森博嗣「オメガ城の惨劇(SAIKAWA Sohei’s Last Case)」のあらすじと真相、トリック解説、感想、考察です。マガタシキから招待状が届くエピソードです。
あらすじ
「これから起こることに、ご注意される方がよろしいと思います。でも、私にはどうすることもできません。人間というものは、そういうものなのです。ほとんど無力、ただ呼吸をし、老化し、死んでいくのですから、一時の迷いも、トゥリヴィアルな揺らぎ……。では……」
森博嗣「オメガ城の惨劇」
ハードカバー版P91抜粋
フリーライターのミヤチ・ノエミは、とある編集長の代理で、オメガ城の会合に出席します。その会合の招待主は天才科学者のマガタ・シキでした。ノエミは、孤島に建てられたオメガ城へ向かうため、港のホテルに宿泊。そこで、マガタ・シキの事件を解決したサイカワ・ソウヘイに出くわします。サイカワも、謎の招待状で集められたメンバーの一人でした。
大勢が招待されたと思われていた会合でしたが、オメガ城に集まったのは7人の人物でした。彼/彼女らは、いずれも、中高年以上の年齢で、程度の差はあれ、世間にも知られた人物達でした。その7人は全員、マガタ・シキに興味をもちオメガ城にやってきましたが、城にシキ博士の姿はなく、執事のニモイと、それ以外にスタッフがいるだけのようでした。
夕食が終わり、ゲスト全員が談話室で歓談したあと、それぞれ自室で床につきました。しかし、夜中に悲鳴が響きます。これに気付いたサイカワとノエミが、捜索をすると、計4名の死体が、ほぼ同時にみつかります。さらに、電話やネットが使えない状況に陥り、オメガ城はクローズド・サークルと化します。

登場人物
主な登場人物をまとめます。作中、名前はカタカナ表記となっています。
- ミヤチ・ノエミ
主人公。記者。ルベル編集長の代理でオメガ城へと向かう。
※物語はノエミの視点のみで進みます - サイカワ・ソウヘイ
研究者。建築、特に建築史が専門 - マガタ・シキ
オメガ城で開かれる会合の招待主。招待状の正確な表記は『MAGATA Shiki』
事件のまとめ・謎
「オメガ城の惨劇」の事件および謎を整理します。真賀田四季が招待主であるというのが、最初に登場する大きな謎ですが、これはあっさり解決(収束)します。
殺人事件
オメガ城で4人が殺害されます。それぞれ自室で死んでおり、1名を除き、明らかな他殺のようでした。なお、発見者はサイカワ、ノエミ、心理学者のシモン、そして、執事のニモイです。部屋には鍵がかけられており、ニモイが管理していたマスターキーで部屋を開け、全員で死体を確認しています。
死んだのは、物理学者のジェリィ・グリーン、医者のルカス・ゾンネフェルト、画家のウヅキ・フミオミです。もう1人、数学者アラン・レーヌの部屋で女性が死んでいましたが、サイカワ達には、何者なのか判断できませんでした。
- 死因
主人公。記者。ルベル編集長の代理でオメガ城へと向かう。
※物語はノエミの視点のみで進みます - サイカワ・ソウヘイ
死体を調べたのはサイカワですが、被害者全員、明らかに死因が異なります。グリーンは背中から血を流して倒れていて、ウヅキは絞殺のようでした。身元不明の女性は刺殺で、ゾンネフェルトは発作を起こしたようにして死んでいました。ゾンネフェルトだけは他殺かどうか判断がつかなかった様子です - w
グリーンはダイイングメッセージらしきものを残していました。それはアルファベットのwでしたが、サイカワはあまり興味がなさそうです
失踪
オメガ城には執事のニモイ以外にも、10人のスタッフがいました。それぞれに料理人、給仕、世話係、ニモイの補助、城内および庭の管理者といった役割がありました。この10人全員が、死体発見後に姿を消します。
ニモイの証言によれば、10人のスタッフは確かにいたようです。ただ、突然消えたという話を聞いたシモンは、ニモイを疑います。
数学者のレーヌも行方をくらまします。サイカワはオメガ城の図面を片手に、ノエミらと城内を捜索しますが、誰かが隠れているような気配はありませんでした。これはつまり、レーヌだけではなく、スタッフもどこかへ消えたということになります。
真相(ネタバレ注意)
森博嗣シリーズ作品のネタバレも含んでいますので、S&MシリーズやVシリーズなどを未読の方はご注意下さい。
まず、招待主についてです。
招待状にはマガタ・シキという名前が書かれていましたが、四季博士本人ではありませんでした。つまり、別の人物が真賀田四季の名前を使って、招待状を送ったということになります。
この正体主に関する事実は物語の中盤で明らかになります。オメガ城のディナーに真賀田四季本人が現れ、招待主は自分ではないと語ります。なお、この記事冒頭の引用は、四季博士が去り際に言い残した台詞です。
サイカワの正体
サイカワ・ソウヘイとして登場していた人物は保呂草潤平でした。保呂草は犀川に成りすましてオメガ城の会合に参加していました。その目的は、どうやら、オメガ城にあった美術品にあったようです。保呂草は図面を入れるような筒を持ち帰っており、その中に、何かが入っていたようです。
ディナーの時、サイカワは、招待状がパートナーに届いたと話していましたが、これは嘘で、実は母親の瀬在丸紅子に届いていました。そしてこの招待状は、息子の犀川創平ではなく、友人(?)の保呂草潤平の手に渡りました。
招待状の送り主は、紅子と元夫の林の関係を知り、紅子が林を殺害するということを想定していたようです。
犯人
犯人はそれぞれの被害者の配偶者でした。つまり、グリーン夫人、ゾンネフェルト夫人、ウヅキ夫人が犯人で、動機は金です。レーヌの部屋で死んでいたのはレーヌ夫人で、レーヌを殺そうとして失敗し、逆に殺されてしまいました。犯人の夫人達は、実は、スタッフとしてオメガ城に忍び込んでいたようです。
なお、グリーン夫人はノエミの上司であるルベル編集長でした。この二人は同性ですが、婚姻関係にあったようです。
シモンが殺されなかった理由は、パートナーに金を渡し、離婚していたためです。シモンは、ノエミに、パートナーが金目的だったということを語っており、この内容から、大金を相手に渡したことが推測できます。
レーヌとノエミの失踪について
死体発見後、ノエミが襲われ、ある場所に監禁されてしまいます。同じ部屋には、夫人を殺害したレーヌも監禁されているようでした。
レーヌはノエミに、よく憶えていないと話していますが、これは嘘です。彼は、夫人を殺した後、他の夫人達、つまり犯人達に連れられて、監禁場所にやってきました。そして、夫人殺害を隠すために、他の犯人達と口裏を合わせ、共犯関係になります。
その他
- オメガ城の場所
ノエミとレーヌが監禁されていた場所は真賀田研究所でした。つまり、オメガ城が建設されたのは、「すべてがFになる」に登場した妃真加島(ひまかじま)でした(物語冒頭、舞台は日本ではないという先入観を持ってしまいます。実は真賀田研究所(日本)だった、というのは叙述トリックといえます) - wの意味
wは、アルファベットのダブリューではなく、ギリシャ文字のω;オメガだったのかもしれません。オメガだとすると、Gシリーズに登場した事件との関係性があるように思えますが、文字自体には意味がなさそうです
結末
サイカワの活躍により、無事、回線が復旧し、警察と連絡がとれるようになります。オメガ城を後にしたサイカワやノエミは、フランスへと向かいます。
真相に近づいたサイカワや、そばにいたノエミは、何者かに命を狙われます。サイカワは証拠を手に入れるため、レーヌ帰国のテレビインタビューを利用し、犯人らに罠を仕掛けます。その罠は、現場から血痕や頭髪などの証拠品を持ち帰ったというものでした。
インタビューのあと、レーヌが襲われ、さらに、サイカワとノエミも襲われます。襲撃者は、意外にも、ルベル編集長でした。ルベルはサイカワとノエミを殺害しようとしますが、突入した警官に撃たれ、死んでしまいます。
その後、パブで、サイカワがノエミに真相を語ります。ノエミは、Venicoという人物とネット通話で会話し、サイカワが、漢字五文字の別人であることを知ります。
考察
サイカワ・ソウヘイは保呂草でした。犀川っぽいのは、保呂草が演技をしていたためのようです。
保呂草は「すべてがFになる」の事件を語れないはずですが、犀川の妹(儀同世津子:祖父江と林の娘)が本を書いていたため、ここから情報を得たのだと思われます。犀川本人から聞いた可能性もありますが、ドロボーなので、萌絵近辺に近づくことはない気がします。
真賀田博士は保呂草を知っているようでした。四季と保呂草の接点は、四季シリーズに描かれていたと思います。そして、どうやら、保呂草は真賀田研究所で働いていたことがあるようです。時期は不明ですが、夫婦で一緒だった、と紅子は語っています。保呂草のパートナー、さらに、真賀田研究所で働いているとなると、思い浮かぶのは、各務亜樹良です。Gシリーズの海月及介は各務の息子ですが、父親は小山田という名前のはずです。もしかすると、小山田は偽名で、その正体は保呂草なのかもしれません。そうなると、海月の父親は保呂草潤平ということになります。
保呂草は女性をよく泣かせていますが、海月もそんな性質を受け継いでいる気がします。とはいえ、海月の父親が保呂草説は、明確な記述はなく、確かな内容とはいえません。
保呂草が真賀田研究所で働いていたなら、本を読まずとも、事件について知り得たのかもしれません。
時代設定についてですが、「すべてがFになる」の事件が”30年近く前”と語られています。Fの事件は、1994年ですので、30年後となると2024年となります。”近く”という言葉があるため、ピッタリ30年ではなさそうです。おそらく、本が刊行された2022年が舞台だと思われます。
感想
みんなの感想をご紹介します。画像のキーワードが、真相に気付くきっかけになってしまうかもしれません。
下の画像の言葉はレビューでその言葉がよく使われたことを意味しています。また、言葉と言葉を結ぶ線は、その言葉が同じ文で使われたことを意味しております。

ここでは『久しぶり』というキーワードに注目し、読者の感想を紹介します。
Gシリーズの最新刊は2018年刊行で、オメガ城は2022年の刊行なので、4年近く経過していることになります。読んだ方は、久しぶりに森先生の作品を楽しめたという感想を持っておられるようです。
一気読みでした。久しぶりに森ミステリィを読めた!って感じで、久しぶりにやられました。
最高に面白かった。いや~、久しぶりに、森ミステリを堪能。最近の森先生の作品は、SF要素が強かったり、小説でも哲学的な内容だったりで、離れてしまった人も多いと思うけど、S&MシリーズとVシリーズを夢中で読んだという人は、ぜひ手にとってほしい!
超久しぶりに森作品読んだ。というか久しぶりに講談社ノベルス読んだ。この作品、森さんのシリーズをちゃんと読んでいないと面白さ分からないだろう。
お久しぶりの森先生でしたが、端的で洒落た会話と詩的な描写は変わらずで、懐かしく嬉しい気持ちになりました。やっぱ良いなぁ。読みたいのはこれだよこれ!って感じで、好みであることを再認識できました。
| レビュー数 | 文章数 | 異なり語数 |
|---|---|---|
| 259 | 954 | 2053 |

