ドラマ『殺人は容易だ(Murder Is Easy)』は、1954年のイギリスを舞台とした作品で、ナイジェリアから来た青年ルークが、列車で出会った老婦人の不審な死をきっかけに、ある村で起こる連続殺人事件の謎に挑むミステリーです。この記事では、あらすじや登場人物、ネタバレ、感想、原作とドラマの違いなどをまとめています。2025年1月15日、22日にNHKプレミアム4Kで放送され、NHK総合では7月27日、8月3日に放送が予定されています。
あらすじ
1954年。ルーク・フィッツウィリアムは英国政府職員として働くため、ナイジェリアからイギリスへとやって来た。下船後、ロンドンへと向かう汽車の中で、年配の女性ラビニア・ピンカートンと知り合う。ピンカートンは地元で起きた連続不審死について相談するため、スコットランドヤード(ロンドン警視庁)を目指していた。どうやらピンカートンは、不審死は全て殺人だと考えているようだった……。
ウォータールー(ロンドン)駅に到着後、下車したルークはピンカートンに頼まれて馬券を購入。馬券は大当たりするが、その直後に、ピンカートンは自動車にひかれて死亡してしまう。
期せずして大金を手に入れたルークは、金をピンカートンの遺族に渡すため、ピンカートンが暮すウィッチウッド村へ向かう。そこでは、不審死した村人達の検死審問が執り行われていた――。

©Agatha Christie Ltd, BBC
登場人物
既に亡くなっている人物がいろいろ登場します。ほぼ名前だけの登場ですので、ややこしいかもしれません。登場人物は多めですが、相関関係は複雑ではありません。
- ルーク・フィッツウィリアム
主人公。ナイジェリアの青年 - ブリジット・コンウェイ
ルークとともに事件を調査する若い女性。秘書 - ピンカートン夫人
ルークが列車の中で知り合った女性。車にひかれて亡くなってしまう - ホイットフィールド卿
ウィッチウッド村のお金持ち。アッシュ館の主。どこか残念な感じの男性 - トマス医師
村の医者。ローズと交際相手 - ホートン少佐
村の住民。犬を飼っている - リディア・ホートン
少佐の亡き妻 - ハンブルビー牧師
村の牧師。ホイットフィールドとはそりが合わない - ハンブルビー夫人
牧師の妻。インド出身 - ローズ・ハンブルビー
ハンブルビー夫妻の娘。トマス医師の恋人 - エイミー・ギブズ
村の住人。お手伝いさん。薬を飲み間違えて死亡する - オノリア・ウェインフリート
村の住人。エイミーの雇い主。ホイットフィールド卿の収蔵品の管理している - リバース
運転手 - トミー・ピアス
故人。転落死 - ピアス夫人
トミーの母親。パブを手伝っている - ハリー・カーター
故人。パブ「SEVEN STARS」の主人だった。水路で溺死 - カーター夫人
ハリーの妻。エイミーは姪
キャスト
主要登場人物の役名と役者名をまとめます。訳者名のリンクはグーグル検索の結果です。
| 役名 | 役者名 |
|---|---|
| Luke Fitzwilliam ルーク・フィッツウィリアム |
David Jonsson |
| Bridget Conway ブリジット・コンウェイ |
Morfydd Clark |
| Miss Pinkerton ピンカートン夫人 |
Penelope Wilton |
| Lord Whitfieldr ホイットフィールド卿 |
Tom Riley |
| Dr. Thomas トマス医師 |
Mathew Baynton |
| Major Horton ホートン少佐 |
Douglas Henshall |
事件のまとめ
核心には触れていませんが
物語の展開はわかる内容になっています
ウィッチウッド村で不審死が相次いでいます。いずれも病死や事故死と判断されていますが、村の老婦人ピンカートンは殺人を疑っていました。そんなピンカートンも車にひかれて殺されてしまいます。ピンカートンが疑っていた事件は3件ですので、ピンカートン本人の死も含めると、4人が謎の死を遂げていることになります。
ルークが村に到着したあとも、事件は起きます。まず、アッシュ館で牧師が倒れます。翌朝、エイミーが薬を飲み間違えて死亡し、その後、テニスの最中に牧師が突然倒れ、死んでしまいます(おおむね1話までの内容)。
運転手のリバースが審問会場でトマス医師とやり合ったあとに撲殺され、さらに主人公のルークが疑っていたトマス医師もアッシュ館のパーティーで死亡してしまいます。最終的に亡くなった人物をまとめると次のようになります。合計8名ということで、まさに“殺人は容易だ”です。
- 少佐の妻リディア・ホートンが亡くなっている
- トミー・ピアスが手すりから落ちて死亡。ちなみに、死体の第一発見者はピンカートン夫人で、夫人は突き落とされたと考えていた
- ハリー・カーターが水車小屋の水路で溺死。酔っていたらしい
- ピンカートン夫人がロンドンで車にひかれて死亡
- エイミー・ギブズがルークの目の前で死亡。咳止めの薬と毒物を飲み間違えたらしい
- ハンブルビー牧師がテニスの最中に突然倒れて死亡する
- 運転手のリバースが撲殺される
- トマス医師がホイットフィールド卿とブリジットの婚約パーティーの最中に死亡する
ネタバレ
犯人はオノリア・ウェインフリートです。リディア・ホートンに毒を飲ませ、トミー・ピアスを突き落とし、ハリー・カターを溺死させ、ピンカートン夫人を突き飛ばして車にひき殺させ、エイミーの薬をすり替え、牧師に毒を盛り、リバースを殴り殺して、トマス医師の発作を起こさせたのは、すべてオノリアです。
オノリアはホイットフィールド卿の元婚約者で、卿にふられていました。その理由はオノリアがカナリヤを殺したからです。つまり、オノリアはヤバイ女だったわけです。
ドラマと原作との違い
原作のストーリーと概ね同じです。主人公が列車の中でお婆さんと知り合って謎めいた事件に遭遇し、どんどん人が死んでいって、犯人はあの人という結末を迎えます。なお、クリスティのシリーズ作品としては、バトル警視シリーズに分類されますが、ミス・マープルのシリーズでドラマ化されていたりします。
主人公は黒人ではなく、 植民地の駐在警官で色の黒い人物です。その他、細かな違いはいくつかあります。長編小説が原作のドラマではよくあることだと思いますが、まず登場人物が何名か省略されています。物語としては、牧師の死亡するタイミングが微妙に違っていたりします。
もっとも大きな違いは、主人公ルークや時代背景の設定です。この変更により、ミステリーだけではなく。当時のイギリス社会が抱えていた人種的・階級的な緊張感を描いた社会的ドラマの側面が強くなっています。主な相違点をまとめると以下のようになります。
- 主人公ルーク
- 原作
イギリス人の元警察官で、白人男性 - ドラマ
ナイジェリア出身の黒人青年。イギリス政府の職員として働くために渡英した人物として描かれています - 時代設定
- 原作
1939年発表当時の現代 - ドラマ
1954年に変更。これはナイジェリア独立運動が活発化する直前の時期であり、人種差別や植民地主 義といったテーマを色濃く反映させるための意図的な設定です
- トーマス医師
- 原作
誠実で謙虚な人物 - ドラマ
優生思想に傾倒し、患者を選別するような冷酷な医師として描かれ、物語の重要な容疑者の一人となっています - ブリジェット・コンウェイ(ヒロイン)
- 原作
聡明で勇気があり、主体的に行動して事件の真相に迫る重要な役割を担います。最終的にルークと婚約します - ドラマ
ルークの協力者ではあるものの、原作ほどの主体性や行動力はない印象です - 一部キャラクターの削除
- 原作
悪魔崇拝の噂がある骨董屋のエルズワージーなど、怪しげで読者を惑わせる容疑者が複数登場します - ドラマ
物語をシンプルにするためか、エルズワージーをはじめとする一部のキャラクターが削除されています
- ホノリア・ウェインフリート(真犯人)の動機
- 原作
婚約者であったホイットフィールド卿に捨てられたことへの個人的な恨みが動機 - ドラマ
ホイットフィールド卿の告げ口によって大学進学の道を絶たれ、自立した人生を奪われたことへの復讐。女性の社会的自立というテーマが加わっている
- 「魔女伝説」の削除
- 原作
ウィッチウッド村に残る「魔女伝説」が、村の閉鎖性や迷信を象徴する重要な背景として描かれています - ドラマ
この設定は削除され、代わりに階級や人種間の社会的対立が物語の前面に押し出されています - 「アッシュボトム地区」の追加
- 原作
登場しない - ドラマ
原作にはない、貧困層が住む「アッシュボトム地区」という設定が追加され、ホイットフィールド 卿との階級対立が明確に描かれています。
感想
昨年放送された『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』の続編みたいな感じで、雰囲気も似ています。個人的にはエヴァンズと同じくらい面白かったです。すでに原作の内容は知っていたので、犯人に対する驚きはなかったですが、十分楽しめました。
映像は全体的に華やかで、超上流階級の暮らしぶりはもちろんですが、庶民が通いそうなパブも、清潔感があって小綺麗な印象でした。時代背景は1954年(昭和29年)ということで、戦後なんですが、日本の戦後が舞台の金田一耕助シリーズとかとはだいぶ違います。金田一耕助は登場する事件も暗い雰囲気ですが、ほんと、背景がどんより曇っている感じです。
注目すべき点は、やはりナイジェリアからやって来た主人公ですね。アガサ・クリスティ原作のドラマで日本人とかが主人公になるときもくるかもしれません――日本人主人公はさすがに違和感がすごいかもしれませんが…。

