁警備局公安一課課長。小野田の元部下。 - 瀬沼翔/瀬沼優(山崎勝之)
転落死したプログラマー瀬沼優、および、その双子の弟の翔。兄弟ともに優秀なプログラマーです。 - 佐々木勝久(五王四郎)
防衛省情報本部総務部長。使途不明金問題で国会答弁中に倒れます。 - 磯部(梨本謙次郎)
ホテルアマゾンの支配人。過去の事件でも登場しています。 - 岩佐紀之(夏八木勲)
警察庁長官。組織の顔であり、キャリア官僚たちの行動を巡るキーパーソン。
ネタバレ
事件の真相は、防衛省、法務省、外務省、そして警察庁公安の若手キャリア官僚たちが、10年前に取り逃がした国際スパイ事件の苦い経験から「日本版CIA」の創設を悲願としていたことに端を発します。彼らはその切り札として、軍事衛星の位置情報を狂わせる画期的なプログラムの開発を、瀬沼優と翔の双子プログラマーに非公式で依頼していました。
- 瀬沼優の死
兄の優は、開発中のプログラムが軍事転用されることに反対し、計画から手を引こうとします。それを止めようとした弟の翔と揉み合いになり、誤ってビルから転落死してしまいます。 - 嶋村と佐々木の毒殺
嶋村は、この計画のために使われた防衛省の使途不明金問題が表面化し、佐々木が国会で全てを明かそうとしていることを知ります。水原塔子たちは佐々木の口封じのため毒殺を決行。嶋村は佐々木殺害に反対し、計画から降りようとしたため、彼もまた水原たちによって毒殺され、病死に見せかけられました。嶋村は死の直前、小野田に連絡し、サザンカの花を握りしめていました。 - 証拠品の消失と監視
嶋村は生前、公安に狙われていることを察し、優の事件の証拠品を鑑識課から盗み出し、右京たちに手がかりを残すため小野田の自宅へ送付。右京たちの行動は、計画の露見を恐れる水原たちのグループによって監視されていました。
10年前の国際スパイ事件というのは、パラボラアンテナを作った職人と、それを取り扱った営業マン、そしてそれを輸出した代理店の社員が毒殺された事件です。某国に渡ったアンテナは軍事目的に使われており、これを水原の仲間のひとりが捜査し始めました。すると、発覚を恐れたその某国のスパイが関わった三人を毒殺してしまいます。水原達はこの事件がきっかけで、日本版CIAの必要性を痛感することになります。
結末
水原たちは、国家機密を盾に事件を闇に葬ろうとします。これに対し右京は、薫にわざと情報漏洩をさせ、懲戒免職に追い込みます。そして、地方公務員である薫の「人事不服申し立て」の権利を使い、公開の口頭審理の場で事件の全容を公表する可能性をちらつかせ、上層部を揺さぶります。これにより、警察庁長官の岩佐を含む上層部は窮地に立たされます。この右京の大胆な一手を利用し、小野田官房長は警察庁長官である岩佐を退任に追い込みます。
公開審理による情報漏洩を恐れた上層部は、水原たち3人のキャリア官僚を退官させた上で事件を処理。岩佐長官も退任に追い込まれ、小野田の目論見通りに事態は収束します。右京と薫は、表面上は組織の命令に従うも、その信念を貫き通しました。
感想と考察
第5シーズンの最終話では、国家の安全保障という壮大なテーマと、それに絡む官僚たちの歪んだ正義が描かれました。本作最大の魅力の一つは、小野田官房長の恐るべき策謀家ぶりです。右京と薫を巧みに操り、彼らの行動を自身の目的達成のために利用するその手腕は、まさに「大狸」と呼ぶにふさわしいものでした。ラストシーンで退任する長官に右京たちを紹介する姿は、彼のしたたかさを象徴しています。また、どんな大義名分があろうと、法を犯した者は裁かれるべきという右京の揺るぎない信念も強く描かれていました。薫を懲戒免職に追い込むという奇策は、法という武器を最大限に活用し、自らの手を汚さずに巨悪を暴く右京ならではの鮮やかな手口でした。「特命係が本格的に動き出したのは亀山が配属されてから」という台詞は亀山の存在が特命係、ひいては右京にとってどれほど重要であるかを物語っています。亀山の人間味あふれる性格と、右京の策に乗りつつも本質的な正義を忘れない姿勢が良いです。
架空の物語ではありますが、「日本版CIA」の必要性とその設立に伴う倫理的ジレンマは、現代社会にも通じるリアルな問題提起を含んでいます。テロから国を守るという目的が、人を殺める行為を正当化できるのかという右京の問いは深く突き刺さります。
余談
- 嶋村が死の直前に握りしめていた「赤いサザンカ」には「理性と謙虚」という意味がありました。嶋村が水原たちの計画に良心から拒否した動機と、USBメモリーのパスワードに繋がっています。
- 本作で警察庁長官の岩佐紀之(夏八木勲)がシリーズに初登場しました。警察組織の最高位にある人物として、小野田官房長をも動かす存在感があります。
- 普段は謎に包まれている小野田の、ゴージャスな自宅マンションが初公開される貴重なシーンがあります。
- 作中で言及される「裏帳場」とは、警察内で非公式に設置される捜査本部のことで、公式な捜査からは切り離された場所を指します。
- ロケ地として、防衛省に「茨城県庁」、右京と小野田が朝食をとった場所に「日比谷茶廊」などが使われています。
- 過去エピソードのキャラクター(シーズン5第11話「バベルの塔」で登場したホテル支配人、捜査一課トリオのボディガード、大木・小松など)が随所に登場し、ファンにとっては嬉しいサプライズとなりました。

