『アザミ』は2015年2月4日に放送された、相棒season13の第14話です。今回は歴史あるヴァイオリン工房を舞台に、現在と過去の二つの殺人事件が複雑に絡み合うミステリードラマとなっています。社長夫人の変死事件を発端に、杉下右京が15年前のある悲劇との関連性を探り、登場人物たちの隠された真実を明らかにしていきます。この記事では、あらすじ、登場人物とキャスト、ネタバレなどをまとめた上で、感想や考察などのレビューをご紹介しています。
あらすじ
老舗「新宮工房」の社長夫人、新宮孝子が都心から遠く離れた自身の奥多摩の別荘で絞殺体で発見される。第一発見者は夫で社長の新宮蔵人と姪の響だった。孝子は殺害直前に蔵人に電話をかけていたが、夫婦仲は冷え切っており、蔵人には愛人もいたことから、死の危機に瀕した孝子が、なぜ警察ではなく夫に助けを求めたのか、杉下右京は疑問を抱くことになる。工房では、営利を優先する蔵人と大手楽器店との提携話が進められており、伝統を重んじるマイスターの板倉たちはこれに反発しているようだった。

登場人物とキャスト
- 杉下右京(水谷豊)
警視庁特命係の警部。15年前にクラウス・ローゼの来日公演後に、新宮家の別荘で開かれたパーティーにて、双子の少女、奏と響に出会っている。 - 甲斐享(成宮寛貴)
右京の3代目相棒。警視庁特命係の巡査部長。 - 新宮響(笹本玲奈、少女時代:松本来夢)
蔵人の兄・行人夫妻の双子の娘。15年前に両親を亡くして以来、新宮夫妻と同居していた。現在は工房で事務手伝いをしている。 - 新宮奏(笹本玲奈、少女時代:松本来夢)
響の姉。15年前に死亡している。工房の後継者としてヴァイオリンの才能を高く評価されていた。 - 新宮蔵人(鈴木綜馬)
老舗の新宮ヴァイオリン工房の社長。かつては先々代に勘当され、台湾の大手スーパーに勤務していた過去を持つ。妻の孝子と共に大手楽器店との提携話を推進する。 - 新宮孝子(栗田よう子)
蔵人の妻。新宮工房の実質的な経営者。今回の事件の被害者。 - 板倉達夫(鈴木一功)
新宮工房のヴァイオリンマイスター。工房の伝統とヴァイオリンの音色を大切にしており、蔵人の営利主義的な方針に異を唱える。 - 横手護(森岡豊)
新宮工房の見習いだった人物。現在はヴァイオリンマイスター。 - 田代野絵(斎藤レイ)
新宮家の元家政婦。 - クラウス・ローゼ(マンフレッド・ヴォーダルツ)
世界的に著名なヴァイオリニスト。15年前、新宮家で追悼演奏を披露した。 - 曲刑事(高品剛)
所轄の奥多摩署の刑事。15年前の奏の事故死も担当していた。
ネタバレ
事件の真相は、15年前の「事故」と今回の殺人事件が深く結びついた、壮絶な復讐劇でした。15年前、双子の姉・奏は、その才能を妬まれ、工房を乗っ取ろうと目論んでいた叔父の新宮蔵人と叔母の孝子によって殺害されました。彼らは、冷凍して仮死状態にしたスズメバチをティーカップに隠し奏の部屋に持ち込みました。このスズメバチに襲われ、奏は命を落としてしまいます。この犯行は横手護に目撃され、横手はこの秘密と引き換えにドイツ留学の機会を得て共犯関係となります。
この事件にはさらなる真実が隠されています。実は、姉の奏と妹の響は、互いの身を案じて入れ替わっていました。つまり、スズメバチに刺されて亡くなったのは臆病な性格の妹・響であり、病院へ行ったのは勝気な性格の姉・奏でした。奏は、最愛の妹を殺害された後、叔父夫婦への復讐を誓い、妹の響として生きることを選択。憎むべき叔父夫婦の下で15年間を過ごしてきました。しかし、蔵人と孝子が工房の伝統を金儲けのために利用しようと大手楽器店との提携話を進めていることを知った奏は、ついに復讐を決意。まず、15年前の共犯者である横手護を、偽造した当時の写真と傷害で脅し、協力させます。次に、孝子を拘束し、15年前の真実を警察に告発すると脅迫。孝子が蔵人に助けを求めようと電話をかけた際、奏は別荘の固定電話のルーターコードを抜いており、電話は繋がらない状態でした。しかし、孝子の指紋と蔵人への着信履歴だけが残り、犯行時刻を偽装する材料となります。奏は孝子を絞殺した後、アリバイを作るために工房へ向かい、横手に子機から蔵人の携帯へ電話をかけさせ、孝子が死の直前に蔵人に電話したかのように装いました。さらに、蔵人の車に凶器となるロープなどを隠し、彼に罪を着せようとしたのです。
結末
右京は15年前の担当刑事の証言などから、双子の入れ替わりと奏の復讐に気づきます。最終的に、横手も取調べで全てを白状し、事件は解決されます。蔵人は15年前の罪を妻に押し付けようとしますが、伊丹たちによって逮捕され、孝子殺害の犯人である奏も逮捕されます。奏は逮捕される際、右京に「蔵人とは一緒に連行しないでほしい」と懇願し、右京はその願いを受け入れます。事件後、右京は響の部屋にカスミソウの花束を供え、もっと早く真相に気づけば救えた命があったかもしれないという深い悔恨の念に駆られます。奏は、右京に自身の真実を看破されたことで、ようやく「奏」として自分を取り戻せたことに感謝の涙を流しました。
感想と考察
サブタイトル「アザミ」の花言葉は「報復・復讐」です。この花言葉は、妹を惨殺された姉の深い悲しみと怒り、そして15年間の歳月をかけた復讐心を象徴していかのようです。双子の入れ替わりという、ミステリー作品ではお馴染みのトリックが、15年という長い時を経て、奏の計り知れない苦悩と復讐の決意を伴って登場していました。憎むべき叔父夫婦の下で「響」として生きることを選んだ奏の15年間は、想像を絶します。右京が真相に辿り着きましたが、復讐を完遂すると同時に、偽りの自分から解放され、本当の「奏」として生きることを選び取る瞬間だったかもしれません。エピソードのラストで、右京が響の部屋に供えたカスミソウは、花言葉が「ありがとう」「清い心」「切なる願い」です。亡き響の純粋な心、復讐心から解放された奏の回復など、様々な思いを馳せることができそうです。
余談
- このエピソードの初回放送日は2015年2月4日です。このときの視聴率は16.6%の視聴率を記録しました。
- この放送と同時期に、甲斐享(成宮寛貴)が「相棒season13」を最後に卒業することが発表され、ファンに大きな衝撃を与えました。
- 作中、右京がヴァイオリン工房の事情やクラシック音楽にも深い知識を持っていることが示されました。
- 撮影協力地として、軽井沢タリアセン、文京楽器、蕨市役所、代官山・鳳鳴館、京橋テラス、川崎マリエン、水戸観光協会、いばらきFCなどがクレジットされています。
作中の名言
- 「あなたがこんな形でしか奏さんに戻れなかったことがとても残念です」(杉下右京)
事件解決後、奏の悲劇的な運命と、復讐のために偽りの生を選ばざるを得なかった彼女の心情を察し、右京が深く悼むように語った言葉。 - 「私は杉下さんに会えて良かったと思ってます」(新宮奏)
右京の言葉に対し、奏が自身の正体を取り戻し、復讐を遂げた上での、右京への感謝と、ようやく本当の自分になれた安堵の気持ちを込めて語った言葉。

