人形式モナリザ|あらすじ・ネタバレ解説・相関図・感想・考察

森博嗣「人形式モナリザ(Shape of Things Human)」のあらすじ、相関図、真相、感想、最後の一行に関する考察などをまとめています。Vシリーズの2作目にあたる作品です。

「あ、プール、僕が行きたいなり!」練無が両手を挙げる。「プールだ。プールだ!」
「君は仕事」大河内が練無に低い声で言う。
「しょぼん」練無は項垂れる。

森博嗣「人形式モナリザ」ノベルスP20抜粋

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あらすじ

長野県の避暑地にあるペンションでバイトをすることになった小鳥遊練無と森川素直。練無は瀬在丸紅子、保呂草潤平、香具山紫子をペンションに呼ぶことになる、いつものメンバー+αで、初夏を過ごします。
同じ頃、彫刻家である江尻駿火の最後の作品「モナリザ」を巡って、長野県の美術館でルパさんと呼ばれる泥棒による絵画の盗難事件が発生します。ルパさんがらみの事件に関わったことのある愛知県警の林は、偶然、休暇で祖父江七夏とともに長野県を訪れており、長野県警の本間から連絡を受け、盗難事件のあらましを知ることになります。

ばらばらに行動していた練無、森川、紅子、保呂草、紫子、祖父江、そして、林達ですが、人形博物館で乙女文楽の公演を鑑賞することになります。衆人環視の中、公演中に演者のひとり岩崎麻里亜が吐血し倒れます。さらに、同じ舞台で櫓の上にいた岩崎雅代が銀のナイフで刺され死んでいるのがみつかります。

一命を取りとめた麻里亜でしたが、今度は麻里亜の義父にあたる岩崎毅が毒殺され、入院していた麻里亜も金のナイフで刺され重傷を負います。その金のナイフは2年前に、麻里亜の夫、岩崎亮を殺害した凶器と同じものでした。

登場人物

Vシリーズを通して登場するキャラクターについてまとめます。それ以外の登場人物は相関図で紹介しています。

  • 瀬在丸紅子
    29歳。探偵役
  • へっくん
    小学六年生。紅子の息子

  • 40歳。27歳のときに紅子と結婚。1年後にへっくんがうまれ、結婚から6年後に離婚
  • 祖父江七夏
    28歳。離婚歴あり
  • 保呂草潤平
    28歳
  • 小鳥遊練無
    10代。長野県松本市出身。姉が二人いる
  • 香具山紫子
    10代。
  • 森川素直
    20歳。ルパン三世のようなヘアスタイル

相関図

人形式モナリザの登場人物相関図
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事件のまとめ

「人形式モナリザ」で起きた事件の概要と謎を整理します。

  • 麻里亜の殺人未遂
    乙女文楽の公演中に麻里亜が吐血します。毒を飲んだことは確かですが、麻里亜自身の証言は得られません
  • 雅代の殺人
    麻里亜と一緒に舞台で演じていた岩崎雅代がナイフで刺されて亡くなります。雅代は舞台に建てられた櫓の上にいました。櫓には簡易エレベータがあり、通常、このエレベータで櫓に上がります。公演は、雅代が櫓の上から糸で麻里亜を操るという内容でした。麻里亜が倒れる直前まで、観客には雅代が役を演じているようにみえました。そのため、麻里亜が倒れてから雅代が殺された、もしくは同時だったと推理されます。なぜ公演中に殺す必要があったのかが大きな疑問点といえます
  • 毅の殺人
    岩崎毅はバーボンに混入された毒を飲み、死亡します。毅は、岩崎家に保管されている人形をみようとした紅子の目の前で死亡します
  • 麻里亜の殺人未遂(2回目)
    入院中の麻里亜が、密室で血を流していました。ナイフで刺されたことによる出血はありましたが、この時も、死には至っていません。凶器は夫の亮を殺した金のナイフです。この金のナイフを届けた人物はルパさんです
  • 亮の殺人
    2年前に、岩崎亮が亡くなっています。目撃者となった麻里亜は「夫を殺したのは、神様だった、いや、あれは白い手の悪魔だった」と証言します。亮の元恋人は亮の呼び寄せた悪魔を見ています。悪魔とは何なのか、正体があるのかどうかなど、謎めいています
  • モナリザの謎
    江尻駿火は晩年、人形を製作していました。たくさんある人形の中で、最後の作品とされるモナリザがどれなのかわかっていません
  • ルパさんの正体
    モナリザに関連すると考えられる中道豊作の絵を盗んだ泥棒の正体も不明です
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ネタバレ

雅代と毅を殺害した犯人は岩崎麻里亜です。公演中に犯行に及んだのは、真犯人である麻里亜に完璧なアリバイが作られるためで、麻里亜が倒れた時、既に雅代は殺されていました。
2年前の亮の殺害も麻里亜が実行犯で、家族がそれを隠したと考えられます。

麻里亜が家族を殺した理由は家族を悪魔から救うためであり、自分が人形だと思い込むことで殺人を成し遂げたと推測されます。麻里亜本人が精神錯乱状態に陥ってしまうため、本人の口からは何も語られません。

麻里亜の殺人未遂は、麻里亜自身による自傷行為ということになります。保呂草は自殺しようとしていたと考えているようです。犯した罪を後悔したというよりは、自分も悪魔にとりつかれていると考え、自傷行為(自殺未遂)に至ったといえます。

  • 悪魔の正体
    悪魔は遊園地にあるロバの怪物です。頭が馬(ロバ)で、体が人間です。>亮は薬の類を使って元恋人の正常な精神を奪い、遊園地のロバをみせたようです。錯乱状態だったと考えられる元恋人は、ロバを悪魔と勘違いしたようです
  • モナリザの真相
    1000体以上のモナリザは、中道豊の書いた絵、すなわち、ルパさんが盗んだ絵の裏に描かれたマトリックス(表)に従って並べれば、一枚の絵が浮かび上がります。それが、モナリザです。人形には色で印がつけられており、その色との対応表が中道豊の絵に描かれていました
  • ルパさんの正体
    ルパさんは保呂草です。絵を盗んだのも、岩崎邸で紅子を失神させたのも、保呂草です。ドロボーです。
    金のナイフを麻里亜に届けたのも、保呂草です。モナリザの真相を掴めずにいた保呂草は近い色の印がない金と銀の人形に目をつけ盗みます。そして、偶然、人形の中に金のナイフを見つけます。なお、保呂草はモナリザについての情報を得ようとして、麻里亜に金のナイフを渡しています。保呂草の愛車ビートルはエンジンが後ろにあります。そのため、フロント側を触っても、暖かくはありません(ビートルという車はRR、リアエンジン・リアドライブという駆動方式を採用しています。そのため、エンジンが後ろにあって、トランクルームが前にあります)

最後の一行

物語を締めくくる一行は次の通りです。

「それ、誰ですか?」私は尋ねた。「その写真は誰?」
(中略)
「お義母様」。

森博嗣「人形式モナリザ」ノベルスP280抜粋

質問者は保呂草で、「お義母様」と答えたのは麻里亜です。麻里亜は、ロバの怪物の写真をみて、こう答えています。このことから、亮殺害時に麻里亜がみた悪魔はお義母様、つまり岩崎巳代子だったと考えられます。

麻里亜がみた悪魔は、人の二倍も背丈のある馬の顔の悪魔と獣の躰に顔だけが人間の悪魔です。馬の顔の方が巳代子だとすると、もう一体いたことになります。事件が起きた時、毅と家政婦は不在だったので、残るは雅代だけです。

以上のことから、雅代と巳代子が麻里亜による亮の殺人を隠蔽したと考えられます。

黒幕

巳代子が麻里亜を操って一族を殺したわけではありません。巳代子が黒幕で、その目的が、岩崎家の滅亡であるならば、亮を殺した時に、屋敷にいた雅代も殺せたはずです。亮殺害後、2年以上も間が空いているのも、奇妙です。おそらく、巳代子は義理の娘の犯行を隠そうとしたと考えられます。

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感想と考察

三重県にある志摩スペイン村(パルケエスパーニャ)のアトラクションに、ロバの怪物が登場します。現在、同じアトラクションはなくなっていますが、ロバ風の怪物というのは、アトラクションに登場したロバがモデルだと考えられます。私は、このアトラクションに乗ったことがあります。某テーマパークのホーンテッドマンションのような乗り物で、怖いです。私は子供だったので、あまりいい思い出ではありません…。

面倒を引き寄せている人物とは

プロローグに次のような語りがあります。

「いったい、四人のうち誰が、こんな面倒を引き寄せているのだろう?」
この極めて素朴で順当な疑問に関しては、実に希少な例であるが、今回の事件に限って、物語の最後で明らかとなるだろう。

森博嗣「人形式モナリザ」ノベルスP20抜粋

おそらく、正解はルパさんこと保呂草です。

絵画の盗難事件は保呂草の仕業でした。盗難と殺人事件は直接関係がないようにみえますが、絵画が盗まれたことをきっかけに、麻里亜が殺害を決意したと考えることもできます。
公演は定期的に行われているので、なぜその日を選んだかを考えると、やはり、絵画の盗難がきっかけだったのではないかと推理できます。なので、麻里亜の動機は保呂草が生み出したのかもしれません。

モナリザに関しては麻里亜の動機に関係がなさそうです。麻里亜が絵画とモナリザの関係を知ったのは、事件が起きる直前の控室でした。モナリザについて知った後に犯行用の毒を準備するというのは、時間的に難しいように思います。そう考えると、麻里亜はモナリザとは関係なく、犯行を決意したことになります。

みんなの感想

「人形式モナリザ」の感想として、動機難しい、複雑な人間関係、ラスト一行衝撃、などがよく書き込まれています。

下の画像の言葉は感想でその言葉がよく使われたことを意味しています。また、言葉と言葉を結ぶ線は、その言葉が同じ文で使われたことを意味しております。

「人形式モナリザ」の口コミをAIでまとめた図
テクニカル情報
レビュー数 文章数 異なり語数
986 3724 4214

この記事のまとめ

「人形式モナリザ」のあらすじ、感想などをご紹介しました。

  • 【犯人】岩崎麻里亜(いわさき・まりあ)
    動機が金とか男女関係ではないので、非常に理解しにくいが、あまり深く考えているとこちらまでおかしくなりそうな雰囲気はある。悪魔から解放するために殺して差し上げます、いやあなたこそが悪魔でしょうよ、というわけなので、事実、自殺を図ったりしている。心神喪失でまともな生活が送れていないかというとそうでもなく、アリバイ工作を仕掛けた上に、自身が被害者になるというトリック(バールストン・ギャンビット)も使っている。義理の母親という共犯者がいたようなのだが、それも織り込み済みだとすると、なかなかに賢しい女性といえる。そんな知能をもった犯人が悪魔がどうのこうのと言い出すのは、やや不気味である。まさか演技だったということはないだろうが…
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