名探偵ポワロ第58話・S11E1『マギンティ夫人は死んだ(Mrs McGinty’s Dead)』のあらすじ、トリック解説です。マギンティ夫人殺害事件でジェームズ・ベントリーが逮捕され絞首刑が確定します。しかし、担当刑事は有罪判決に確信を持てず、ポワロに再調査を依頼します。
あらすじ
マギンティ夫人殺害の罪で、ジェームズ・ベントリーは絞首刑となり、刑の執行を待つのみとなります。ジェームズはマギンティ夫人の家に間借りしており、死体の第一発見者でした。ジェームズは犯行を否認しますが、金に困っていたことなど、彼にとって不利な状況証拠が揃い有罪となります。
有罪判決に確信を持つことができなかった担当刑事のスペンス警視は、他の事件を抱えていたため、旧友であるポワロに再調査を依頼します。
警視の依頼を引き受けたポワロは、まずジェームズに聴取し、そして、事件が起きたブロードヒニーへと向かいます。ひどい下宿屋に宿泊するポワロは、マギンティ夫人の親類や、夫人が掃除婦として働いていた屋敷に聞き込みを始めます。調査の過程で、ポワロはマギンティ夫人の遺品からサンデー・コメットという低俗紙を見つけ、一部の欄が切り抜かれていることに気付きます。
切り抜かれていたのは“過ぎ去った悲劇の女性犠牲者・彼女達は今どこにいるのか?”という見出しの記事ででした。ポワロは記事を書いた女性から詳しい話を聞こうとしますが、「しょせんは日曜新聞の絵空事」と言い返されてしまいます。しかしながら、マギンティ夫人が記事に載った女性について何かを知っていたのは確からしく、それが原因で夫人は殺されたとも考えられました。
その後も調査を進めるポワロですが、決定的な新事実はみつからず、絞首刑の日にちが迫ってきます。そんな折、駅のホームで汽車を待っていたポワロが何者かに突き飛ばされ、汽車にひかれそうになってしまいます。さらに、マギンティ夫人の関係者だったローラ・アップワードが何者かによって殺害されます。
ローラはマギンティ夫人を雇っていた人物の一人で、劇作家のロビン・アップワードと暮らしていました。彼女は、ポワロにサンデー・コメットの記事に載っていた二人の女性の写真をみせられた時、写真の女性に見覚えがあると話していました。しかし、詳細について語ることはありませんでした。

©Agatha Christie Ltd, ITV BBC
ポワロと犬
登場人物とキャスト
ポワロ、ジョージ(ポワロの執事)以外の登場人物です。このエピソードには「ひらいたトランプ」で活躍した推理作家のアリアドニ・オリヴァも登場します。
- ジェームズ・ベントリー
マギンティ夫人殺害の容疑で逮捕され絞首刑が確定する。マギンティ夫人の自宅で生活していた - モード・ウィリアムズ
ジェームズの知り合い。元同僚 - アビゲール・マギンティ
被害者。様々な家で掃除婦として働いていた - ベッシー・バーチ
被害者の姪。マギンティ夫人の家を相続する - ジョー・バーチ
ベッシーの妻 - モーリン・サマーヘイズ
ポワロが泊った下宿屋の主人。養子。被害者の雇い主の一人 - ジョニー・サマーヘイズ
モーリンの夫 - ローラ・アップワード
車椅子の老女。被害者の雇い主の一人 - ロビン・アップワード
劇作家。推理作家のオリヴァと戯曲を共同で執筆中 - シーラ・レンデル
何かに怯えている様子の女性。被害者の雇い主の一人。医師の妻 - レンデル
シーラの夫。医者 - イブ・カーペンター
派手な女性。被害者の雇い主の一人 - ガイ・カーペンター
イブの夫。出馬を目論んでいる - スイーティマン
文房具店で働いている女性 - エヴァ・ケイン
ゴシップ紙に掲載された女性。既婚男性と不倫し、相手の妻の殺害に加担したと考えられる。事件後、オーストラリアへ渡り姓をホープに変える - アルフレッド・クレイグ
エヴァの不倫相手。妻を地下室で毒殺し死刑となる - イヴリン・ホープ
エヴァと不倫相手の子供 - リリー・ガンボール
ゴシップ紙に掲載されたもう一人の女性。肉ひき機でおばを殺害した
主要ゲストの役名と役者名をまとめます。
| 役名 | 役者名 |
|---|---|
| Maude モード |
Sarah Smart |
| Maureen Summerhayes モーリン |
Raquel Cassidy |
| Mrs. Rendell シーラ |
Amanda Root |
| Eve Carpenter イブ |
Mary Stockley |
| Robin Upward ロビン |
Paul Rhys |
事件のまとめ・謎
記事に書かれていたのは、エヴァ・ケインとリリー・ガンボールという名前の女性で、エヴァにはイヴリン・ホープという子供がいるはずでした。彼らには殺人の共犯や殺人という後ろ暗い過去があり、正体を隠してブロードヒニーに潜んでいるようです。年齢を考慮するとエヴァは絞殺されたローラ・アップワード、その子供イヴリンは下宿屋のモーリン、医師の妻のシーラ、派手な女性のイブだと考えられます。リリーもこの三人のうちの誰かかもしれません。マギンティ夫人やローラはその正体を知ったために殺されたと考えられます。
マギンティ夫人殺害の謎
マギンティ夫人は自宅の居間で死んでいました。夫人は自宅にお金を隠しており、その金が盗まれていました。なお、金は庭へ続く道にあった石の下に置かれていました。第一発見者となったジェームズは失業のため、家賃を滞納しており、金に困っていました。これがジェームズの動機と判断されます。凶器は鈍器とされていますが、発見できていません。
ジェームズが逮捕されますが、本人は犯行を否定しています。真犯人がいるのかどうかわかりませんが、彼にローラ殺害は不可能です。
- ローラ殺害の謎
ポワロが再調査を開始した後、ローラ・アップワードの死体が彼女の自宅で見つかります。ローラは息子のロビンと暮らしており、掃除婦としてマギンティ夫人を雇っていました。ローラが殺害されたのは、ロビンが推理作家のオリヴァと観劇のため外出している時でした。ローラは下宿屋のモーリン、医師の妻のシーラ、派手なイブに電話をしており、それぞれを自宅に誘っていました。しかし、実際にローラを訪ねたのはモーリンだけだったようです。ローラが死んだ理由も、サンデー・コメットの記事にあるようですが、その真相は不明です - ポワロ殺人未遂
ポワロは何者かによって突き飛ばされ、危うく汽車にひかれそうになります。この犯人や動機も謎です
伏線・手掛かり
マギンティ夫人とローラ・アップワードの殺人に関する手掛かりをまとめます。
証拠
マギンティ夫人は頭部を殴られて死亡しましたが、凶器は特定されていません。ただ、ポワロが下宿屋でシュガーハンマーをみつけています。シュガーハンマーは、元々シーラの持ち物だったようです。シュガーハンマーが凶器であれば、持ち主である下宿屋のモーリンもしくはシーラが容疑者として浮かび上がりそうです。
- 口紅と香水
ローラの死体発見現場には、口紅の付いたカップと、香水の匂いが漂っていました。香水はイブがよく使用するものと同じようです。しかしながらイブは、ローラの自宅には向かっていないと話しています。事件の晩、ローラを訪ねたのはモーリンだったようですが、モーリンは普段口紅を使わないようです - 本
アップワードの屋敷に、イヴリン・ホープという名前が書かれた本がありました。その本はオーストラリアのグレート・バリア・リーフについて書かれています
エヴァ・ケインはオーストラリアで死亡していました。彼女はクレイグ家の家庭教師として雇われていたようです。つまり、エヴァの不倫相手には子供がいました。
証言
ポワロは、パーティーで記事に載ったエヴァとリリーの写真をみせました。この時、ローラがリリーの写真に見覚えがあると話しました。その後、ポワロは詳しい話を聞き出そうとしますが、ローラは何も語りませんでした。この証言について、ポワロはローラが嘘をついたことを見破っています。ローラが知っていたのは、リリーではなく、エヴァの方だったようです。
- 電話
ローラが死んだとき、息子のロビンが出先で電話を掛けています。この姿を推理作家のオリヴァが目撃しています - サンデー・コメットの記事
死んだマギンティ夫人は、死ぬ前に、サンデー・コメットの記事についてジェームズに話していました。しかしながら、残念なことに、ジェームズはあまり話に耳を傾けていなかったようです。夫人の話は、記事に載った女性がブロードヒニーに住んでいるという内容だったようですが、ジェームズの証言は、それがアップワードだったかもしれないし、他の人だったかもしれないという曖昧な内容になっています - 屋敷へ向かう女性
ローラが死んだ日の夜、文房具屋の女性スイーティマンがアップワードの屋敷へ向かう女性を目撃しています。スイーティマンはジョー・バーチ(マギンティ夫人の姪の夫)と不倫関係にあり、このことを黙っていました。女性を目撃したのは、ジョーと逢引きしたときでした - モードの調査
モードは独自に調査を進め、イブ・カーペンターの昔の写真をみつけています。さらに、シーラが書類を燃やしている姿も目撃しています。ジェームズの無実を信じているモードはポワロの調査に協力しているようですが、サンデー・コメットの記事を読んだだけでは知り得ないはずのイヴリン・ホープの名前を知っているなど、不審な点もあります - 下宿屋の写真
下宿屋の引き出しに、エヴァ・ケインの写真が入っていました。写真の裏には“我が母”という文字が書かれていました。ポワロは写真が入っていた引き出しを一度整理していますが、この時、写真はみつからなかったようです
ネタバレ
犯人はロビン・アップワードです。エヴァ・ケインの子供イヴリン・ホープは女性だと思われていましたが、実はロビンでした。
ロビンはマギンティ夫人に正体を知られたため、夫人を強盗殺人にみせかけて殺し、罪をジェームズになすりつけました。劇作家として活躍するロビンにとって、母親の不倫や不倫相手の殺人事件はスキャンダルになり得ました。凶器は下宿屋から盗んだシュガーハンマーです。少々ガサツなモーリンは、ハンマーの紛失に気付かなかったようです。
ローラ・アップワードを殺害したのもロビンです。ロビンはローラの養子で血の繋がった親子ではありませんでした。そして、その関係は愛情で結ばれた親子というよりも、パトロンの関係にありました。
ポワロにエヴァの写真をみせられたローラは、この時、息子ロビンの正体に気付きました。パトロンに縁を切られそうになったロビンはローラを殺害しました。
ロビンは推理作家のオリヴァと劇場へ出掛ける直前に犯行に及びました。お母様殺害後、カップに口紅を残し、香水を室内に吹きかけるなどの証拠を残し、車で出掛けました。電話は、母親ではなく、声色を変えて、三人の女性にかけていました。下宿屋にエヴァの写真を残したのもロビンです。
その他隠された真実
ポワロを突き飛ばしたのはシーラ・レンデルです。彼女の夫・レンデル医師は安楽死のため、末期患者に薬を処方していました。レンデル医師が金のために薬を処方していたという事実は確認できなかったようですが、悪い噂が広まり、妻のシーラは神経症で病んでいました。そこに名探偵ポワロが現れたため、ひどく怯えていました。
モード・ウィリアムズはクレイグ家の子供でした。父は不倫の末に妻を殺したアルフレッド・クレイグで、モードは不倫相手のエヴァ・ケインを恨んでいました。ローラが死んだ日、文房具屋の女性が逢引きの最中に目撃したのはモードで、彼女はローラを殺害しようとしていました。しかし、彼女が屋敷に着いたとき、ローラは既に殺されていました。
なお、モードはローラがエヴァ・ケインであると考えていましたが、ローラとエヴァは全くの別人です。もしも犯行に及んでいたら、モードは人違いで全く関係ない人物を殺したことになっていました。
結末
ロビンを告発したポワロは犯行を全て明らかにし、追い詰められたロビンは罪を認めます。その後、釈放された様子のジェームズ・ベントリーはモードと再会します。
感想
イヴリンは男でした。日本版でいうところの、美幸とか、美晴とか、「美」という文字が入っていると、読み方はわからなくても、なんとなく女性だと思ってしまうみたいなことかもしれません。なんかちょっと違う気もしますが、そんな経験が私にはあったりします。
リリー・ガンボールは、結局、ブロードヒニーにはいなかったようです。イブ・カーペンターが怪しかったですが、彼女はクラブで踊り子をしていたみたいな過去があっただけのようです。作中、ポワロが、今も女性達が美しいことやリリーは愛されていなかったなどの理由から、リリーの写真を残しておくはずがないという推理を披露しています。つまり、写真がないので、マギンティ夫人はリリーの存在を知り得ないということだったと思います。これが、ローラ・アップワードの嘘を見破るヒントになっているようです。
原作の原題は「Mrs McGinty’s Dead」で直訳すると「ミセス・マギンティ夫人の死」です。ドラマと原作の大筋は同じです。ただ、ドラマは登場人物などが省略されています。登場人物の多いエピソードですが、原作はドラマよりも多いです。
この記事のまとめ
名探偵ポワロ「マギンティ夫人は死んだ」のあらすじ、真相をご紹介しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 依頼 | 再調査 |
| 事件分類 | 殺人 |
| 謎 | イヴリンの行方 |

