南原詠著「特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来」のあらすじ、ネタバレ、感想などをまとめています。特許スペシャリストの弁理士が主人公の小説で、このミステリーがすごい!大賞第20回受賞作です。

©宝島社/南原詠・田中寛崇
あらすじ
弁理士・大鳳未来(おおとり・みらい)はテレビの特許侵害問題に概ねの決着をつけ、次の依頼主のもとへと向かいます。
依頼主はVTuberの事務所社長で、所属する人気VTuber・天ノ川トリィの撮影および配信方法が特許侵害であるという警告文を受け取っていました。警告の送り主はライスバレーという企業で、レーザーでスキャンした配信者等の造形を点の集合とし、その膨大なデータを5G通信を使ってサーバーに転送するというアイデアについて特許使用の権利・専用実施権を持っていました。そのため、専用実施権の特性上、特許権を国に認められた権利者は別の法人もしくは個人のようでした。
特許侵害が事実かどうかを確かめるため、大鳳は撮影配信装置を調べます。装置はネットで購入され、なおかつ、販売主がアカウントを削除していたため、調査は滞ります。さらに、特許が無効にならないかどうかも調べますが、よい結果は得られません。正攻法が通用しそうにない状況の中、特許権者がハナムラ設計機器であることが明らかになり、ライスバレーとハナムラの関係も明確になっていきます。ライスバレーは、専用実施権を得る前に、ハナムラの特許を無効にしようとしていました。理由は、工務店との契約するためだったようです。
VTuberの祭典ブラックホール・フェス出場が危ぶまれる天ノ川トリィは、配信を中止され荒れ狂います。そしてついに、ライスバレーが訴訟に動き出します。
解説
特許法違反を犯したのはトリィの撮影と配信を行う装置です。販売したのは如月測量機器なので、このメーカーが悪いように思えますが、特許を侵害した装置を使ったトリィも特許侵害となります。
特許は、それを取得した個人や企業が普通は使います。使うというのは、その特許(アイデア)を利用した商品を製造・販売するというイメージです。自分しか使えないかというとそうではなく、他の企業などに許可もしくは譲渡できます。許可方法には2種類あり、1つが専用実施権、もう1つが通常実施権となります。それぞれ特徴があり、専用実施権のそれは、この物語の結末でオチに使われています。いずれにしても、特許を許可する場合は、そのかわりにお金をもらったりするのが通常です。
- 特許
特許はアイデアを保護する法律ですが、特許庁に申請しないと権利を受けることができません。このとき、書類の作成などを専門的に行うのが弁理士です。身近な特許と言っても沢山ありますが、例えば、フリクションボール(消えるボールペン)はある特許が使われています。開発したのはパイロットですが、この特許を三菱鉛筆が無効にしようとしたことがあります。フリクションボールの特許と一言で書いていますが、その具体的な内容はとても専門的です。なお、現在、この件に関して、パイロットと三菱鉛筆は和解しているようです - 点群データ
点群のイメージは夜空に輝く星です。星空は平面的にみえますが、実際は空間に点在しています。通常は、星座のように、どの星とどの星をつなぐのかという情報が必要になります
ネタバレ
トリィが特許侵害で訴訟を起こされそうになった理由は、トリィのブラックホール・フェス出場を阻止するためでした。黒幕はハナムラ設計機器の華村で、華村はあるVTuber事務所に投資していました。その事務所のVTuberがフェスで優勝すれば、事務所の価値が跳ね上がるため、優勝候補であるトリィを排除しようとしていまいた。
華村はライスバレーに専用実施権を設定していました。専用実施権を設定した場合、ハナムラはその特許(技術)を使えなくなります。しかしハナムラは如月測量機器というアカウントで、撮影配信装置を販売していまいた。専用実施権設定後に、在庫を処分するという目的だったようですが、特許法を犯しています。
この事実を掴まれた華村は、やったらやり返される状況に陥り、沈黙します。
一方ライスバレーは、特許が無断出願である事実を突きつけられ、警告を撤回することになります。問題の特許を考え出したのは、ハナムラの元社員であり、そもそも、特許の権利はその社員にありました。ハナムラ設計機器には、特許に関する社内の契約がなかったため、元社員に許可なく申請された特許は無断出願となり、特許は無効となります。
特許を受ける権利があるのは発明者です。会社の場合、それぞれの従業員が考え出すため、権利者は従業員となります。これに対して企業は、権利を譲渡する契約を結ばせ、会社の財産にします。ハナムラには、この契約がなかったため、会社が特許を申請しても、確実に特許権は認められない状況でした。
感想まとめ
みんなの感想をご紹介します。
下の画像の言葉は感想でその言葉がよく使われたことを意味しています。また、言葉と言葉を結ぶ線は、その言葉が同じ文で使われたことを意味しております。

- 初めて知る職業
士業の一つである弁理士が物語の主人公です。この小説を通じて、弁理士という職業をはじめて知ったという方が多いようです。特許を出願する際に、お世話になることが多い職業です - 馴染みない
弁理士という職業や特許、その活躍を描いたミステリーに馴染みがないという感想が書き込まれているようです - 才能
主人公の「才能を守る」というセリフに感想が寄せられています
弁理士という職業を初めて知り、Vtuberについても無知だったので、いろいろ新鮮な読書となりました。
初めて聞く弁理士という言葉と殆ど知らないVtuberの世界で大丈夫かと思いながら読み始めたけど、読みやすさと未来のグイグイ進む決断力に引っ張られ楽しんで読めた。
60年の人生で弁理士という職業を初めて知った私は無知なのか、特許や知的財産権とはあまりに無縁なところで生きてきたからか。
弁理士+VTuber+特許という馴染みの無い世界に、本を開く前から気後れしていた私でしたが、いざ読み始めると全く気にならずグイグイ作品に引き込まれるテンポの良さ。
私には馴染みのない特許。知的財産って言葉は聞いたことあるけど?でしたが、展開が早くてドタバタしてますが、わかりやすく読めてちょっと賢くなった気分(笑)
弁理士とVTuberと特許っていうミステリーだと馴染みがない単語を取り入れているのは新鮮だし、面白い。
「あなたの才能は私が必ず守ります」の一言にしびれました。
特許で才能を守ることも、失うには惜しい才能を特許から守ることも、どちらも弁理士の仕事。
彼女の才能を守りたい一心でブルドーザーのように問題点に切り込む過程で見えてきたのは複雑に絡み合う企業間の利害関係、最後に打って出た奇策が奏功し鮮やかに勝利。
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