月は幽咽のデバイス|あらすじ・ネタバレ解説・感想・考察

森博嗣「月は幽咽のデバイス(The Sound Walks When the Monn Talks)」のあらすじ、真相、感想、考察をまとめています。Vシリーズの3作目にあたる作品です。

「お待たせなり」ひときわ高い声で練無が言う。
「待ったがな、待ったがな」紫子は立ち上がる。
「どう?」そう言いながら、練無は廊下でくるくると回った。
「ずうっとそうやって回ってなさい」紫子が冷たく言う。
「遠心分離器か、僕は」

森博嗣「月は幽咽のデバイス」ノベルスP77抜粋

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あらすじ

9月上旬の、とある日。薔薇屋敷、月夜邸、黒竹御殿とよばれ、オオカミ男の噂が立つ篠塚邸で、歌山という女性の死体が見つかります。現場は密室で、歌山の死体は、暴れ狂ったように引きずられ、衣服も切り裂かれていました。
死体が見つかったとき、偶然、篠塚邸に招かれていたいつものメンバー、紅子、保呂草、練無、紫子は、当然のように事件に巻き込まれます。

登場人物

  • 瀬在丸紅子
    もうすぐ30歳。自称科学者。信号伝達と波形認識について研究中。篠塚邸で階段の数を数えていた(五十五段)
  • へっくん
    10mよりも高い木が何故水を吸い上げられるのか調べている小学6年生
  • 根来機千瑛
    瀬在丸家の執事。パイプ好き

  • 40歳。署の若い子にあだ名で呼ばれている(あだ名は不明)
  • 祖父江七夏
    もうすぐ30歳
  • 保呂草潤平
    20代。静岡の美術館から絵画を盗み篠塚宏邦に売りつける。泥棒
  • 小鳥遊練無
    洋服のモデルをやったりしている
  • 香具山紫子
    でかい大学生
  • 森川素直
    阿漕荘に引っ越してくる。紫子の隣、保呂草の向かい、練無の斜め向かい。四人姉弟の一番下
  • 篠塚宏邦
    薔薇屋敷の主人。お金持ち。篠塚建設の社長
  • へっくん
    10mよりも高い木が何故水を吸い上げられるのか調べている小学6年生
  • 篠塚莉英
    篠塚家の一人娘。お嬢様。紅子の友人
  • 兼元智恵子
    篠塚家の居候。二十代のイケメン
  • 吉澤貴浩
    49歳。篠塚建設の部長。篠塚家との付き合いが長い
  • 神部和明
    35歳。篠塚建設の部長。莉英の婚約者。篠塚邸近くのマンションに住んでいる
  • 歌山佐季
    被害者。三十代前半。自称ファッションデザイナー。莉英の大学時代の先輩
  • 岸田毅
    年齢は30歳より上。ファッション関係。佐季の婚約者
  • 村野多恵子
    40歳前後。スナック経営。宏邦の愛人
  • 森川美沙
    森川素直の姉。骨董品商
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事件のまとめ

「月は幽咽のデバイス」で起きた事件について、概要や謎などを整理します。

まず、被害者となった歌山佐季は篠塚邸のオーディオ・ルームで死んでいました。歌山を殺した犯人、動機、手口が大きな謎といえます。
篠塚邸では莉英と神部の婚約発表パーティーが開かれていました。そのパーティーの最中に、歌山の死体が発見されています。パーティーは篠塚邸のリビングで開かれ、その隣が、死体発見現場となったオーディオ・ルームです。オーディオ・ルームは防音のため、二重構造になっています。

  • グラスと鍵
    死体が発見される前、莉英がオーディオ・ルームに入っています。このとき彼女は、持っていたグラスを落として割ってしまった、と話します。グラスの破片は確かに不自然に飛び散っていました。十分後、莉英が再びオーディオ・ルームに入ろうとした時、なぜか部屋には鍵がかかっているようでした。莉英が扉を開けてみると、そこには歌山の無惨な死体が転がっていました。
  • 状況
    死体の身に付けていた衣服は引き裂かれていました。さらに、体の一部もちぎれかかっているようでした。しかし、死因は、頭部からの出血のようです。床には死体を引きずったような血の跡が残っており、水槽の水もこぼれていました。なぜ水がこぼれているのかは不明です

なお。パーティーの最中、保呂草と紅子は莉英が庭で誰かと話している様子を目撃します。そして、紫子は篠塚邸の庭で不気味な声を聞いています。莉英が話していた相手と、紫子が耳にした声の主は定かではありません。

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ネタバレ

歌山は転落死です。莉英のペットであるオスカーが落下した死体を引きずっていました。

オーディオ・ルームの床はエレベーターのように6メートル下がります。しかし、部屋のソファは動かないため、床とソファの高低差は6メートルになります。この状態のときに、歌山はソファから床に落下して死亡しています。

  • オスカーとグラス
    屋敷の地下には、熊のような獣が放たれています。莉英のペットのオスカーです。このオスカーによって歌山の死体が遊ばれ、結果的に悲惨な状況を生み出していました。莉英がオーディオ・ルームに入ったとき、床は下がっていました。そして、下には、死体で遊んでいるオスカーがいまいた。莉英はそれを止めさせるために、グラスを投げました。グラスが飛び散っていたのは、誤って落としたからではなく、オスカーを叱るために、高いところから投げ捨てからです
  • 密室
    オーディオ・ルームに鍵がかかっていたというのは莉英の嘘です。オスカーの犯行だと考えていた莉英は現場を密室にすることで、自殺にみせようとしました
  • 漏れた水
    オーディオ・ルームが上下したために、水槽から水がこぼれていました。つまり、水はオーディオ・ルームの床が動いたことを示唆していました。水槽は屋外のプールとホースでつながっています。水槽は床が下がると、一緒に下に降りていきます。水槽とプールはホースでつながっているので、水面の高さが同じになります。つまり、水槽が下がれば、水面の高さが変わります。水面の高さを揃えるために、プールから水槽に水が流れていきます。その結果、水槽から水がこぼれます。床が再び上昇すると、水面を揃えるようにして、水が流出します
  • 会話と声
    莉英が話していたのは婚約者の神部です。神部は自宅のマンションにいましたが、パラボラを使って篠塚邸の庭まで声を届けていました。そして、紫子が聞いたのは神部の声です
  • 秘匿の理由
    邦弘はオーディオ・ルームの構造を知っていましたが黙っていました。その理由は、公けにできな美術品や現金を隠していたからです。莉英にとってはペットのオスカーですが、邦弘にとっては番犬のような存在でした。なお、オーディオ・ルームの構造を知っていた他の人物(神部など)も、警察には黙っていたことになります

犯人

  • 不明(事故死の可能性が高い)
    大山鳴動して鼠一匹。殺人だと思っていたら事故だったわけだが、明言されていないので、ネズミも登場せず、鳴り響いて終わったかもしれない、オーディオ・ルームだけに。
    事件の裏にあったのは、屋敷に盗品の類が隠されているということで、このことを隠すために、事故死が歪んでしまった。自分の犯した罪が露見することを恐れて嘘をつき、その嘘をもとに事件の全体像が組み上げられてわけがわからなくなるというのは、ミステリーらしくて面白いが、堂々と嘘をつかれる読者という立場にとっては、結構迷惑だったりもする。
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感想と考察

最高の音響空間を作り出すために、宙に浮いているような部屋を作り出したということだったと思います。床で反射する音がノイズになるみたいなことですが、こういった方のことをガチ勢というのかもしれません。ガチ勢、すなわち、常人には理解できない無駄遣い消費をしている人ということです。

歌山が何故死んだのかは、明らかにされていません。可能性が高そうなのは事故死ですが、岸田による犯行というのも考えられます。

  • 事故死説
    歌山は薬物をやっていました。薬の作用で、錯乱状態になり、誤って(気分がハイになって)エレベーターのボタンを押し、さらに間違って転落した(空を飛びたくなった、など)かもしれません。そうであるならば、事故死といえます。タイトルに含まれる“幽咽”は広辞苑大六版に意味の記載がありませんが、ネットには「かすかにむせびなくこと」という意味が載っています。月がむせび泣きのデバイスであると考えると、事件の起きた満月の夜、誰かが月を見て泣いていたことになります。もしもそれが死んだ歌山であれば、死ぬ前に彼女は泣いていたことになります
  • 岸田の犯行説
    歌山と直前まで一緒にいた婚約者の岸田がエレベーターのスイッチを押して、薬物の副作用で喪失状態にある歌山が死ぬかもしれない状況を作り出したとも考えられます。この場合、未必の故意ということになります。作中、歌山と莉英は居候の桜井を巡って……、と紅子が語っていますので、岸田が歌山を殺す動機は歌山と桜井の男女関係といえます
  • 証拠
    歌山にしろ、岸田にしろ、オーディオ・ルームの構造、特にエレベーターの秘密を知っていたかどうかは疑問です。
    歌山は莉英との付き合いが長そうなので、知っていたかもしれませんが、岸田は歌山の婚約者であって、篠塚家との付き合いがあったわけではなさそうです。とはいえ、歌山が知っていたとなれば、岸田も歌山から聞き知っていたかもしれません。なので、エレベーターについて知り得たかどうかだけでは、事故死説か、岸田犯人説か、断定できません。決定的な証拠となりそうなのは、エレベーターを操作するボタンに付着した指紋です。下記のように考えれば、ボタンの指紋で事故か他殺か判断できるはずです
  • 歌山の指紋が残っている
    この場合は事故死です。
  • 岸田の指紋が残っている
    この場合、岸田が操作したと考えられます。
  • 指紋がない
    この場合も岸田が操作したと考えられます。
    岸田は、証拠を隠すために指紋が残らないようにボタンを押します。しかし、歌山が指紋に気を配るはずがないので、歌山の指紋がないと、不自然です。

作中、警察はボタンに気付いたが電源が落ちていたためエレベーターは動かなかった、ということが書かれています。警察がボタンの存在に気付いているということですので、事件直後に指紋も採取しているはずです。

みんなの感想

「月は幽咽のデバイス」の感想としては、すべての現象に意図を見出す、常に理由を持って行動する、すごい仕掛け、まさかの展開、れんちゃん好きなどがよく書き込まれています。

下の画像の言葉は感想で、その言葉がよく使われたことを意味しています。また、言葉と言葉を結ぶ線は、その言葉が同じ文で使われたことを意味しております。

「月は幽咽のデバイス」の口コミをAIでまとめた図
テクニカル情報
レビュー数 文章数 異なり語数
902 3263 4132
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プレジョン商会とは

保呂草が名乗るプレジョン商会はアナグラムです。アルファベットにして、文字を入れ替えると保呂草潤平になります。プレジョン商会は日本語のままアルファベットで書くとpurejyonshoukaiになります。これは並び替えるだけでhorokusajyunpeiになります。

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