名探偵ポワロ・第31話
名探偵ポワロ「ABC殺人事件(The ABC Murders)」のあらすじ、トリック、ネタバレ解説です。
頭文字Aの人物が頭文字Aの町で殺され、続いてBの人物がBの街で、そして、事件は連続殺人へと発展します。
あらすじ
A.B.C.と名乗る人物から届いた一通の手紙。そこには、ポワロに対する挑戦的な文章が記されていた。
8月21日にアンドーバーで何かが起きる、手紙の内容を根拠にジャップ警部を訪ねたポワロはアンドーバーで、アリス・アッシャーという女性が殺されていることを知る。
アッシャー殺しの容疑者として、元夫が逮捕されるが、A.B.Cから二通目の手紙が届き、そして、ベクスヒルでベティという女性が殺される。さらに、宛先の間違いが原因で遅れていた三通目がポワロの手元に届き、貴族で富豪のサー・カーマイケル・クラークの死体も発見される。
三人の被害者は共通点に乏しく、ポワロは犯人がアルファベット順に選び殺しているだけと推理する。そして、ストッキングという手掛かりをもとに、眼鏡で猫背のみすぼらしい男という犯人像を描く。
四通目。ドンカスターでの犯行日、ポワロと警察はついに、アレキサンダー・ボナパルト・カストというストッキングの訪問販売員を捕まえます。しかし、この男は犯行を憶えておらず、さらに、二件目の事件には完璧なアリバイがあった…。
登場人物
ポワロ、ヘイスティングス大尉、ジャップ警部以外の登場人物です。
- アリス・アッシャー
最初の被害者。アンドーバーで撲殺 - フランツ
アリスの夫。捕まっていたため、二件目の犯行は不可能 - メアリ・ドローワー
アリスのメイド - ベティ・バーナード
第二の被害者。ベクスヒルで絞殺。本名はエリザベス - ミーガン・バーナード
ベティの姉 - ドナルド・フレイザー
ベティの恋人 - カーマイケル・クラーク
第三の被害者。チャーストンで撲殺。貴族、大富豪 - フランクリン・クラーク
サー・カーマイケルの弟 - シャーロット・クラーク
サー・カーマイケルの妻。寝たきり。秘書をよく思っていない - ソーラ・グレイ
サー・カーマイケルの秘書 - 映画館で殺された人
第四の犠牲者。ドンカスターで刺殺 - アレキサンダー・ボナパルト・カスト
イニシャルA.B.C.の人物。ストッキングのセールスマン
注目のシーン
ABC…

©Agatha Christie Ltd, ITV BBC
謎
カスト氏は犯人ではありません。彼は真犯人に操られ、罪をなすりつけられています。
殺人は四件発生しました。Aで始まる地名で、Aで始まる人物が殺され、B、Cと続きました。Dのドンカスターで殺された人物の名前は不明ですが、同様の規則に従って、殺されていると考えれます。犯行現場からABCの鉄道案内が見つかっているため、同一犯による連続殺人と見立てられます。
犯人からポワロ宛に、犯行を予告するような手紙が届きます。予告状をわざわざ寄こした理由だけではなく、これらの手紙が警察ではなくポワロに届いた理由も謎です。
さらに、三通目はポワロの住むマンション名が間違っていました。一通目と二通目は正しく書かれていたのに、三通目だけ違っていました。宛先に誤りがあったため、三通目はポワロの手元に届くのが遅れています。
ポワロは一度「犯人はABCの順番にただ殺しているだけ」と推理します。つまり、犯人に明確な動機はなく、人を殺めたいという理由だけで犯行に及んでいるということですが…。
手掛かり・伏線
殺人事件の謎を解くヒントです。
最初の現場でみつかったストッキング、二人目の被害者の母親が購入したストッキング、そして、クラーク夫人が目撃した秘書とストッキングのセールスマンの会話は、いずれも、ストッキングが共通しています。これらはカスト氏につながる手掛かりですが、彼は犯人ではありません。
何気ない出来事
ドンカスターの競馬場で、ポワロは群衆の中からたった一人の不審者を探すという行為がどれほど困難かということを実感します。そして、ひとつの殺人を隠すために、他の殺人が起きたのではないか、ということに気付きます。
動機
それぞれの被害者の遺族、もしくは関係者には、動機がありそうな人物がいます。
- 第一の被害者
最初の被害者の夫は日ごろから、被害者を殺す、とわめいていたようです。しかし、捕まっていた彼には第二の犯行は不可能です。
残るはメイドですが、被害者の女性は特に裕福というわけではありませんでした。少なくとも、メイドに、金欲しさという動機は生まれないようです - 第二の被害者
二人目の被害者も金持ちではありません。しかし、彼女には嫉妬深い恋人がいました。彼女が死んだ日、この恋人は浮気を疑って被害者女性を探し回っていました。
痴情という動機で、彼が犯人という可能性はあります - 第三の被害者
三人目の被害者は大金持ちでした。遺産を相続するのは妻です。この病弱な妻には死期が近づいているようです。
もしも、妻の死後、秘書とカーマイケルが結婚したならば、財産は全て若い秘書のものになります。このとき、弟は一銭も受け取れない可能性が非常に高くなります
真相(ネタバレ注意)
犯人はフランクリン・クラークです。彼は第三の被害者の弟です。動機は金です。
ABCの理由
真犯人のねらいはCの犯行でした。A、B、Dの犯行は連続殺人にみせかけて動機を隠すことが目的でした。
犯人は遺産を確実に相続するため、実の兄を殺しました。もしも、病弱なシャーロットが亡くなった後、兄が秘書と結婚し子供を授かった場合、自分自身は遺産を相続できないと考えていたようです。
手紙の秘密
ポワロに届いた手紙は、一連の事件が連続殺人であると認識させるために送られていました。
三通目の手紙の住所が間違っていたのは、三件目が本命だったからです。
もしも、犯行予告日よりも前に手紙が届いていれば、警備が強化されるはずです。そうなると犯行が難しくなるため、犯人はあえて間違った住所を書き、手紙の配達が遅れるようにしていました。
ポワロが宛先だった理由は転送されやすくするためです。宛先が警察の場合、住所を多少間違えても、スコットランドヤードに届いてしまいます。逆に、住所などを大きく間違えると、今度は手紙が届かなくなってしまいます。
カスト氏の正体
カスト氏は洗脳されていました。この人物は善良なセールスマンです。なお、犯人はカストとドミノというゲームの場で知り合ったようです。
犯人はカスト氏を利用しました。手紙で、彼に犯行を計画する場所へと導き、ストッキングを売らせていました。
四件目の犯行で、彼の上着のポケットに凶器が入っていた理由は、近くにいた犯人がそれを、そっとポケットに忍び込ませたためです。
競馬場にいたはずの犯人ですが、こっそり抜け出し、カスト氏を追って、映画館に入っていました。
結末
タイプライターの指紋というはったりの証拠で、ポワロはフランクリン・クラークを追い詰め、逮捕します。ABCキラーで世間を賑わせた犯人は捕まり、誤って逮捕されてしまったカスト氏は釈放され、一躍有名人になります。
感想
とても有名な作品で、そして面白いです。動機などを隠すために、連続殺人を起こすというのは、他の作品にも登場しますが、この作品が元祖かもしれません。
地理的なこと
作中に登場したアンドーバーはロンドンから西へ車で、現代では二時間ほどの距離のようです(このエピソードの時代背景・1930年代は、もっと時間がかかるはずです)。距離は115kmほどなので、東京から直線距離で、宇都宮、前橋、銚子などの距離感です。
べクスヒルもアンドーバーと同じ距離にあります。ロンドンから南南東に位置する海辺の街のようです。殺人があったのも確かに海岸でした。
チャーストンはロンドンから西南西方向に320kmほど離れています。車で4時間半、東京から仙台、福井という距離感です。
最後のドンカスターはロンドンの北北西に位置します。距離は275kmほど、車で3時間15分、東京から名古屋という距離感です。
ポワロが暮すロンドンからみると、犯行現場はかなり離れた街のようです。
この記事のまとめ
名探偵ポワロ「ABC殺人事件」のあらすじ、真相をご紹介しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 依頼 | 犯人からの挑戦 |
| 事件分類 | 殺人 |
| 謎 | ABCのねらい |

