名探偵ポワロ第56話・S10E3『葬儀を終えて(After the Funeral)』のあらすじ、ネタバレ解説です。アバネシー家当主の葬儀のあと、遺言が読み上げられ、一人の親戚が“兄さん、ほんとは、殺されたんでしょ”と呟きます。
あらすじ
アバネシー家の当主リチャード・アバネシーが死亡し、つつがなく始まった葬儀には、アバネシー家の一族が集まりました。お金持ちであったリチャードは遺言を残しており、葬儀ののち、執行人である弁護士がそれを読み上げました。全てを相続するのは甥のジョージ・アバネシーであると誰もが考えていましたが、残された遺言書には、ジョージを除いた全ての親族に均等に遺贈するという内容が記されていました。
遺言読み上げのすぐ後、故人の妹であるコーラ・ガラチオが「兄リチャードは殺された」と発言し、一族は騒然とします。コーラは親族の間で変人のレッテルを貼られ、遠ざけられているような老女でした。そんなコーラが、葬儀の翌日、自宅で惨殺されます。凶器は斧で、コーラは何度もその斧を振り下ろされていました。
意外な遺言、被相続人リチャードの殺人疑惑、そして、コーラの殺人…、手に余ると感じた弁護士は名探偵のポワロに捜査を依頼。ポワロは事件の調査を快く引き受けます。
表向きコーラ殺人の調査として聴取を進めるポワロは、親族達がコーラ殺害時のアリバイに関して嘘をついていることを見破ります。それぞれが疑わしく思える状況の中、殺されたコーラのコンパニオンであるギルクリストがウェディングケーキに毒を盛られます。さらに、葬儀で抱いた違和感の正体に気付いたヘレン・アバネシーも、気付いたことを電話で弁護士に伝えようとして、何者かに鈍器で殴られます。

©Agatha Christie Ltd, ITV BBC
コーラおばさんの爆弾発言
登場人物とキャスト
ポワロ以外の登場人物です。
- リチャード・アバネシー
故人。アバネシー家当主。やもおで子供はいない。火葬される - ヘレン・アバネシー
リチャードの義妹。夫は他界している。夫はリチャードの末の弟 - ジョージ・アバネシー
ヘレンの息子。亡くなったリチャードに可愛がられていた - スザンナ・ヘンダーソン
ジョージのいとこ。貧困の救済活動に熱心 - ロザムンド・シェーン
ジョージのいとこ。スザンナの妹。俳優 - マイケル・シェーン
ロザムンドの夫。俳優 - コーラ・ガラチオ
被害者。リチャードの末の妹。少なくとも親族の間では変人と認識されている - ギルクリスト
毒を盛られた女性。コーラのコンパニオン(使用人に近い存在) - ジョバンニ・ガラチオ
コーラの元夫。画家 - ティモシー・アバネシー
リチャードの弟。車椅子で生活している。葬式には参列していない。使用人を雇う余裕はない - モード・アバネシー
ティモシーの妻 - ギルバート・エントウィッスル
弁護士
主要ゲストの役名と役者名をまとめます。
| 役名 | 役者名 |
|---|---|
| George Abernethie ジョージ |
Michael Fassbender |
| Susannah Henderson スザンナ |
Lucy Punch |
| Michael Shane マイケル |
Julian Ovenden |
| Rosamund Shane ロザムンド |
Fiona Glascott |
| Cora Gallaccio コーラ |
Monica Dolan |
事件のまとめ・謎
火葬された故人リチャードは遺産目当ての殺人で、その秘密を知ったコーラは一族の何者かに殺されたようです。遺産は一人を除き親族全員に均等に相続されることになったため、全員に動機があるといえます。
なぜ遺言は変わったのか、コーラ殺害の犯人は誰か、親族達が嘘のアリバイを話す理由は何かなど様々な謎がありますが、一番謎めいているのは、コーラの発言です。
死んだリチャードは甥のジョージに全財産を相続させるつもりだったようです。事実、そういった遺言を残していますが、読み上げられた遺言はジョージ以外の親族に遺贈するという内容でした。リチャード本人が書き換えたのか、それとも別の人物が遺言をすり替えたのかは判然としません。
コーラやコンパニオンのギルクリストの発言により、リチャードは何者かに毒を盛られ殺されたという疑惑が浮かび上がります。しかし、医師により病死と判断された上で火葬されているため、死体の検死は望めません。
殺されたコーラは睡眠薬を飲んでおり、自宅で眠っているところを斧でずたずたにされました。それほど高価ではない宝石類が盗まれたようですが、家の近所で見つかっています。物取りの犯行にもみえますが、盗んだ宝石を途中で捨てていくというのは珍しいようです。
なおコーラの遺産はスザンナ・ヘンダーソンに相続され、スザンナの好意により、コンパニオンが遺品のいくつかを手にするようです。
コーラの殺害以外についてまとめると以下の通りになります。
- 権利書
葬儀の後、権利書が盗まれます。読み上げられた遺言書には、屋敷を売り払ってその代金を均等に相続人に分配すると記されていましたが、権利書がないため、売却の手続きが進みません。そのため、権利書の盗難は遺産分配を阻害するようなかたちになっていますが、その真相は不明です - 毒殺未遂
コーラのコンパニオンのギルクリストがヒ素を盛られています。毒を盛られ苦しんだギルクリストですが、命に別状はなく、後遺症もないようです。彼女が狙われた理由は不明です - 撲殺未遂
葬儀で違和感を抱いていたヘレンは鏡をみているときに、その正体に気付きました。電話で弁護士のエントウィッスルに連絡をとりますが、背後から何者かに襲われてしまいます。鈍器で殴られたヘレンですが、一命は取りとめています
伏線・手掛かり
主にコーラ殺害に関する手掛かりをまとめます。
証言
親族達はコーラ殺害時のアリバイを尋ねられます。
まず俳優夫婦は、それぞれが別々の友人と会うために外出していたようです。妻のロザムンドは約束していた友人とは会えず、一人だった様子です。ヘレンは遺品整理のため屋敷に残り、ジョージは競馬、スザンナはP&O(船舶会社)へ行ったと話しますが、ポワロはそれが全て嘘だと考えています。
- 医師
リチャードの主治医は他殺かどうかについて、はっきりとしない回答をしています。他殺ではないと断言はできない様子です - 執事
執事は主人であるリチャードが亡くなる前の日、ジョージと激しく口論していたと証言します。さらに、遺言状は1枚だったと話します。この遺言状に関する証言がきっかけで、読み上げられた遺言は偽造であったことが判明します - 使用人
屋敷の使用人は、葬式の翌日、ヘレンは終日屋敷にはいなかったと話しています。ヘレンは遺品整理のため屋敷にいたと話していましたが、それは確実に嘘であることが判明します - コンパニオン
コーラのコンパニオンは生前にリチャードがコーラの自宅にやってきたと話しています。この時、リチャードは自身の病気を打ち明け、さらに、毒を盛られ命を狙われているというような話もしていたようです。その証拠にリチャードからコーラに宛てた手紙がみつかっており、そこにはコーラに口止めするような文章が書かれていました
ポワロに招待された親族や関係者は、会食にて故人の記念品に対して言いたいことを言っています。すると、コンパニオンが孔雀石のテーブルには蝋の造花が映えると感想を述べています。その造花はコーラが「兄は殺された」発言をした時にそばにあったもので、ヘレンが割ってしまいました。
会食の後、鏡についての会話になり、これがきっかけでヘレンは葬儀で抱いた違和感の正体に気付きます。しかしながら、その違和感が何であったのかまでは明かされません。
証拠
執事の証言によって読み上げられた遺言書は偽物だったことが明らかになります。本物はドールハウスの中に隠されており、ポワロの招待によって関係者が再び屋敷に集まったときにみつかりました。遺言はジョージに全ての財産を相続するという内容でした。
コンパニオンは主人であるコーラが本物の画家だったと主張していましたが、絵は模写だったようです。このことに気付いたのはコーラの遺産を相続したスザンナで、その根拠はコーラが描いたと思しきある海辺の絵にありました。コーラがその絵を描いたのは1年前だったようですが、題材となった海辺の景色は5年前に焼失していました。コーラに消えた海辺を描くことはできないわけですが、それでも、スザンヌがコーラの寝室でみつけた絵葉書を模写すれば、その絵が描けるようでした。
これに関してはコンパニオンが主人の名誉のために、嘘をついているようにもみえます。
ネタバレ
コーラを殺した犯人はコンパニオンのギルクリストです。ギルクリストはコーラが遺産相続の争いで殺されたようにみせていました。
ギルクリストはコーラに変装して葬儀に忍び込み、「リチャードは殺された」と発言することで、殺人疑惑を親族や弁護士に植え付けました。何かを知っているような発言をしたコーラが殺されることで、全員が遺産目当てでリチャードが殺され、さらに、秘密を知っていたコーラも殺されたと思い込みます。これにより、容疑者は遺産で得をした人物に絞られ、真犯人であるギルクリストは容疑から外れます。
葬儀の時、本物のコーラは睡眠薬で眠らされていました。葬儀から帰宅したギルクリストは、翌日、コーラを斧で殺害しました。何度も斧を振り下ろしたのはコーラの顔を潰すことで変装がばれないようにするためだったようです。
親族や弁護士はコーラとの面識がほとんどなく、葬儀では誰もコンパニオンの変装に気付きませんでした。しかし、ヘレンだけはコーラに違和感を抱いています。それは、コーラの首を傾げる癖で、ギルクリストは完璧に真似しているつもりでしたが、首を傾ける方向が逆でした。それは鏡をみて練習していたために、左右を間違えるミスを犯したようです。
なお、ギルクリストがヒ素を飲んだのは被害者を装うためでした。
ギルクリストはリチャードが死んでも、コーラが死んでも、遺産を受け取ることはありませんでした。ただコーラの遺産を相続したスザンナから、絵などを受け取っています。ギルクリストが持ち出そうとしていた絵は、実はレンブラントの絵であり、ある油絵の下に隠されていました。その油絵は、スザンヌが話題にしていた海辺の絵です。絵を模写したのはギルクリストで、それはレンブラントを隠すために描かれました。
レンブラントの絵といえどもその価値は上流階級の人々にとっては安く、殺人を犯してまで手に入れるほどのものではないようでした。しかし、ギルクリストのような身分の女性にとっては十分な金額でした。彼女の夢は小さなティーショップを開くことで、絵は開店資金に使おうとしていたようです。
遺言状をすり替えたのはジョージでした。ジョージは自分が遺産を受け取らないようにしたということになります。
ジョージがこのような行為に及んだ理由は、自分の父親がリチャードであることをリチャード自身から伝えられたためでした。つまり、ジョージはリチャードが弟の妻と不倫し生まれた子供でした。長年、嘘を信じていたジョージはリチャードに仕返しするつもりで、遺言を偽物とすり替えました。
その他隠された真実
親族にはそれぞれ秘密がありました。唯一特に何も隠していなかったのは弁護士のエントウィッスルだけです。
- スザンナ
スザンナはいとこのジョージを愛していました。葬儀の翌日、二人はホテルで会っており、近親者である二人は肉体関係を隠すため、ポワロに嘘のアリバイを話す必要がありました。スザンナがコーラの自宅で弁護士にホテルの場所を教えていますが、そのホテルで二人は逢引きをしていました。ホテルに行ったことを隠すため、スザンナは途中で発言を抑えています(なお、3親等以内の親族の結婚は禁じられている場合が多いですが、4親等となるいとこ同士の結婚は法律上問題ありません) - シェーン夫妻
夫のマイケル・シェーンは不倫をしていました。そのため、本当のことを話すことはできませんでした。妻のロザムンドは妊娠しており、子供を堕胎しようとしていました。劇場の舞台裏でロザムンドが気分悪そうにしていたのは、つわりだったようです。堕胎を踏み止まったロザムンドは自分の振舞いを戒めるため、シスターのもとへ向かいました - ティモシーとモード
権利書を盗み出したのはティモシー・アバネシーと妻のモード・アバネシーでした。実際に盗み出したのは妻の方です。全ての財産がジョージに渡ると考えていた二人は金を得るため権利書を盗みましたが、偽造遺言によって事情が変わります。権利書がないと相続が進まないとわかった二人は弁護士のカバンにそっと戻したようです - ヘレン
ヘレンが葬儀の翌日に姿を消したのは散骨のためでした。ヘレンにとって死んだリチャードはただの義理の兄でしたが、実は不倫関係にありました
結末
ポワロに追い詰められた犯人ギルクリストは素直に警官に連行されますが、去り際、気が狂ったかのようにわめき出します。
感想
変装して葬式に紛れ込み、参列者に先入観を与えるというトリックでした。今度から、久しぶりに会った親戚は偽者かもしれない、という思いを胸に秘めて冠婚葬祭に臨みたいと思います。ギルクリストを演じていたのはモニカ・ドランという方らしく、エンドクレジットによれば、この方はコーラも演じていたようです。結局、本物のコーラは登場していませんでした(死体置き場で手だけ見えていましたが)。
原題は「After the Funeral(葬式の後)」で、ドラマと原作の大筋は同じです。ただし、ドラマでは登場人物が減らされた上で親子関係などが変わっており、キャラクターの設定やそれぞれが抱える事情にも違いがあります。
この記事のまとめ
名探偵ポワロ「葬儀を終えて」のあらすじ、真相をご紹介しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 依頼 | 殺人の調査 |
| 事件分類 | 遺産相続に関連する殺人 |
| 謎 | 発言の真意 |

