新・刑事コロンボS8E1『汚れた超能力(Columbo Goes to the Guillotine)』は、1989年に放送された新シリーズの第1作です。約10年ぶりに復活したコロンボ警部が、超能力者を装う犯人と対決します。新シリーズの幕開けとして賛否両論ありますが、ピーター・フォークの復帰自体が喜ばしく、さらに、年齢を重ねたコロンボの新たな魅力、特に貫禄やユーモアが増しています。
あらすじ
自称超能力者のエリオット・ブレーク(アンソニー・アンドリュース)は、恋人でアネマン心霊研究所の所長ポーラ・ハルと共謀し、偽の超能力を使って国防省のテストをクリアしていた。そんな彼の能力を検証するため、「超能力者キラー」として知られるマジシャンのマックス・ダイソンが招聘されるが…、実はエリオットとマックスは、かつてウガンダの刑務所で脱獄計画を共にした旧知の間柄だった。エリオットは、かつて、刑務所で自分を売って釈放された男に復讐するため、マックスの殺害を計画。銃殺を計画していたエリオットだったが、マkkスウがギロチンを使ったマジックの装置を調整していたため、凶器を銃からギロチンに変更し殺害。事故死にみえるように偽装する。
コロンボは、被害者の握っていたドライバー、首を固定する板(カラー)の血痕などから他殺と断定し、捜査を進める。そして、エリオットに犯行を再現させることで決定的な証拠を得ます。

登場人物とキャスト
- コロンボ警部(ピーター・フォーク)
ロサンゼルス市警の警部。 - エリオット・ブレーク(アンソニー・アンドリュース)
超能力者を自称する詐欺師。恋人のポーラと共謀し、国防省を騙して地位を確立しようとする。かつてウガンダの刑務所でマックスに裏切られた過去を持ち、その復讐を果たす。日本語吹き替えは野沢那智。 - マックス・ダイソン(アンソニー・ザーブ)
「魔術王」の異名を持つマジシャンで、「超能力者キラー」としても知られる。エリオットの超能力テストを担当するが、彼とはウガンダの刑務所で知り合った間柄。エリオットの復讐の標的となり、自作のギロチンで殺害される。日本語吹き替えは阪脩。 - ポーラ・ハル(カレン・オースティン)
アネマン心霊研究所の所長であり、エリオットの恋人。彼の超能力テストのインチキに加担している。日本語吹き替えは藤田淑子。 - ハロー氏(アラン・ファッジ)
国防省のCIA高官。エリオットの「超能力」を軍事利用しようと画策する。旧シリーズにも異なる役で登場している。日 本語吹き替えは樋浦勉。 - バート・スプリンガー(ジェームズ・グリーン)
マックスの友人であるマジシャン。コロンボにマジックの知識を提供する。 - トミー少年(マイケル・バコール)
マジック好きの少年で、コロンボの捜査に思わぬヒントを与える。
事件の概要
犯人
犯人のエリオット・ブレイクは超能力者を称していますが、本当に超自然的な能力があるわけではありません。ウガンダ生まれで、エリオットも刑務所に入っています。そこで被害者の男と知り合いますが、公けにはなっていません。なお、研究所の履歴書には、エリオットが刑務所に入っていたことは記載されていません。
被害者
被害者は手品師です。手品開発のかたわら、超能力のトリック(嘘)を見破る仕事にも精力的です。カード賭博でトリックを使いすぎ、ウガンダの刑務所に入れられました。
動機
被害者は、ウガンダの刑務所に服役中、エリオットの脱獄を密告し、釈放されています。エリオットは、この復讐のため、殺害を企てました。
捜査および推理
コロンボは、被害者が死ぬ前にコンビーフを買っていること、死体の握っていたドライバーがちぐはぐなこと、カラーに被害者の血痕が付いていることなどを理由に自殺および事故死を否定し、他殺と断定します。殺害現場からなくなった銃の弾という証拠、さらに、密室トリックと霊視トリックを暴きます。
トリック解説
犯人はギロチンを使って被害者が殺し、事故で亡くなったように偽装します。なお、犯人の当初の計画では、拳銃で被害者を殺害するはずでした。
事故死偽装
被害者の首をギロチンで斬ったあと、被害者が自殺したようにみせます。
- 事故死なのに、カラーを付けていると不自然なので、殺害時に使用したカラーは外します。
- 作業中に亡くなったようにみせるため、手にドライバーを握らせます。
- 事故死であることを強調するため、部屋を密室にします。部屋には、二つ扉があり、ひとつは階段へ通じる扉、もう一つは、エレベーターの扉です。犯人は、階段側の鍵を内側からかけ、そして、紐を使ってエレベーターのスライド式の鍵をかけることで密室を作り出します。作業時、被害者はいつも部屋に鍵をかけていましたため、鍵がかかっていても不自然ではありません。
- マックス・ダイソンというキャラクターは、有名な奇術師であり、超常現象の懐疑論者であるジェームズ・ランディがモデルになっているとされています。ダイソンの作業部屋には、 実際に「RANDI」という文字が見えるポスターが飾られています。
- 旧シリーズから引き続きプジョーが使われていますが、本作ではナンバープレートやバックミラーの仕様が異なっており、別の車両が使用されています。これは、旧シリーズの車両が処分されていたため、新たに探して借りたものだと言われています。
- 本作の監督は、俳優ショーン・ペンの父親であるレオ・ペンです。彼は旧シリーズの傑作「別れのワイン」や最終作「策謀の結末」も監督しています。
- 作中には、当時の最新技術であったFAXや、初期のIBM-PCのようなパソコンが登場します。また、軍の打ち合わせシーンで使われる大型コンピューター用の連続用紙など、1980年代後半から90年代前半の時代を感じさせる小道具が随所に散りばめられています。
- トミー少年を演じたマイケル・バコールは、その後、俳優や脚本家として活躍しています。
自殺
コロンボに霊視を依頼された犯人は、そこで自殺を主張します。被害者は超能力者のインチキを看破し、多くの超能力者を失墜させていました。エリオットとも対決しますが、被害者は、この対決に負けます。これが、自殺の動機です。犯人は、被害者にドライバーを握らせています。そのため、自殺を偽装したとは考えにくいです。霊視で自殺を主張したのは、捜査をかく乱するためだったと考えられます。
なお、実際は、被害者がエリオットと手を組むために、わざと負けていました。
霊視トリック
記号をあてる霊視と、離れた位置にいる人物が撮った写真の絵を描く霊視が登場します。これは鉛筆の動きをみて、書いた記号を推測するというトリックです。
目隠しをつけた人物が地図にペンで印をつけ、その場所に移動してから景色を撮影するという流れです。超能力者は、撮影された景色を当てます。地図は特殊な地図で、全てのページに同じ地図が書かれています。さらに、ペンであらかじめ印がつけられています。つまり、最初から、どこに行くかが決まっています。また、インクが出ないペンを用意し、輪ゴムで地図を閉じページがめくられないようにします。
犯人のミス
コロンボが事故死を否定し、エリオットを疑う証拠です。
ちぐはぐな証拠
不自然な証拠や状況です。
マイナスドライバー
犯人が被害者に握らせたドライバーはマイナスドライバーでした。ギロチンに横たわって作業していたのであれば、プラスのドライバーを握っているはずです。
血の付いたカラー
カラーには被害者の血痕が付いていました。しかし、このカラーは、ギロチンから離れた場所に立て掛けられていました。
コンビーフ
被害者は死ぬ前にコンビーフとキャベツを買っており、そのレシートが残っていました。これが、自殺を否定する証拠になります。
涙
犯人は被害者との関係を隠しますが、葬式で涙を流します。数日前に知り合ったばかりで、しかも敵対するような存在の葬式で、涙を流すのは不自然です。
犯行の証拠
エリオットの犯行を示唆する証拠です。
弾
エリオットは、凶器として使うはずだった拳銃の弾を犯行現場に置き忘れます。コロンボに霊視を依頼されたとき、この弾をこっそり回収しますが、コロンボは、そこに弾があることを知っていました。
被害者の著書
被害者は様々なトリックを書いた本(ダイソンの読心術)を出版していました。その本に、密室トリックなどが書かれていました。
コロンボの罠
コロンボはエリオットを犯行現場に誘い出し、決定的な証拠はないが犯人はエリオットだと話します。挑発にのったエリオットは、ギロチンのカラーを危険側にして取り付け、コロンボの首を斬ろうとします。
ギロチンのカラーには安全側と危険側があり、これによって、刃が通るか否かを決めることができます。コロンボは、安全側と危険側をすり替えており、エリオットが危険側を選んだら、安全側になるようにしていました。この罠によりエリオットの殺意が証明されたことになります。
結末
コロンボは、決定的な証拠を掴むため、自ら犯行に使われたギロチンに首をかけ、犯人にカラーの装着を頼みます。犯人はコロンボを殺そうとします。しかし、カラーの安全側と危険側が入れ替えられており、ギロチンは機能しません。結果、犯人の殺意のみが立証されたことになります。
感想
コロンボが銃をもつエピソードでした。古畑任三郎「殺人公開放送」も超能力者が登場していました。原題は「Columbo Goes to the Guillotine」で、「断頭台に登るコロンボ」というようなタイトルになります。邦題の「汚れた超能力」は異なったタイトルといえます。
ギロチンのトリック
作中でギロチンのトリックは明かされません。
一般に知られているこの種のマジックのタネは、ギロチンの刃が回転する、という仕掛けです。
遊園地などの入口にあるゲートのように、安全側のときは刃(遊園地の場合はバー)が回転し、危険側のときは刃が固定される仕組みです。刃をL字のような形にしておけば、刃が回転したとしても、地面側に落下したギロチンの刃をみせることができます。
余談
この記事のまとめ
刑事コロンボ「汚れた超能力」について、ネタバレありであらすじやトリックをご紹介しました。最後にドラマの内容を、殺人の計画性、偽装工作、犯人のミス、動機、凶器、トリック、コロンボの罠で簡単にまとめます。犯人は紐を使って犯行現場を密室にしていました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 殺人の計画性 | あり |
| 偽装工作 | 事故死(自殺) |
| ミス | ドライバー |
| 動機 | 復讐 |
| 凶器 | ギロチン |
| トリック | 古典的密室トリック |
| コロンボの罠 | 犯行を再現させる |

