『二人~失われた記憶を探せ!!盗撮動画で始まる連続殺人!?消えた死体と第三の男の謎!!巨大権力に挑む特命係の大きな賭けとは!?』は2022年1月1日に放送された相棒season20の元日スペシャル、第11話です。本作は記憶喪失の男性と貧しい少年たちを巡るサスペンスドラマとなっており、特命係の杉下右京と冠城亘は、冠城の姉が保護した記憶喪失の男の正体を探る中で、やがて社会の歪みや権力の闇に直面します。この記事では、あらすじ、登場人物とキャスト、ネタバレなどをまとめた上で、感想や考察などのレビューをご紹介しています。
あらすじ
年の瀬、当番勤務にあたっていた特命係の杉下右京と冠城亘のもとに、冠城の姉・由梨から奇妙な依頼が舞い込む。由梨は教会で、公園で保護された記憶喪失の高齢男性・湊健雄の身元を調べてほしいと訴える。湊が覚えているのは自身の名前と、大手鉄道会社が運営する駅売店「デイリーハピネス」のことだけ。一方、湊を発見した小学6年生の少年たち、早瀬新と峰岸聡も何かを隠している様子だった。右京と亘は、湊の素性を探る中で、デイリーハピネスが非正規雇用の賃金問題で裁判を抱えていることを知る。この小さな手がかりが、やがて殺人事件へと発展し、与党の政調会長・袴田茂昭の存在へと繋がっていく。

登場人物とキャスト
- 杉下右京(水谷豊)
警視庁特命係の警部。 - 冠城亘(反町隆史)
杉下右京の現在の相棒。元法務省のキャリア官僚。 - 冠城由梨(飯島直子)
冠城亘の姉。ピアノ教師をしながら教会でボランティア活動を行う心優しい女性で、記憶喪失の男性を保護する。 - 湊健雄(イッセー尾形)
公園で倒れているところを少年たちに発見され、記憶を失っている高齢男性。自分の名前以外、多くを思い出せない。 - 袴田茂昭(片岡孝太郎)
与党の政調会長。子どもの貧困をなくす会の立ち上げに尽力するなど、社会的な注目を集める権力者。 - 早瀬新(西山蓮都)
小学6年生。公園で記憶喪失の男性を発見し、スマートフォンを紛失する。祖母と質素な二人暮らし。 - 峰岸聡(川口和空)
小学6年生。新の友人。新と一緒に公園で大人たちの言い争いを目撃し、その様子をスマートフォンで録画していた。 - 結城宏(弓削智久)
袴田茂昭の秘書。ある事件の隠蔽を図るため、事件関係者の動向を探る。 - 角田課長(山西惇)
組織犯罪対策部課長。特命係に情報を提供する。 - 青木年男(浅利陽介)
サイバーセキュリティ対策本部のメンバー。 - 社美彌子(真飛聖)
内閣情報官。特命係に情報を提供する。
ネタバレ
事件は、公園で倒れていた記憶喪失の男性「湊健雄」の正体と、小学生の少年たちが目撃した出来事を中心に展開します。湊健雄の本当の身元は、大手鉄道子会社の非正規雇用を巡る裁判を担当する最高裁判所判事の若槻正隆でした。若槻が記憶を失ったのは、与党政調会長の袴田茂昭が、企業側に有利な判決を得るために、結城宏秘書に若槻を懐柔させようとして、公園で結城ともみ合いになり頭を打ったためでした。この現場を偶然、少年たちがスマートフォンで撮影しており、それが事件の鍵となります。少年たちが動画の解析を依頼した遠藤佑人(通称マメさん)は、動画から袴田と結城の会話を抽出し、若槻が死亡したと偽って結城を脅迫し金銭を要求します。しかし、遠藤は結城によって殺害され、遺体となって発見されます。結城は若槻が生きていることを知ると、若槻と動画を持つ新を誘拐し、袴田の関与の証拠を隠蔽しようとします。
結末
特命係は、若槻判事の正体を突き止め、遠藤殺害と誘拐の背後に袴田がいることを確信します。決定的な証拠がない中、右京は結城が新のスマホを持っていることを逆手に取り、袴田を呼び出す危険な賭けに出ます。新のスマホが起動された瞬間に袴田に電話をかけさせ、暴走した秘書を説得するよう促します。その会話の中で、右京は袴田が若槻の生存を知らないことを利用し、「若槻判事が死んだなどということは報じられていない」と指摘。これにより、袴田自身が若槻の死亡を認識していたことを証明し、事件への関与を自白させます。最終的に結城は逮捕され、袴田も取り調べを受けることになります。新と聡の友情も回復し、若槻判事も記憶を取り戻して少年たちとの交流を深めることになります。冠城亘は自身の少年時代の友人との苦い思い出を回想し、少年たちの友情に温かい眼差しを向けます。
感想と考察
今回のエピソードは、記憶喪失の男性というミステリー要素から始まり、やがて社会問題、特に非正規雇用の格差や権力者の私利私欲といったテーマへと発展していくエピソードでした。ネットのテレビ欄に記載されていた副題はかなり長かったですが…シンプルながらも多義的なタイトル「二人」が印象的です。特命係の右京と亘、少年たち、記憶喪失の判事と少年、代議士と秘書など、様々な「二人」の関係性がクローズアップされています。社会の底辺で生きる少年と、記憶を失いながらも人間的な優しさを見せる判事の交流には、心温まるものがあり、同時に、自己責任という言葉で弱者を切り捨てる社会の冷たさ、そして権力者の傲慢さも浮き彫りになっていたと思います。右京さんが社会の歪みに怒りを露わにする場面は非常に力強く、毎度ながら、心に響きます。ゲストのイッセー尾形さんの演技は圧巻で、記憶喪失のコミカルさから判事としての威厳、そして少年との交流で垣間見せる優しさまで、複雑な人物像を見事に演じ分けておられました。飯島直子さんが演じた冠城の姉も、困っている人に手を差し伸べる慈悲深い性格が魅力的でした。
本作の放送後には脚本家・太田愛さんによるコメントがあり、そのコメントは、劇中のデモ隊の描写が当初の脚本から変更され、意図しない形でヒステリックに描かれたという内容でした。エンターテインメント作品における社会問題の描き方、そして制作現場でのクリエイターの意図と表現の乖離があったようで、この議論を含め、本作が社会の問題に光を当て、視聴者に深く考える機会を与えたといえます。
余談
- 初回放送日は2022年1月1日です。このときの視聴率は14.5%を記録しました。
- 脚本家・太田愛は、自身のブログで、劇中での「デイリーハピネス」本社前でのデモ隊のシーンについて、脚本では男性平社員二名が非正規雇用の労働者の窮状を語る場面であったと明かし、プラカードを掲げた「いきり立ったヒステリックな人々」として描かれたことは自身の意図するところではなく、苦しんでいる当事者を傷つけたのではないかと謝罪しました。
- 特命係としての冠城亘が登場する、最後の元日スペシャルでした。作中では、亘の少年時代の友人である「かずや」にまつわるエピソードが描かれています。
作中の名言
- 「12歳の子供が『全ては自己責任なんだ』と、助けを求めることを諦めるような世の中は、豊かな国とは言えません」(杉下右京)
袴田政調会長が低賃金労働者や貧しい人々に対し「自己責任」論を主張した際に、右京が怒りを込めて反論した場面で登場しました。

