『黙示録』は2008年3月19日に放送された相棒season6の第19話で、最終話となります。このエピソードで亀山薫は交代となります。物語では、長年にわたり刑が執行されなかった死刑囚の獄中死をきっかけに、杉下右京と亀山薫は25年前の放火殺人事件の真相に迫ります。この記事では、あらすじ、登場人物とキャスト、ネタバレ、感想、余談などをまとめています。
あらすじ
19年間もの間、刑が執行されることなく獄中で病死した死刑囚の錦貴文。錦の解剖に立ち会った右京は、死刑執行がこれほど長引いた理由に疑問を抱く。貴文は25年前、元上司の妻娘を殺害し放火した罪で死刑が確定していたが、弁護士の茂手木は無実を信じ再審を請求していた。貴文の死後、彼を逮捕した黒木警部補と起訴した緑川検事が相次いで殺害される事件が発生。右京は、これらの事件が貴文の冤罪の可能性と深く結びついていると推察し、捜査を進める。
捜査の過程で、かつて法務大臣として貴文の死刑執行命令書にサインできなかった橘ゆり江、そして第一審の裁判官であった三雲法男らが抱えてきた苦悩が明らかになる。やがて、25年前の事件の真犯人が浮上し、さらに黒木と緑川の殺害事件の真相も判明。右京は強引な手法で犯人を追い詰めることになるが、その「正義」の行使が新たな波紋を呼び、関係者たちの人生を大きく揺るがすことになる。

登場人物とキャスト
- 三雲法男(石橋凌)
東京地裁判事。25年前の品川母娘放火殺人事件の第一審を担当した裁判官の一人。シーズン6第1話にも登場。S6E1『複眼の法廷』についてはこちらにまとめています。 - 茂手木進(ベンガル)
死刑囚・錦貴文の国選弁護士。貴文の無実を信じ、再審請求を続けてきた。 - 錦文忠(林隆三)
死刑囚・錦貴文の父親。息子の無実を訴え続けている。 - 橘ゆり江(かとうかず子)
元法務大臣で、現在は修道院のシスター。貴文の再審請求が棄却されて以来、死刑執行命令書にサインできなくなった過去を持つ。 - 飯田正志(ひかる一平)
25年前の品川母娘放火殺人事件の被害者、富山里美の元恋人。 - 黒木勝(成瀬正孝)
連続殺人事件の被害者。渋谷東署生活安全課古物担当。25年前、錦貴文を逮捕した元刑事。 - 緑川達明(遠藤たつお)
連続殺人事件の被害者。東京地検検事。25年前、錦貴文を起訴した。 - 錦貴文(久松信美)
品川母娘放火殺人事件の死刑囚。獄中で病死する。 - 杉下右京(水谷豊)
特命係の警部。 - 亀山薫(寺脇康文)
特命係の巡査部長。右京の相棒。 - 小野田公顕(岸部一徳)
警察庁官房長。 - 伊丹憲一(川原和久)
捜査一課の刑事。右京たち特命係を煙たがりながらも、時に協力する。 - 芹沢慶二(山中崇史)
捜査一課の刑事。伊丹の部下。 - 米沢守(六角精児)
鑑識課員。右京の頼みで事件の物的証拠を鑑定する。 - 角田六郎(山西惇)
組織犯罪対策部第五課長。暇つぶしと称して特命係を訪れる。
ネタバレ
25年前の品川母娘放火殺人事件の真犯人は、被害者・富山里美の元恋人だった飯田正志でした。飯田は、里美の別れ話に逆上し、彼女とその母親を殺害。自身の指紋を消すために家に火を放っていました。つまり、錦貴文は冤罪で逮捕され、死刑囚として19年間を過ごすことになっていました。
黒木警部補と緑川検事を殺害したのも飯田正志でした。黒木警部補は、25年前の事件で盗まれた「旧札」の存在に注目し、古物担当へと異動した後も地道に捜査を続けていました。D券からE券への紙幣の切り替わり時期を考慮し、旧札を換金しようとする人間をマークしていたのです。事件直後から古物担当になったのは、犯人が盗んだ現金を換金しようとする可能性を予見し、ネットワークを構築するためでした。黒木は生活に困り旧札を換金しに来た飯田の指紋を入手し、25年前の事件関係者の指紋と照合することで、飯田が真犯人であることを突き止めます。黒木はこの事実を緑川検事にも伝え、再審請求に向けて動き出そうとしていた矢先、口封じのため飯田によって殺害されました。右京は、飯田の自宅から旧札の束を発見し、彼の犯行を確証します。飯田は時効を主張して開き直りますが、右京たちは黒木が残していた飯田の指紋シートを発見。これにより、飯田が25年前の事件だけでなく、黒木と緑川の殺害の犯人であることも確定し、逮捕に至ります。
結末
この事件の判決を下した三雲判事は、無実の人間を死刑判決に導いてしまったことに長年苦悩していました。右京は、飯田逮捕のための捜索令状を、裁判官の地位を利用して三雲に「無理やり」取得させる形を取ります。これにより、三雲は裁判官を辞任する選択を迫られます。右京の「正義」は、時に強引で残酷な形で実行され、三雲に重い「責任」を取らせる結果となりました。しかし、これによって三雲は長年の苦悩から解放され、錦貴文の父親である文忠とも和解の涙を流すことになります。
感想と考察
冤罪事件、司法のあり方、そして人間の正義がもたらす複雑な影響を深く掘り下げた社会派ドラマで、シーズン6の主要テーマといえる「裁判員制度」や「裁判」に再び焦点を当て、人を裁くことの重さ、冤罪が人々の人生に与える深い苦悩を描き出しています。25年もの間、無実の罪で死刑囚として生きた錦貴文の悲劇は、足利事件や袴田事件といった現実の冤罪事件を想起させます。印象的だったのは、三雲判事の苦悩です。新人裁判官として冤罪の可能性を感じながらも有罪判決を下さざるを得なかった彼の内面は、裁判員制度を控えた当時(放送時)の社会にも、裁くことの重責を改めて考えさせるものでした。最終的に右京の強引なやり方によって裁判官の職を辞すことになった三雲ですが、その結末は彼にとって、長年の重荷を下ろすための必然であったのかもしれません。
ミステリーとして、細かいところで気になる部分もあるかもしれませんが、社会派ドラマとしてのテーマ性、右京と亀山、そして小野田官房長との関係性の描写、そして中園参事官の涙の記者会見といったユーモラスな要素が絶妙に融合し、飽きさせない見事な最終話でした。
余談
- 初回放送日は2008年3月19日です。このときの視聴率は17.8%を記録しました。
- タイトル「黙示録」は、新約聖書の最後の一書を指し、この世の終末や最後の審判、信仰者の勝利などが預言的に描かれています。本作では、冤罪事件や司法の闇、そして人々の運命が象徴的に描かれていることに通じます。
- 事件解決の鍵となる旧札について、日本のお札の変遷が劇中で語られました。1984年発行のD券(夏目漱石、新渡戸稲造、福沢諭吉)から2004年発行のE券(野口英世、樋口一葉、福沢諭吉)への切り替えが背景にあります。黒木警部補は、このお札の変わり目を手がかりに、犯人が旧札を換金するタイミングを長年待ち続けていました。
- 裁判所は栃木県議会議事堂、聖エレナ修道院は前橋カトリック教会などで撮影されました。黒木警部補が殺害されたのは四反道跨線人道橋、ラストシーンは渋谷スクランブル交差点でした。特に渋谷のスクランブル交差点は、シーズン1の最終話と同じ場所であり、亀山薫がフルで登場する最後のシーズンを締めくくるにあたって、何かしらの意図を感じさせる演出となりました。
作中の名言
- 「杉下の正義は、時に暴走するよ。」(小野田公顕)
- 「何も知らなかったの?相棒なのにねぇ。」(小野田公顕)
- 「誰だってそんなものにサインしたくない。」(橘ゆり江)
- 「三雲さん、私はあなたを許します。」(錦文忠)
- 「気になることがあると確かめずにはいられないのが僕の悪い癖。」(杉下右京)

