名探偵ポワロ・第32話
名探偵ポワロ「雲をつかむ死(Death in the Clouds)」のあらすじ、トリック解説です。
休暇のかえり、ポワロは搭乗した旅客機の中で殺人事件に巻き込まれます。
あらすじ
フランスでの休暇を楽しんだポワロは帰りの飛行機内で斜め後ろに座っていた女性が殺されるという事件に遭遇する。その老婦人は金貸しで、飛行機に乗っていたホーバリー夫人に付きまとっているようだった。
被害者が機内で殺されたことは間違いなく、凶器は吹き矢――ポワロの座席から吹き矢の筒のようなものが見つかる――もしくは、機内を飛んでいた蜂だと考えられる。しかし、確かなことは明らかにならなかった。
ポワロは乗客の誰にも見られずに吹き矢を吹いて老婦人を殺すことが非常に難しいということを実験によって確かめる。そして、心理的な盲点をついたトリックを使い、犯人は犯行に及んだと推理する。
捜査が進む中、被害者の娘を名乗る人物が現れ、遺産相続の手続きを進めようとする。ある男性と結婚したばかりのこの女性は、被害者の正当な相続人で、遺産のほとんどを受け取るようだった。
被害者のカップにスプーンが二つあったという証言や、変装でホーバリー夫人を揺さぶることにより真相に近付いたポワロでしたが、相続人の娘が電車内で殺されるという事件が発生してしまう…。
登場人物
ポワロ、ジャップ警部以外の登場人物です。
- マダム・ジゼル
被害者。金貸し - アン・リチャーズ
被害者の娘 - レディー・ホーバリー
セシリー。ポワロの前。被害者に付きまとわれていた女性。カジノで負けまくっている - ベネシア・カー
セシリーの友人。セシリーの前に座っていた女性 - スティーブン
セシリーの夫。飛行機には乗っていない - (メイド)
セシリーに爪やすりを運んだ女性 - レイモンド
セシリーの友人。俳優 - ノーマン・ゲイル
歯科医。座席中の一番前 - ジャン・デュポン
考古学者。蜂をつぶした男 - ダニエル・クランシー
推理小説家。本をとるため、被害者に近づいた男 - ジェーン・グレイ
客室乗務員。本事件でポワロの助手を務める - ミッチェル
客室乗務員
座席表
下表は事件が起きた航空機の座席表です。被害者の隣に座席はなく、通路のようになっています。
| 後 | 前 | |||
|---|---|---|---|---|
| ポワロ | セシリー | ベネシア | ||
| 通路 | ||||
| クランシ | ノーマン | |||
| 被害者 | デュポン | |||
注目のシーン
\Bon/

©Agatha Christie Ltd, ITV BBC
謎
被害者が飛行機の中で殺されたのは間違いありません。犯人は乗客の中にいます。『どうやって誰にも気付かれずに殺したのか?』というのが謎めいております。動機が明確なのはホーバリー夫人ですが、それ以外の人物が犯人の場合、動機も謎ですし、そもそも凶器がはっきりとしていません。
被害者は飛行機の一番後ろの座席に座っていました。近い座席に座っていたのはポワロです。そして、ポワロの座席から吹き矢の筒も見つかっています。ジャップ警部はポワロが寝ている間に犯行に及んだということも考えているようです。
- 航空機の中で蜂が飛んでいました。この蜂は考古学者のデュポンがカップで殺しています。蜂が飛んでいた理由は不明です。
- ポワロの座席から筒がみつかります。凶器は毒の吹き矢ですので、犯行に使われたか可能性が高いと言えます。
相続人について
被害者の娘がフランスの警察に現れ、遺産の相続を申し出ます。リチャーズという男と結婚したばかりの彼女も、電車の中で何者かによって殺されます。警察は自殺と認識しているようですが、これは他殺です。そして犯人は、飛行機でマダム・ジゼルを殺した人物と同じです。
ポワロは相続人である被害者の娘と対面しています。この時「どこかで会ったことがある」と声を掛けています。ポワロの勘違いにもみえますが、実際ポワロは彼女を何度か見かけています(そのシーンが映像でも描かれている;視聴者への伏線になっている)。
手掛かり・伏線
殺人事件の謎を解くヒントをまとめます。
ホーバリー夫人は、最初、被害者との関係性を否定します。「一度も会ったことがない」と証言したわけですが、彼女がマダム・ジゼルに付きまとわれていたのは確かです。実際、脅迫されていました。つまり、最も明確な動機をもつ人物が、嘘を話している状況といえます。
証言
乗務員の話により、機内食と食後のコーヒーを運んだ時、被害者は生きていました。これは、飛行機の中に犯人がいることを意味します。なお、この乗務員は信頼できる人物のようです。
被害者の近くを通った人物
機内を移動し、被害者に近づいた人物は乗務員と推理作家のクランシーです。
クランシーは本をとるため、座席を立ち、機内後部に足を運んでいます。毒矢に詳しい彼は小説に登場させるために調べたと話しますが、彼が書いた本にはその毒矢が登場していないようです。
立ちあがった人物
歯科医師のゲイルがトイレへ向かうため立ち上がっているようです。トイレは、ゲイルの前の方向にあるため、被害者に近づくことにはなりません。
スプーン
被害者のカップには、何故かスプーンが二つ置いてあったようです。乗務員が間違えて二つ用意したということではないようです。
九時の便
被害者はいつも9時の飛行機を利用していました。しかし、事件があった日は、9時の次の便に乗っていました。
これは、ある男が4000フランを払って航空会社のスタッフを買収し、被害者が9時の次の便に乗るよう仕向けたためでした。
証拠
被害者の座席の近くから毒矢がみつかります。そして、ポワロの座席からは、吹き矢用の筒も見つかります。機内を飛んでいた、蜂も証拠といえます。
筒
筒には紙切れが入っていました。この紙切れは値札で、のちに筒はフランスで売られていたことが判明します。かなり珍しいものと思われていましたが、それは誰にでも購入できるお土産品のような品物でした。
購入した人物はガムを噛んだアメリカ人っぽい男性だったようです。このアメリカ人風の男は4000フランの男と同一人物です。
所持品
事件発生後、ジャップ警部が持ち物検査をしています。
- 考古学者のデュポン。怪しげな筒、本やノートなどを鞄に入れていた
- 歯科医のノーマン。白衣、歯鏡、脱脂綿、そして、空のマッチケースを機内に持ち込んでいた
ひどい変装
ポワロはノーマン・ゲイルと協力し、ホーバリー夫人に罠を仕掛けます。このとき、ポワロはノーマンに変装させますが、それはとてもひどく、ポワロが手直ししています。
何気ない出来事
助手のジェーン・グレイの爪が欠けたとき、ポワロは飛行機内でホーバリー夫人の爪が欠けたことを思い出します。ホーバリー夫人は乗務員に頼んで、メイドに爪やすりを持ってくるよういいつけています。
真相(ネタバレ注意)
犯人はノーマン・ゲイルです。被害者の娘とホーバリー夫人のメイドは同一人物で、ノーマンと結婚していました。
ノーマンは機内のトイレの中で白衣を着て、脱脂綿を口に入れることで乗務員に変装していました。乗務員になりすました犯人はスプーンを持って被害者に近づき、毒矢を直接首に刺して殺害しました。その後、フランスで購入した筒を眠っているポワロの座席に忍ばせました。
ノーマンの変装が下手くそだったのは、乗務員に変装したということを悟られないようにするためです。
筒も、蜂も、犯人があえて残した証拠でした。矢を直接刺したという手口に気付かれないようにするため、筒や蜂を用意し、捜査をかく乱していました。
アンを殺したのもノーマンです。結婚した理由はマダム・ジゼルの遺産です。アンとポワロが直接会ったことを知ったノーマンは、メイドであることを知られないようにするため、アンを殺しました。
結末
「アン・リチャーズ殺害時に手袋をしていた」と口を滑らせた犯人は言い逃れできなくなり、逮捕されます。犯人に思いを寄せていたジェーン・グレイはひどく悲しみ、涙を流します。
感想
飛行機の中で起きる殺人が、クローズドサークルになっていて面白いです。被害者に乗務員が近づいた、犯人は立ち上がっていたなど、真相に結びつく手がかりも散りばめられています。
飛行機の中で事件が起きるエピソードは古畑任三郎「雲の中の死」などがあります。内容が似ている部分もあります。
この記事のまとめ
名探偵ポワロ「雲をつかむ死」のあらすじ、真相をご紹介しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 依頼 | ― |
| 事件分類 | 殺人 |
| 謎 | 衆人環視における殺害方法 |

