刑事コロンボS6E2「黄金のバックル(Old Fashioned Murder)」のあらすじ、トリック解説です。同時に二人を始末する犯人が登場します。
あらすじ(ネタバレ注意)
ルース・リットン(ジョイス・ヴァン・パタン)は美術館のガードマンを、美術館強盗になるようたぶらかします。そして、ガードマンが美術品を盗んでいる最中に銃殺し、銃声を聞いて駆けつけた弟も殺します。強盗と弟が鉢合わせし、銃を撃ち合い死んだようにみせかけたルースは、さらに、姪に罪をなすりつけるため、黄金のバックルが事件よりも前に盗まれたように偽装します。しかし、バックルが事件の当日、美術館にあったことが証明され、ルースは罪を認めます。
犯人のルース・リットンは、美術館の館長です。名門リットン家の次女で、姉と弟がいます。被害者はルースの弟です。美術館の理事長でもあります。弟は経営が厳しい美術館を閉館し、売り払おうとしていました。もう一人の被害者は美術館の警備員です。来歴に問題があり、勤務態度もよくありません。借金も抱えています。ルースの姪(姉の娘)が交際している男性の弟だったため雇われていました。ルースは美術館閉館を阻止するため、弟の殺害を計画します。警備員は弟殺害に利用されました。
コロンボは美術館のライトが消えていたことなどから、事件当時もう一人誰かがいたと推理します。さらに、姪が盗まれた美術品を灰皿にする様子を確かめ、美術品盗難の犯人は姪ではないと確信します。
ルースは過去に姉の夫を殺していました。ルースと姉の夫は婚約していましたが、姉の夫は裏切りました。ルースはコロンボに姉の夫殺しを示唆され、罪を認めます。
登場人物とキャストおよび役どころ
本作を彩る個性豊かなキャラクターたちを、指定のフォーマットでご紹介します。今回は女性陣の心理劇が非常に重厚ですよ!
- ルース・リットン(ジョイス・ヴァン・パタン):リットン美術館の館長。若い頃から美術館に人生を捧げてきた。かつて自分の元婚約者を姉に奪われて駆け落ちされたという、非常に深い心の傷と暗い愛憎を内に秘めている。美術館を死守するため、実の弟と警備員の二人を立て続けに手にかける冷酷な犯行を実行する。
- エドワード・リットン(ティム・オコナー):ルースの弟で美術館の理事。赤字経営が続く美術館を売却し、一族の生活費に充てるため、泊まりがけで目録整理を進めていた。しかし、その計画を阻止しようとするルースによって美術館内で射殺される。
- ミルトン・シェイファー(ピーター・S・フェイブルマン):リットン美術館の警備員。 ジェニーの交際相手の兄弟だが、ギャンブル依存で借金に追われ、素行も極めて悪い。ルースから展示品盗難の見返りに高額な逃亡資金を持ちかけられ計画に乗るが、最後はルースに用済みとして射殺され、相撃ちの片棒を担がされる。
- ジェニー・ブランド(ジーニー・バーリン):フィリスの娘であり、ルースの姪。妻子ある医師と不倫関係にあり、その縁でミルトンを警備員として雇った。伯母であるルースを実の母親のように慕っているが、ルースの策略によって殺人の濡れ衣を着せられ、警察に逮捕されるという悲劇に見舞われる。
- フィリス・ブランド(セレステ・ホルム):ルースの姉でジェニーの母親。かつてルースの婚約者であったピーターを略奪して駆け落ち結婚した過去を持つ。極めて情緒不安定かつ神経質な性格で、殺人事件や警察の話を聞いただけで大げさに気絶してしまうコミカルな面がある。
- ミラー刑事(ジョン・ミラー):現場の保存を最優先する真面目な刑事。コロンボの良き相棒として捜査を堅実に補佐する。
- ダリル(アンソニー・ホランド):ミルトンが事件前に立ち寄った個性的なヘアサロンの美容師。非常にコミカルな態度でコロンボを翻弄し、最終的にコロンボの髪型をモダンに整える。
トリック解説
犯人は共犯者を使って、強盗殺人を仕立て上げます。
強盗殺人偽装
美術館のガードマンの弱みに付け込み、美術館に盗みに入るように仕向けます。
- 口実:美術品には保険がかかっているので盗めば保険金が手に入る、といって美術品強盗に誘い出します。
- ガードマン殺害:美術館の電話の近くでガードマンを殺します。後述のアリバイ工作のため電話の近くで殺す必要がありました。
- 弟殺害:ガードマン殺害時の銃声を聞きつけやって来た弟を殺します。弟は美術品の目録を作成するため、美術館に残って作業をしていました。目録はテープに声を吹き込んで作っていました。
- 旅行鞄の処分:ガードマンは高飛びする計画でした。その証拠を消すため、犯人はガードマンの車にあった旅行鞄を処分します。
アリバイ工作
電話を使って犯行時刻を進め、アリバイを偽装します。ガードマンが兄に電話し、留守番電話に電話の最中に襲われたような音声を残します。この電話の後、美術館で美術品を盗みます。電話は夜9時過ぎです。この時刻のアリバイがあれば、犯行は不可能ということになります。
罪のなすりつけ
美術品を姪の部屋に隠し、罪をなすりつけます。
犯人のミス
コロンボが偽装工作に気付くきっかけです。
ちぐはぐな証拠
説明のつかない証拠や状況です。
旅行
被害者は新品の靴を履き、洒落たシャツに高そうな腕時計をしていました。髪は散髪したてで、手にはマニキュアも塗ってありました。さらに、予防注射の跡が残っていたことから、ガードマンが海外へ出掛ける予定だったと推理されます。しかし、旅行用の荷物とパスポート(旅券)は見当たりませんでした。ある刑事が予防注射の跡を虫刺されと間違えています。
ライト
二人の被害者が死んでいた部屋は真っ暗でした。真っ暗な部屋で撃ち合うことはできません。
2度まわす真夜中過ぎすぐ
ガードマンはポケットに「2度まわす真夜中過ぎすぐ」というメモを残していました。これは、高そうな腕時計の日付を合わせる方法でした。死んだガードマンの時計は正確な日付を示していました。つまり、深夜0時以降に腕時計の日付を直したと考えられます。これは、ガードマンが電話中に襲われた夜9時過ぎという時刻と矛盾します。被害者の腕時計のカレンダー機能は、31日に満たない月の場合、手動で日付を修正する必要があります。
ポケットの美術品
ガードマンは大きな鞄に美術品を詰めていました。しかし、ポケットに一つだけ美術品を忍ばせていました。このことから、全て自分のもののはずなのになぜ一つだけポケットに入れていたのか、という疑問が生じます。
犯行の証拠
犯人の犯行を裏付ける証拠です。
犯人の証言
犯人のルースは、事件の後「バックル(美術品)が2週間目に盗まれた」と証言します。このバックルが姪の部屋から見つかり姪は逮捕されます。しかし、コロンボの罠によって姪は盗んでいないことが明らかになります。さらにバックルは弟が作成していた目録に残っていました。
コロンボの罠
逮捕された姪に、犯人が持っていた鞄をみせつつ、姪の部屋から見つかった美術品を彼女のそばに置きます。姪は美術品に気付かず、灰皿に使います。
感想と考察
強盗殺人のバリエーションが増えています。共犯者を強盗役に仕立て殺すだけではなく、目撃者も殺害します。本当の標的は目撃者の方、という手の込んだ殺し方です。コロンボの髪型は、美容師によれば、「これはひどいな」、らしいです。原題は「Old Fashioned Murder」(古い殺人)です。「黄金のバックル」は原題とは異なったタイトルです。
なお、本作は、ミステリーとしての評価と人間ドラマとしての評価で大きく二分される傾向があります。
- ミステリーとしての批判的視点(弱点):多くのファンが、犯行計画の物理的なアラを指摘しています。留守電に録音された銃声が1発だけであることの不自然さや、中距離か ら急所を完璧に撃ち抜くルースの不可解な射撃の腕前、さらに二人の硝煙反応がどう扱われたのかが描かれていない点など、推理プロットとしては穴が多い弱点があるとみなされています。
- 人間ドラマ・心理劇としての高い評価:一方で、一族の根深い愛憎劇、ルースという哀愁に満ちた女性の生き様、そして古風で薄暗い美術館の退廃的な描写など、人間心理に深く切り込んだドラマとしてのクオリティは極めて高いと評価されています。ルースとコロンボがお互いの知性を静かに認め合い、ラストシーンで「腕を貸してくださる?」とコロンボにエスコートされて去っていく美しい幕引きには、ファンから感動の声が数多く寄せられています。
ドラマの内容を、殺人の計画性、偽装工作、犯人のミス、動機、凶器、トリック、コロンボの罠で簡単にまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 殺人の計画性 | あり |
| 偽装工作 | 強盗殺人を偽装 |
| ミス | 美術品の盗難偽装 |
| 動機 | 美術館閉館の阻止 |
| 凶器 | 拳銃 |
| トリック | 共犯者 |
| コロンボの罠 | 灰皿 |
ジェニーの出生の真実
フィリスが駆け落ちした際、すでに妊娠3ヶ月であったという事実。フィリスとピーターが駆け落ち前からルースを裏切って関係を持っていたことは間違いありません。しかし視聴者の間では「本当はジェニーはルースの実の娘なのではないか」という説や、「フィリスの不貞による別人の子を、婚約者を奪うことで父親代わりに仕立てたのではないか」など、様々な仮説が議論されています。ルースが溺愛する姪であるジェニーに濡れ衣を着せようとしたのは、姉への激しい憎悪が勝ったのか、それとも愛憎入り混じる複雑な感情があったからなのか、本作最大の心理的なミステリーとなっています。
元婚約者ピーター・ブラントの不審死
コロンボは、ジェニーの父親であるピーターの急死(心臓発作)について、喘息の持病を持つ彼をルースがカミツレ茶などを利用 して病死に見せかけ薬殺したのではないかと指摘します。ルースは最後に「パパを殺したというのは嘘です」と強く否定しますが、これは自身の愛するジェニーに対してだけは、父親を殺した冷酷な人殺しだと思われたくないという、せめてもの自尊心と贖罪の現れだったのかもしれません。コロンボも彼女の痛切な心中を察し、「おっしゃる通り嘘です」と大人の優しさで否定を受け入れ、秘密を永遠の闇に葬りました。
口コミ分析
海外サイトの口コミには、museum、brother、guradなどが書き込まれています。

余談
- コロンボ、38作ぶりのイメチェン:聞き込み先のヘアサロンで、美容師ダリルになだめすかされてコロンボが髪を切るシーンは必見です。高額な施術代25ドルを部下のミラー刑事に借金し、時計屋の鏡で誇らしげに髪型を気にする姿が非常に愛らしいですね。しかし、後半にはいつも以上にボサボサの頭に戻っているのがお決まりのユーモアです。
- コロンボはアレルギー体質?:今回のコロンボは終始、春先のアレルギー(花粉症)でクシャミばかりしています。見かねたルースが風邪に効くカミツレ(カモミール)茶を淹れてくれるやり取りがあり、犯人でありながらどこか気立ての良いルースの二面性を静かに際立たせています。
- スタッフやキャストの意外な裏側:犯人ルースを演じたジョイス・ヴァン・パタンは、第27話『逆転の構図』でもコロンボをホームレスと勘違いする親切なシスター役を演じていました。また、被害者の警備員ミルトンを演じたピーター・S・フェイブルマンは、本作の脚本家本人でもあります。被害者 エドワード役のティム・オコナーも、第17話『二つの顔』で弁護士役を好演したコロンボの常連俳優です。
- 『古畑任三郎』へのオマージュ:劇中、歴史的価値のあるバックルをただの灰皿として扱って無実を証明するシーンは『古畑任三郎』の「しゃべりすぎた男」へ、目録整理の録音テープから矛盾を突く構成は「今、蘇る死」へ、それぞれオマージュとして昇華されたのではないかとファンの間で語り継がれています。

